完了しました
海外に住む日本人が最高裁裁判官の国民審査に投票できないのは憲法に反するとして、在外邦人ら5人が国に1人当たり1万円の損害賠償などを求めた訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は25日、投票を認めていない国民審査法は「違憲」とする初の判決を言い渡した。国会が在外審査制度を創設する立法措置を怠ったとして、1人当たり5000円の賠償も国に命じた。


裁判官15人全員一致の意見。最高裁が法律を違憲とするのは11件目で、国会の立法不作為について賠償責任を認めたのは2件目となる。政府は在外審査の実施に必要な法改正を行う方針。
国民審査法は在外邦人の投票を認める規定がない。原告5人は2017年10月の審査時に海外に住んでいて、投票できなかった。
判決はまず、国民審査権について「主権者である国民の権利として、選挙権と同じように平等に行使することが憲法で保障されている」と指摘。在外邦人の投票を制限することは、やむを得ない事情がなければ原則、許されないと述べた。
その上で、「裁判官の氏名を印刷した投票用紙を海外に送付し、開票に間に合わせることは困難だ」とする国側の主張について、現状とは別の投票方式を採ることもできることから、「やむを得ない事情があるとは到底言えない」と指摘。在外邦人が投票できないことは、国民に公務員の選定や
在外邦人が次回の国民審査で投票できないことは「違法」とも言及した。
さらに、かつては在外邦人に認められていなかった選挙区での国政選挙の投票が、最高裁大法廷の05年の違憲判決を機に解禁された経緯を踏まえ、国には長期にわたって在外審査の立法措置を怠った責任があるとして、賠償も命じた。
木原誠二官房副長官は25日の記者会見で「(判決を)厳粛に受け止めたい。今後、判決の内容を十分精査する必要があるが、立法的な手当てはいずれにしても必要だ」と述べた。制度を所管する金子総務相は同日、「判決内容を踏まえ、国民審査の在外投票を可能とするための方策について早急に検討する」との談話を出した。
外務省によると、在外邦人は昨年10月時点で約134万人で、有権者は約100万人に上る。このうち、在外選挙人名簿に登録され、国政選挙に投票できる人は約10万人いる。
◆国民審査 最高裁の裁判官に対し、任命後の最初の衆院選に合わせて、その職にふさわしい人物かどうかを国民が審査する制度。有権者は辞めさせるべきだと考える裁判官名に「×」を記し、これが有効投票の半数を超えた場合、罷免される。