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暗号資産(仮想通貨)を獲得するマイニング(採掘)のため、他人のパソコンを無断で作動させるプログラムを自分のウェブサイトに設置したとして、不正指令電磁的記録保管罪に問われたウェブデザイナー諸井聖也被告(34)の上告審判決が20日、最高裁第1小法廷であった。山口厚裁判長は「プログラムは不正なものではない」と述べ、被告を無罪とした。裁判官5人全員一致の意見。

不正指令電磁的記録に関する罪は、2011年の刑法改正で新設された。使用者の意図に反した動きをパソコンにさせるプログラムの作成や提供、保管などを禁止している。同小法廷は「(同罪に該当するかどうかは)プログラムの動作内容に加え、パソコンの機能に与える影響の有無や程度、プログラムの利用方法などを考慮する必要がある」とする基準を初めて示した。
被告は17年10~11月、自分のサイトを閲覧した人のパソコンを無断で動かして報酬を得ようと、「コインハイブ」(19年に提供終了)といわれるプログラムを設置したとして同罪に問われた。サイトを閲覧すると、閲覧者のパソコンが勝手に動き、仮想通貨の取引履歴を検証するマイニング作業を実施。サイト運営者は仮想通貨で報酬を得ることができ、被告は約800円を得ていた。
同小法廷はまず、コインハイブの動作をサイト閲覧者が認識できるかどうかを検討。被告のサイトでは、閲覧時にマイニングが行われることに同意を得る仕様になっていなかったことなどから、コインハイブにはパソコン使用者の意図に反した動きをさせる「反意図性」があったと認定した。
一方で、閲覧者のパソコンに与える影響は、消費電力が若干増加したり、処理速度が遅くなったりするものの、閲覧者が気づくほどではなかったと指摘。「社会的に許容される範囲のもので、不正性はない」と結論づけた。
19年3月の1審・横浜地裁判決は、パソコンへの影響が限定的だとして無罪を言い渡したが、20年2月の2審・東京高裁判決は、「社会的に許容すべき点は見当たらない」として罰金10万円の有罪としていた。