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障害者が暮らすグループホームが、分譲マンションに入居することの是非が問われた訴訟で、大阪地裁は20日、住宅以外の使用を禁止した管理規約に反するとして、グループホームを運営する社会福祉法人に部屋の使用禁止を命じた。

判決によると、マンションは1988年築の15階建て。法人は約20年前から2部屋を所有者から借りて運営し、現在は知的障害者の女性6人(40~70歳代)が職員と生活している。組合側は2016年、地元の消防署からの指摘で入居を把握し、18年に管理規約に反するとして提訴した。
龍見裁判長は判決で、グループホームの入居で消防法に基づく防火対策の規制が厳しくなり、点検や消火設備の設置が必要になると指摘。高額な費用が見込まれるとし、「経済的な負担から影響があり、管理規約に反する」と判断した。
グループホームの役割については「障害者の生活の本拠で、公益性の高い事業」としたが、「他の住民の不利益より優先されることは認められない」と述べた。
マンションには現在、消火設備の設置を免除する大阪市の特例制度が適用されている。管理組合側の代理人弁護士は「障害を持っている人を差別する意図はない。正当な判決だ」とのコメントを出した。
難しい都市部での戸建て
「障害者の行き場がなくなる」。判決後の記者会見で、社会福祉法人の幹部は困惑の表情を浮かべ、代理人の藤原航弁護士は「全国のグループホームに影響が出かねない」と批判した。
障害者の自立につながりやすいとしてグループホームの需要は高まっており、厚生労働省によると、2020年度の事業所数は5年前の1・4倍に増え、1万を超えている。
課題は場所の確保だ。特に都市部では土地や建物取得の費用負担の重さから、戸建てが難しいという。日本知的障害者福祉協会(東京)の20年度の調査では、回答した約1300事業所のうち約3割が集合住宅に開設していたが、住民側が反発することもある。
このため、大阪府は府営住宅を積極的に提供しており、20年度末で公営住宅で全国最多となる535戸を貸し出している。
大阪府立大の三田優子准教授(障害者福祉)は「消火設備などの設置費用を事業所や住民に負担させるのは、国が後押しするグループホームの普及の妨げになりかねず、費用を公的に支援する仕組みが必要だ」と話した。