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ふるさと納税の返礼品業者らから9000万円を超える賄賂を受け取ったとして、受託収賄罪などに問われた高知県
競争に熱

「多額の金を動かし、金銭感覚がおかしくなった」
1月24日の被告人質問。違法行為に手を染めた理由を弁護人に問われた柏木被告はこう述べ、「生まれ育った奈半利に恩をあだで返してしまった」と語った。
柏木被告は2016~19年、ふるさと納税の返礼品の選定や発注を巡って便宜を図り、返礼品業者から約180万円を受け取ったとする受託収賄罪と、精肉店を経営する親族から9197万円を受け取ったとする収賄罪などで起訴された。
柏木被告が、ふるさと納税の担当になったのは11年。「旬の魚の詰め合わせ」などの返礼品を考案し、就任時は年300万円程度だった寄付額を14年度に2億円超に押し上げた。業務をほぼ1人で担い、連日深夜まで作業をこなしたという。
柏木被告は法廷で「町職員になってから時間を持て余してきた。ふるさと納税はやりがいがあった」と語ったが、他自治体との競争に熱を上げていく。
寄付額に対する返礼品の調達価格の割合を8~9割に引き上げ、17年度の寄付額は全国9位の39億円に。公判では「ふるさと納税は、自治体間のパイの取り合い」と述べる場面もあった。
親族と
だが、人気とともに返礼品の供給が間に合わなくなり、業者の作業を自身や両親が手伝うように。その中で、業者との関係を深めた。
検察側によると、上司の息子も雇うよう業者に求めた上、作業実態がないのに報酬を支払うよう指示。柏木被告は、親族の精肉店にも、同様に両親へ報酬を支払わせており、検察側はこれらの報酬が賄賂にあたるとしている。役場では、多額の寄付を集めた「エース職員」に口を出す人はいなかったという。
事件では、柏木被告と共謀したとして上司や両親も起訴されたが、父親は公判中の昨年末に死亡した。勾留を一時解かれ、棺に眠る父と対面した柏木被告は、法廷で「もっと早く立ち止まっていればよかった」と後悔の言葉を口にした。
検察側は柏木被告に懲役7年と追徴金9376万円を求刑。柏木被告は収賄罪は認めているが、受託収賄罪の約180万円分については「賄賂ではなく、上司の息子が作業した対価との認識だった」と否認している。
地元「制度復帰が頼み」

奈半利町では、返礼品の価格を安く偽って国に報告していた問題も明らかになり、20年7月、ふるさと納税制度創設後初めて、国から指定を取り消された。
ふるさと納税による寄付を受けられなくなった影響で、19年度に67億8800万円に上った町一般会計当初予算は、21年度は28億4000万円と半分以上減った。
取り消し期間は今年7月に終了し、町は制度復帰に向けて準備を進めている。事件の教訓から、昨年11月、外部有識者が返礼品の契約内容などをチェックする委員会を設置。返礼品を扱っていた約40業者のうち、廃業した3業者を除いて参加の意向を示しているという。
ある業者の男性は「コロナで売り上げが5割も減った。事件を起こした町に寄付してもらえるかわからないが、ふるさと納税に頼るしかない」と語った。