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走行中の京王線の車内で乗客17人が重軽傷を負った事件を受け、国土交通省は3日、鉄道各社に求める防犯体制の強化策を発表した。7月の省令改正で実施可能になった手荷物検査を活用することや、今後新しく導入する車両に防犯カメラの設置を義務づけることなどが柱だ。危険が生じた場合、乗客に非常通報装置を積極的に使用するよう周知することも求める。

国交省が手荷物検査を実施する状況として想定しているのは、駅構内や特急、新幹線の車両で不審者を見かけた場合だ。東京五輪・パラリンピックに備えて7月に「鉄道運輸規程」が改正され、検査の実施と、拒否した乗客に駅や列車から退去を求めることが可能になったが、乗客の利便性を損なう懸念から実施例がほとんどない。今後、乗客に理解を求めるとともに、事業者を対象に警察と連携した研修も進める。
防犯カメラの導入は、犯罪抑止力強化と、乗客に危険が迫った時の状況の早期把握が目的だ。義務化の対象は新造される車両のみで、既存の車両は対象としない。義務化には車両の構造や設備を定める鉄道営業法の省令改正が必要で、年度内にも有識者を集めた検討会で、カメラの性能を含めた具体的な基準などについて議論を始める。
トラブル発生時の対応も整理した。乗客には非常通報装置を迷わず使用するよう求め、事業者には操作方法の表示などを促す。京王線の事件では、車両ドアがホームドアとずれた状態で駅に緊急停車。乗客の転落を懸念した車掌がドアを開けるのをためらい、乗客が窓から逃げる状況が生じたことから、緊急時には、ずれがあっても扉を開放するよう求める。
一方、手動で車両のドアを開ける「非常用ドアコック」は、走行中に使用すると線路に転落する危険性があることなどから、安全に降車できる場合に限って使用するよう求める。
斉藤国交相は3日の閣議後記者会見で、「事件の再発防止の観点から、改めて皆様にご協力をお願いしたい」と述べた。