漁協職員がカツオを大量窃盗…「焼津港では水揚げが減る」「30年前からうわさあった」

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 静岡県焼津市の魚市場で大量のカツオを盗んだとして、焼津漁業協同組合職員ら7人が逮捕された事件が、地元に衝撃を広げている。以前から、水産関係者の間では「焼津港では水揚げが減る」と指摘されており、長年にわたって不正が続いていた可能性がある。日本一の水揚げを誇る漁港のブランドを傷つけかねない深刻な事態で、全容解明と再発防止が強く求められている。(村瀬駿太郎、栗山泰輔)

「信頼裏切られた」

 「うわさは本当だったのか。太平洋で命がけで取ってきた魚を奪うとは許せない」。被害に遭った水産会社の関係者は声を荒らげた。社内では、焼津港の水揚げが鹿児島の港と比べて少なくなることが不思議がられていたという。「漁協を信頼していたのに裏切られた。同業他社もやられているのでは」と疑いの目を向けた。

職員が逮捕された焼津漁協(9日、静岡県焼津市で)
職員が逮捕された焼津漁協(9日、静岡県焼津市で)

 ある漁協関係者は「30年前からうわさはあった」と証言する。県警は、事件後に複数の水産会社から被害の相談を受けており、メンバーを替えながら窃盗が繰り返されていたとの見方を強めている。捜査関係者は「バカを見ていたのは水産会社だけで、漁協関係者と水産加工会社が甘い蜜を吸っていた。パンドラの箱が開いた」と語った。

一部計量せず?

 県警は10月7日、水産加工会社元役員(47)、運送会社員(47)、同社員(43)の3容疑者を窃盗容疑で逮捕した。共犯として漁協職員(40)を逮捕したほか、27日には水産加工会社元社長(60)、漁協職員(31)、元漁協職員(30)の3容疑者を新たに逮捕。一連の逮捕者は7人に上る。

焼津港
焼津港

 県警が首謀的な役割を果たしたとみているのは40歳の漁協職員、水産加工会社元社長の両容疑者だ。水揚げされたカツオは、漁協が計量してから倉庫に保管される。漁協で現場を仕切る立場にあった40歳の漁協職員は、計量担当の31歳の漁協職員、30歳の元漁協職員、運送担当の47歳の運送会社員、43歳の運送会社員の各容疑者に水揚げしたカツオの一部を計量せずに運び出すよう指示していたとみられる。水産加工会社元社長は部下の元役員に指示し、倉庫に運ばせたカツオを自社の所有と偽った疑いがある。売り上げの一部が40歳の漁協職員に渡り、報酬として分配されていた模様だ。7人は事件への関与を認めているという。

 この水産加工会社は創業50年を超える老舗で、焼津商工会議所が認定したブランド商品もある。同業者は「仕事熱心な社長だった」と口をそろえる。漁協では職員3人の逮捕に驚きの声が上がる。ある同僚は「皆真面目で、悪いことをするやつらではない。ショックで信じられない」と語った。

「評判落ちる」憂慮

 焼津市によると、焼津漁港の海産物の水揚げ額は412億円(2020年)で、全国トップだ。冷凍カツオの水揚げ量も約8万9000トンで日本一を誇る。全国屈指の港を舞台に7人の逮捕者を出した異例の事態に、地元は衝撃を隠せない。

 市内でカツオ料理を提供する飲食店の男性(44)は「インターネットで『焼津』と調べると、カツオ窃盗のニュースが出てくる。これ以上評判が落ちるのは困る」と複雑な心境を語る。鮮魚店を営む男性(57)は「地元の自慢の港の信用が失われた」と下を向いた。

 焼津漁協は、弁護士ら6人からなる調査委員会を設置。全職員約120人の聴取を進め、11月中に結果をまとめる予定だ。すでに民間警備員の配置やトラックのルート固定を再発防止策として導入している。漁協幹部は「大変残念で申し訳ない。何とか信頼を取り戻したい」と語った。

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