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国や自治体の施策を周知するためのネット広告が、偽情報を流したり外国人差別をあおったりするサイトに自動表示されてしまう。そんな意図しない事態を避けようと、行政機関で対策の動きが出始めた。不適切なサイトに広告を出すことが信頼を損ないかねないためだ。広告収入を得る目的で運営されているサイトも多く、公金が流れるのを防ぐ狙いもある。
信用失墜
「国税庁の信用失墜やブランド

国税庁は昨年度、「確定申告」や「税を考える週間」をPRするネット広告を委託した会社に対し、こんな条件を文書に追加した。
わざわざ記載したのは、ネット広告は表示先を把握するのが難しい複雑な仕組みになっているためだ。サイト閲覧者の検索履歴などに応じて自動的にマッチングされる「運用型」が中心で、一つの広告の掲載候補は数万にも上る。
このため、新型コロナに関する虚偽の情報や、ヘイトスピーチ(憎悪表現)、漫画の海賊版など違法な内容を掲載するサイトに、知らない間に表示されてしまうリスクがある。
欧米企業では、不適切サイトへの掲載がブランド価値を損なうとして対策を求める「ブランドセーフティー」の意識が高まっている。日本でも対策を検討する企業が徐々に増えており、大手広告会社などが、あらかじめ表示候補から外す不適切サイトの「排除リスト」を導入している。
国税庁も「政府の広告は公金が使われており、必要な対策だ」として、広告会社に排除リストの使用を求めたという。
デマ発信源に
実際に広告が表示されてしまった例もある。
2020年秋の米大統領選を巡っては、日本でも運営者不明のサイトが「大規模不正があった」とするデマを繰り返し発信。SNSで大量に拡散された。読売新聞が調べたところ、このサイトには銀行や家電メーカーなどとともに、多くの自治体の防災や観光、経済支援などに関する様々な広告が表示されていた。
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