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酒卸業界「店との信頼損ねる」、協力店から「不公平感ある」声も…取引停止要請に 

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 新型コロナウイルスの感染対策を強化するために、政府が、自治体の要請に従わず酒類を提供する飲食店との取引を停止するよう求めたことについて、酒類販売業者の間に戸惑いが広がっている。政府の求めには法的な根拠はない。感染防止のために受け入れる団体がある一方で、「取引先との信頼にかかわる」と反発する声も上がった。

 西村経済再生相は8日の記者会見で、酒類販売事業者に対し、自治体の要請を守らずに酒を出す飲食店との取引を停止するよう求めた。西村氏は、要請に応じず酒の提供を続け、にぎわっている店がある現状に触れ、「(要請に協力している店からは)なんでこんなに不公平感があるんだという、切実な声がある」と説明。内閣官房と国税庁は同日夜、同趣旨の依頼を業界団体に文書で通知した。

 日本酒造組合中央会の亀井 慶承よしつぐ 理事(67)は9日、「コロナの感染拡大防止の観点からも、政府の文書は組合員に通知した」と語った。「おいしい酒を造って飲まれないのは本当に残念だが、早くコロナが収束し、多くの人に酒を楽しんでもらえる日がくるとありがたい」と話した。

 ただ、この政府の通知に法的な根拠はない。全国小売酒販組合中央会(吉田精孝会長)は9日、「酒類提供を続ける得意先からの注文を拒否することは、長年培ってきたお客様との信頼関係を 毀損きそん する引き金となる」として、政府に抗議文を出した。

 東京都新宿区の酒類卸問屋「佐々木」の佐々木実社長(66)は「我々は商人。お客様から注文があれば、断るわけにはいかない」と語る。首都圏にある飲食店約3000店と取引している同社は、3回目の緊急事態宣言が6月20日の期限で解除され、酒の提供が認められると、売り上げが感染拡大前の55%まで回復した。

 4回目の宣言発令により、東京都内では再び飲食店での酒類の提供停止が要請されることが決まった。一方で、取引先からは「届けてくれないのか?」といった問い合わせも相次いでいるといい、佐々木社長は「たとえうちが断っても、スーパーなどで酒を買うことができる。政府の要請はおかしい」と話した。

 日本大危機管理学部の福田充教授(リスクコミュニケーション論)の話「法的根拠がないのに、業者間の信頼関係を分断するような要請には疑問があり、実効性も見えない。東京五輪の無観客開催で国際社会が注目する中、政府には感染拡大を招くわけにはいかないという焦りがあるのだろうが、規制強化には丁寧な説明が欠かせない」

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