完了しました
西日本有数の繁華街、大阪・北新地で、24人の命が理不尽に奪われる放火殺人事件が起きた。現場の心療内科クリニックは、休職した会社員らの復職支援に力を入れていたという。安否を心配する家族からは「無事でいてほしい」と悲痛な声が上がった。
「全身がすすだらけで、真っ黒になった人が次々と搬送されていった」
近くの会社に勤める女性(30)は、声を震わせながら当時の様子を語る。
火災は17日午前10時20分頃、大阪・北新地の堂島北ビル(8階建て)4階にある「西梅田こころとからだのクリニック」で発生。消防車など約80台が駆けつけた。

大通りに面した窓から炎と黒煙が噴き出し、消防隊員が消火活動を進める中、ビル周辺では、負傷者がストレッチャーに寝かされて次々と救急搬送された。服が焦げて上半身裸の男性もおり、救急隊員が負傷者らに懸命に心臓マッサージをしていた。

近くの電器店に勤める男性(64)は、ビル6階の窓から身を乗り出して助けを求める女性を目撃した。男性は「4階では窓からオレンジ色の炎が上がり、屋上まで黒煙が上がっていた」と祈るような思いで見つめた。女性は消防隊員に救助されたが、ぐったりした様子だったという。
女性を救助した後、消防隊員は4階の救助に向かい、窓ガラスを割って中に入った。男性は「ビルの奥の方にも火が見えた。火の勢いが強くなるスピードが異常に速く、あれでは逃げられなかっただろう」と青ざめた表情で語った。
なぜ、死者が20人を超える大惨事となったのか。
クリニックは心身の不調で休職した会社員らの復職に向けたリハビリ「リワーク」に力を入れ、患者同士が話し合うプログラムなども開催していた。この日もプログラムが予定されていたといい、多くの患者が集まっていた可能性がある。
負傷者28人のうち27人は心肺停止状態で救急車に乗せられ、複数の病院に搬送された。
6人が搬送され、その後、4人の死亡が確認された済生会中津病院(大阪市北区)では、火災の一報を受けた直後から、医師や看護師ら数十人体制で治療にあたった。同院の浜中浩孝・事務部長は「ビル火災だと聞き、相当な人数が運ばれてくると考え、災害級の対応をとった。やれることはやったと思う」と言葉少なだった。