「生協の白石さん」旋風、「名回答」がベストセラーに…2005年11月[あれから]<17>

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 「男の生き様、引くか出るか。名言と酒を吐いた彼は、女性に対しては目を合わせられずに一歩引いているので注意が必要だ。その代わり、腹は出ているので安心だ」

最後のトキを看取った飼育員、今も心に「なぜ」…2003年10月[あれから]<26>

 これ以降、寮内では「安心だ」「だが、注意が必要だ」という言い回しが流行したという。「彼が書く文章は、緊張した場でも雰囲気を和ませる独特のセンスの良さがあった。この時も、さすがだなと思った」。4年間、ともに学生寮で過ごした かけはし 潤一郎さん(50)は振り返る。

「絶対ネタになる」農工大生ブログが人気の火付け役に

 幼い頃から、何となく言葉にこだわってきた白石さん。就職活動では好きな雑誌の出版社を受けたが、落ちてしまった。パンの製造会社で内定をもらったものの、入社後に担当するだろう営業の仕事は、「流されやすい」自分の性格に合わない気もした。

 その時ふと、信州大生協の職員の顔が浮かんだ。就活で上京のたびに特急電車のチケットを手配してくれた人。親切なうえに、「頑張って」と応援してくれた。

早稲田大生協に勤務していた頃の白石さん(右)。早稲田時代は、旅行や運転免許などを担当していた=本人提供
早稲田大生協に勤務していた頃の白石さん(右)。早稲田時代は、旅行や運転免許などを担当していた=本人提供

 「学生に丁寧で、本当にありがたくて。学生と常に接するから、自分も若い感覚でいられるかなとも思って」。生協のことを何も知らないまま採用試験を受け、面接でとんちんかんな受け答えをしたのに、なぜか次の選考にも呼ばれた。気付けば1か月後には内定をもらっていた。

 最初に配属された早稲田大の生協で10年ほど働き、2004年12月、白石さんは東京都小金井市にある東京農工大工学部の生協に着任した。

 翌05年1月から、店内の投書箱に寄せられた質問や要望に答える「ひとことカード」の担当になる。

 担当になって1か月ほどたった頃。白石さんはこんな質問を受け取った。

 〈リュウとケンはどっちが強いんですか?〉

 リュウとケン。おそらく人気ゲームのキャラクターのこと。白石さんはこう答えた。

 「……推測の域は出ませんが、(いずれも俳優の) りゅう雷太らいた と松平健の場合、全盛期ならおそらく竜雷太の方が腕力は上だと思われます」

 生協の業務とは全く関係ない質問でも受け流すことなく、意表をついて切り返す。それは、都心から離れたキャンパスで日がな一日、勉学と研究に没頭する農工大の学生たちにとって、生協は数少ない「息抜きの場」であると白石さんは知っていたから。ほんの一息、「ちょっとふざけて盛り上がりたい」という学生らの気持ちはよく分かった。

 「本来の目的から逸脱しないように、大半の質問にはきちんと答えて、残り2、3枚はとぼけてみせて。ただ、失礼のないように、ということは心がけました」

 「これは絶対にネタになる」。当時、東京農工大の2年生だった上條景介さん(36)は白石さんのひとことカードを見て直感した。

 「うちのような真面目な大学の、生協という真面目な場所で、こんなウィットに富んだやりとりが展開されている。僕はすぐ、ファンになりました」

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