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昨年12月、和歌山県岩出市の児童発達支援センターでダウン症の男児(当時5歳)が肉団子をのどに詰まらせて亡くなった事故から1年が過ぎた。28日の命日を前に両親が取材に応じ、「あの子がいないという空虚な気持ちはいつまでも続く」と胸のうちを語った。(大田魁人)

「とってもかわいいでしょう。来年からこれを背負って学校に行くはずだったんだけどね」
12月中旬、男児の写真が並ぶ自宅リビングで、母親(41)は明るい「ピスタチオグリーン」のランドセルを見つめた。
七五三で着たジャケットや前掛けと同じ、男児のお気に入りの色だという。亡くなって4か月が過ぎた頃、我が子にどうしても買ってあげたくなり、夫と、お兄ちゃん2人と選んだ。「この色ならほかの子と間違えないだろうし、何よりあの子みたいに明るくてきれい」
昨年12月22日昼、男児は通っていた施設内で肉団子をのどに詰まらせ、救急搬送されたが6日後、窒息による低酸素脳症で亡くなった。あごの力が弱いため両親は刻み食を与えるよう頼んでいたが、施設側からの説明では、男児の前には肉団子がそのまま置かれ、保育士は他の子どもの世話で目を離していたという。
保健師の勧めで通い始めた施設について、母親は「とてもよくしてもらって感謝しているけど、なぜ事故を防げなかったのか、今は不信感が募るばかり」と漏らす。
思い出は色あせず、家族の食卓の話題は、今でも男児のことばかりだ。父親(44)は事故の前日、男児と一緒にゆず風呂に入ったという。「小走りでお風呂に飛び込んできてゆずを投げて。楽しそうやったな。でも、そこで時間が止まってしまってる」
和歌山県警が捜査中だということで、県や施設から詳細な報告はない。両親は「一生一緒にいられるものだと思っていた」と目を赤くし、「二度とあんな事故が起こらないよう、真相を明らかにしてほしい」と求めた。