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「心霊スポット」としてホラー映画のロケ地となった廃虚がある富山県魚津市の地区住民が、制作側の協力を得て建物周辺の風紀の改善に乗り出した。映画の配給会社が防犯カメラを設置するなどして支援し、住民らも監視活動に力を入れる方針だ。
最初は撮影に否定的「ただでさえ印象が悪いのに」

「呪怨」などで知られる清水崇監督が手がけるホラー映画「牛首村」のロケ地となったのは、魚津市の「旧坪野鉱泉」と呼ばれる廃業したホテルの建物。20年以上、廃虚となっており、肝試しで訪れる若者が騒いだり、不法投棄が続いたりして、風紀や防犯上の問題が指摘されてきた。
映画は「実在の心霊スポットを舞台に」との企画だったことから、撮影地の候補として旧坪野鉱泉が浮上した。ただ、住民の多くは問題のある廃虚がクローズアップされることに抵抗を示し、昨年5月の最初の説明会でも「ただでさえ印象が悪いのに」とほぼ反対一色。当時、地元の坪野地区区長だった男性(47)も否定的だった。
一方で「映画を機に地域を変えたい」との声も一部にあったことから、話し合いを継続。その後、制作側が、ロケ地マップを作って周辺の観光地をPRするメリットなどを紹介すると、住民側も理解を示すようになった。男性も「地区を復活させるチャンスになるかも」と賛成に転じ、撮影の受け入れが決まった。
住民は撮影を応援、映画会社は防犯に協力
撮影は昨年7月に行われ、住民はエキストラとして出演し、ロケ弁に地元産米を提供するなどして応援した。今年2月から全国公開され、ホラーファンの間で好評を得ている。
映画を配給する東映は撮影場所周辺の防犯対策として、施設の入り口にフェンスを設け、地区内の県道沿い2か所に防犯カメラを設置した。住民らも地域の防犯活動を強化するなど、相乗効果が生まれている。

4日には防犯カメラのお披露目会が開かれ、清水監督は「地元の協力がなかったら成立しなかった。映画が富山の色々な場所を見に来てもらうきっかけになればうれしい」とあいさつ。下谷さんは「地区の将来を住民が一緒に考えるいい機会になった。今後はホラー以外でも撮影してもらい、地元を盛り上げられたら」と話している。