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山形県新庄市金沢の洋菓子店「

キュリオ店長の武田秀勝さん(47)は約3年前、温泉熱を利用したバナナ「雪ばなな」が、戸沢村のビニールハウスで試験栽培されていることを知った。試験栽培を担当するJAおいしいもがみ職員、片岡真紀子さん(42)と、互いに行きつけのコーヒー豆専門店で雑談した際、雪ばななの話が出たのだ。

片岡さんによれば、試験栽培は2017年12月から始まり、年間約3000本のバナナを収穫するが、うち約1割は皮に傷があったり、黒ずんだりなど見た目の問題で出荷できない。加工用の販路を探ろうと冷凍庫で保管を続けるものの、安定した受け入れ先がないことが悩みだった。
食品ロスに関心がある武田さんは「見た目で捨ててしまうことになればもったいない」と20年5月、アイスクリームと牛乳に雪ばななを混ぜたシェークを発売。手間がかからず作れ、好評も得たものの、冷たいシェークは冬に売れなかった。そのため通年で販売できる焼き菓子の商品化を目指した。
試作を繰り返し、完成した「雪ばななケーキ」は、バナナをミキサーでピューレ状にして生地に練り込み、食感を出すため2センチ大の粗めに切った皮も混ぜる。生の材料を焼き菓子に使う場合、日持ちさせるため、砂糖に漬けて水分を減らすことが多いが、その工程は外した。「雪ばななのフルーティー感を残したい」との思いからだ。
先月13日に発売したところ、2週間で100個以上が売れた。市内外のリピーターが多いといい、片岡さんは「廃棄の恐れがあるバナナが焼き菓子に生まれ変わり、四季を問わず食べてもらえるのはうれしい」と喜ぶ。
食品ロスの問題などに詳しい山形大農学部の藤科智海准教授(47)は、「地域の温泉熱を活用したバナナ栽培は省エネルギーで環境への負荷が少ない。さらに地元の店と連携し、市場に出荷できないバナナを有効活用することはSDGsの視点からも優れている」と評価する。
雪ばななケーキは、税込み302円。問い合わせはCurio(0233・29・8711)へ。
◆食品ロス =見た目や大きさが流通規格に合わなかったり、賞味期限が近づいたりなどの理由で、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品。農林水産省の推計では、2019年度は国内で約570万トンに上る。19年10月、「食品ロス削減推進法」が施行。食品ロス削減は、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の一つ。