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デマ火消し遅れて拡散、「打ち消しはスピード競争」…[虚実のはざま]第5部「解」を探る<4>

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「想定できた」

ファイザー元社員らの写真を使い、不妊説を広めるツイッターの投稿=画像は一部修整しています
ファイザー元社員らの写真を使い、不妊説を広めるツイッターの投稿=画像は一部修整しています

 その言説は、海外では随分前に広がっていた。

 <新型コロナワクチンを打つと不妊になる>

 昨年12月、米ファイザー社の元社員が指摘したという内容がドイツ語や英語の情報サイトに掲載され、SNS上で拡散した。

 これに対し、米疾病対策センター(CDC)は直後の今年1月、ウェブサイトで「根拠はない」との見解を掲載し、世界保健機関(WHO)も2月、「誤りだ」とする英語の動画を公開した。

 日本で不妊説を翻訳して「輸入」する投稿が増え始めたのは4月頃だ。しかし、公的機関から否定の発信はなく、打ち消しに追われたのは有志の医師グループだった。

 メンバーの一人で米国立機関研究員の峰宗太郎さんは連日、メディアの取材に応じ、海外のデータなどを示して「惑わされないで」と訴えた。それでも不安で接種をためらう人は多かった。峰さんらに対し「ウソを言うな」「お前なんか信用できない」といった批判も相次いだ。

不妊説を否定する厚生労働省のサイト。掲載は7月末だった
不妊説を否定する厚生労働省のサイト。掲載は7月末だった

 当時、ワクチン担当の河野太郎行政・規制改革相が、不妊説を公式に「デマだ」と否定したのは6月下旬。厚生労働省がサイトに掲載したのは7月末になってからだった。

 峰さんは振り返る。

 「ウイルスのように海外からデマが流入する事態は想定できた。国がもっと早く対処するべきだったのではないか」

スピード競争

 心理学の研究では、デマの「消火」は遅れるほど効果が弱くなることがわかっている。

 人間の脳は物事について知識がない状態で情報を得ると、それに基づく「認知的枠組み」が形成され、その後、枠組みに合わない情報は受け入れにくくなる。オーストラリアの研究者の実験では、偽情報を大学生に流した後、訂正する情報を伝えても一定数が認識を変えなかった。

 「多くの人が誤情報に触れる前に、いかに早く把握し打ち消すか。スピード競争になる」。公衆衛生に関する行政の情報発信に詳しい蝦名玲子さんは指摘する。

 SNSの悪影響がより深刻な国では、以前から政府機関の危機感は強い。

 米CDCはHIV(エイズウイルス)やがんなどを巡る様々な誤情報をサイトで否定。米連邦緊急事態管理庁(FEMA)は災害時に流れる情報を監視し、正誤を公開する「ルーモア・コントロール(うわさ対策)」を行う。

 こうした措置を海外からのデマ流入対策と位置づけるのは欧州対外活動庁(EU版外務省)だ。2015年以降、サイトで警告した偽情報は1万件を超える。

偏見の温床

 ネットで火種が放置されれば、風評被害や差別・偏見を生み続けることもある。

 「放射能の影響でがんが多発する」。11年に原発事故が起きた福島を巡っては、そんな言説が今も残る。

 科学的な検証の結果、誤りと分かっているが、環境省が今年3月、全国約4200人に実施した調査では「将来、健康障害が生じるリスクが高い」と答えた人が4割に上った。

 「ネット情報への対策ができていなかった」と同省の担当者は明かした。

 在日外国人に対するヘイトスピーチ(憎悪表現)に使われるのも、「日本人より生活保護を受給しやすい」「金額が多い」といった言説だ。

 何年も前からネット上に書き込まれ、外国人への排斥感情をあおる投稿が絶えない要因になっている。

 これもデマだが、生活保護制度を所管する厚労省は「否定の発信をするという発想がなかった」という。

 日本大の福田充教授(リスクコミュニケーション論)は「膨大な量のデマが流れており、国などの公的機関が『正しい情報さえ出しておけばいい』という時代ではない。ネットの言説が及ぼす影響を軽視せず、混乱を招くようなデマや陰謀論を把握して素早く打ち消すことが重要だ。メディアにも、その役割がより求められる」と指摘する。

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使い方
2614698 0 社会 2021/12/21 05:00:00 2021/12/21 05:00:00 2021/12/21 05:00:00 ワクチンの不妊デマを否定する厚生労働省のサイト。掲載は7月末だった(16日午後4時38分、読売新聞大阪本社で)=東直哉撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/12/20211221-OYT1I50007-T.jpg?type=thumbnail

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