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国内各地で脱炭素に向け、温泉水や家畜の

ドローンに車に
東北大の研究チームは秋田県の田沢湖に流れ込む玉川の上流にある、玉川温泉由来の水から水素を取り出す試験を進めている。土屋範芳教授(環境地質学)と大庭雅寛・特任准教授(地球化学)らは廃アルミニウムと反応させて水素を発生させようとしている。
チームは2021年10月、同県仙北市で温泉由来の強酸性水約3リットルとアルミくずを反応させる密閉型装置の性能を確かめた。市は取り出した水素を農業や災害用ドローンの燃料に使う方法を探る。
北海道鹿追町では15年度、乳牛の糞尿から水素を製造し、地域で利用する環境省の実証事業が始まった。
製造・貯蔵を担うのは、産業ガス大手のエア・ウォーター(大阪市)など企業4社が設立した「しかおい水素ファーム」だ。糞尿を原料とするメタンガスから1時間あたり水素70立方メートルを製造し、燃料電池で動く自動車やフォークリフトなどに供給した。30キロ以上離れた帯広市内に水素
プロジェクトに当初から関わる石井一英・北海道大教授(環境システム)は「行政や企業、消費者が協力し、より大口の需要を生み出せば、事業化に結びつく」と語る。
家庭ごみ
化学メーカー・昭和電工の川崎事業所(川崎市)では、一般家庭や事業所から生じる使用済みプラスチックを使い、アンモニアを製造している。この工程で生じた水素を、約5キロ離れたホテルに地下パイプラインを通じて供給。ホテルは発電などに使う。
政府は、脱炭素社会を担うエネルギーとして、水素を安価で大量に調達する仕組みを模索する。海外から運ぶ技術の試験を進める一方、国内で安定的に生産する体制の構築も目指す。
河野龍興・東京大特任教授(水素エネルギー)は「各地で多様な原料から水素を作りだそうとする動きは、エネルギーの安定供給に向けた取り組みとして評価できる。地域で製造して消費する『地産地消』が実現すれば、効率的なエネルギーの利用に結びつく」と期待する。