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東京都千代田区神田須田町に、スリランカ人男性が1人で切り盛りするカレーの店がある。提供するのはとろりとしたルーが特徴の日本式カレー。日本のカレーを世界に広めたいと昨年、念願だった自身の店を開いた。

店主のナサルディーン・モハメド・アジャトさん(29)は2015年に留学のため来日。栃木県で暮らしたが、豚肉やアルコールが摂取できないイスラム教徒のため食事に困ったという。「どの食事が大丈夫か分からないので、ずっと卵を焼いて食べていた」とアジャトさんは振り返る。

その後、専門学校を卒業し、19年に就職のため上京したアジャトさんは、人生を変える食べ物に出会う。イスラム教の戒律に沿って調理する、ハラール対応の日本式カレーだ。カレー専門店チェーン壱番屋が出しており、「スリランカのカレーとは全く違う、未知のおいしさでした」。
スリランカにいた頃はパン屋でアルバイトをしており、料理は得意だ。多くの外国人観光客が日本を訪れていた時期で、来日するイスラム教徒にも安心して日本の料理を食べてもらいたいと思い、日本式カレー店の出店を計画。カレー店でアルバイトをして腕を磨き、目の前にモスクがある立地で21年1月、店をオープンさせた。メニューには、もう一つの好物まぜそばも加え、店名は「ニコニコ まぜ麺&カレー」にした。
しかし、コロナ禍は思った以上に長引き、モスクを訪れるイスラム教徒は減った。訪日観光客も戻ってこない。それでも、スリランカカレーを日本人に出すなどして持ちこたえている。



アジャトさんの店の壁には世界地図が貼られ、来店客が出身地をピンで刺している。「いつかこの地図をピンでいっぱいにしたい。海外にも進出して、日本のカレーを広めたい」。アジャトさんは目を輝かせて語った。(写真と文 三浦邦彦)