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[顔]主人公は名もなきヒーロー…障害のある家族との日常をネットでつづる 岸田奈美さん 29

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撮影・田中秀敏
撮影・田中秀敏

 急死した父親、車椅子生活になった母親、ダウン症の弟……。普通なら深刻になりがちな家族との日々を、ユーモアに包んで描く。

 「パパなんか死んでしまえ」。そう言い放った2週間後、父親は心筋 梗塞こうそく で亡くなった。中学2年生。思春期のまっただ中だった。その3年後、母親のひろ実さん(52)が病気で車椅子生活になった。

 ひろ実さんを元気づけたいと思い、大学在学中に、建物の段差をなくすための提案をする会社の創業メンバーに加わった。だが、時間を守ることや、チームで仕事をすることがうまくできない。自分を責め、最後は体を壊した。

 どん底の状態で、弟の良太さん(25)と温泉旅行に出た。レストランでお皿を運んでくれた店員、エレベーターでボタンを押してくれた人。助けてくれた人に必ずぺこりと一礼し、ニコニコしている良太さんの姿にハッとした。その姿をエッセーにしてネットに載せると評判になった。「自分に自信がなくても、大好きな家族のことなら書ける」。昨年3月、10年勤めた会社を辞めた。半年後に、初の単行本「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」を出版した。

 昨年12月には、足が使えないひろ実さんでも運転できるように乗用車を改造する物語を発表。家族や周囲の人が奮闘する姿が大きな共感を呼び、英語版も発表した。

 「誰かを幸せにしている名もなきヒーローが、世の中にどれだけ多いことか」。何げない生活の中にある笑顔と優しさを見つけたい。そんな思いで、キーボードに向かっている。(社会部 吉永亜希子)

  きしだ・なみ  神戸市出身。2020年、「フォーブス ジャパン」の「世界を変える30歳未満の30人」に選ばれる。2冊目の著作「もうあかんわ日記」(ライツ社)が5月に出版された。

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2214776 1 社会 2021/07/18 05:00:00 2021/07/18 05:00:00 2021/07/18 05:00:00 作家でエッセイストの岸田奈美さん。東京都渋谷区で。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210717-OYT1I50102-T.jpg?type=thumbnail

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