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新型コロナウイルスの感染拡大から2年が過ぎた今も、国内では医師らが患者の発生情報を国の専用システムに入力せず、紙の発生届が使われている。保健所がファクスで受け取って代わりに入力に追われており、読売新聞の調査では、第6波は全国の政令市の感染者のうち約5割が代行入力と判明した。中には「9割が代行」の市もあり、保健所の逼迫は解消されていない。


コロナの陽性が判明した場合、診察した医師は感染症法に基づき、▽氏名▽住所▽発熱などの症状▽ワクチン接種の有無――などを保健所に届け出ることが義務づけられている。
コロナ禍の前までは、感染症が発生すれば、医療機関は紙の発生届をファクスで保健所に送ってきた。しかし、コロナの流行を受け、国は2020年5月、診察した医師らに直接、患者情報を入力してもらうことで迅速にデータを収集・活用するためのシステム「HER―SYS(ハーシス)」の運用を開始した。
読売新聞は今年3月~5月、全国の20政令市と東京23区の計43自治体に対し、第5波ピーク時の1週間(昨年8月16日~22日)と、第6波で感染者が1日5万人超だった1週間(2月28日~3月6日)の届け出状況を調査。広島市と東京都台東区を除いた41市区から回答を得た。
この結果、第6波では、回答があった19政令市の感染者総数(約11万2000人)のうち49%にあたる約5万5000人分は、ファクスや持ち込みで提出された。第5波も53%で、紙の解消は進んでいない。
国はハーシスでの一元管理を求めており、紙で届いた発生届は、保健所が人手や費用をかけて入力を代行している。
代行入力の割合が最も高かったのは静岡市の96%で、浜松市(94%)、神戸市(85%)、熊本市(73%)が続いた。市側は医療機関の直接入力を求めているが、医師らはパソコンの扱いに慣れていないことなどから協力が得られていない。
一方、東京の22区は、第5波は平均で46%だったが、第6波には20%に半減した。東京都は今年1月、代行入力を解消するため、医療機関に対して協力金の支給を始めており、ハーシス入力が進んでいる。