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「ウクライナやロシアの仲間は大丈夫だろうか」――。国際的に活躍する切り絵画家、久保修さん(70)は、連日、ロシア軍によるウクライナ侵攻のニュースに接し、切り絵を通して親しくなった現地の人たちの安否が気がかりでならない。「平和とは何か」を考えながら、自身の創作活動と向き合う中、ウクライナに一日も早く平和が訪れることを願った作品を完成させた。(デジタル編集部 長野浩一、加藤雅浩)

久保さんは山口県
国内外で作品の評価が高まる中、2009年に文化庁の文化交流使に指名され、切り絵を通じて日本文化を海外の人たちに伝える活動を始め、14か国を訪問。ウクライナには12年に1度、ロシアには12~14年に計3度訪れ、展覧会や切り絵の体験会を通じ、現地の人たちと交流した。

「子供から大人まで、参加したみんなが笑顔で切り絵づくりを楽しんでくれた。歴史と文化が息づいた美しい街並みも印象的で、ウクライナの首都キエフにあるアンドレイ教会に続く石畳の坂道『アンドレイ坂』を題材に作品を作ったほど」と語る。
連日、ウクライナの街並みが傷つけられ、多くの命が奪われていると報じられている。「どちらの国の人たちにも共通するのは、優しい笑顔。国の指導者の誤った言動で、彼らが目をつり上げて互いに争い、平穏な暮らしが奪われることがあってはならない」と憤る。
両国に、今でも付き合いがある友人がいるが、ウクライナの仲間とはSNS上での連絡が途絶え、ロシアの仲間とはメールで連絡がついたものの「戦争反対」が文言からにじみ出ると、相手に迷惑がかかると思い、控えているという。

作品づくりに励む中「切り絵画家として平和を訴えることはできないか」と考え、ウクライナの国旗と同色のハートの中に、平和を象徴するオリーブの枝をくわえ、翼を広げた白いハトを描いた作品を仕上げた。
「ウクライナに一日も早く平穏な日常を取り戻せるよう、作品をステッカーなどにして、思いを同じくする人たちに届けたい」と考えているという。「ウクライナとロシアを知る者として、両国の人々が笑顔になる日が、一日も早くやって来ることを願わずにはいられない」