成長の証しなのに「人見知り」しない子、「マスクで顔が区別できないのでは」…[コロナ警告]ゆらぐ対人関係

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祖母わからず

 埼玉県越谷市に住む1歳8か月の男児は4月、自宅前で祖母に名前を呼ばれ、固まってしまった。

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 「ひょっとして、誰かわからないの?」。知らない人から声をかけられたような反応を見せる長男に、母親(35)は驚いた。

 祖母は隣に住んでおり、よく保育園の送迎をしてくれている。普段はマスク姿だが、この日はたまたま畑仕事のため外していた。「マスクに囲まれていることが、息子の成長に悪影響を与えているのでは」。母親は不安を隠せない。

 保育の現場からも長期化するマスク生活の影響を心配する声が上がっている。

 「この2年、人見知りしない子が増えている気がする」。園長歴20年超の私立勝田保育園(千葉県八千代市)の丸山純園長(55)はこう話す。日常的に接しない丸山園長が1歳児の部屋に入ると、激しく泣かれるのが通例だが、最近は警戒せずに駆け寄ってくる子もいる。人見知りは顔を認識できている成長の証しでもあり、丸山園長は「顔が区別できているのかと不安に感じる時がある」と打ち明ける。

泣いて訴える

 子どもの愛着形成を研究する 比治山ひじやま 大(広島市)の七木田方美教授が昨夏に保育士に行った調査では、マスク着用による乳幼児の変化(複数回答)は「表情が乏しい」が46%、「発音に問題を感じる」が20%で、「人見知りしなくなった」も6%あった。嫌なことがあると言葉ではなく、泣いて訴えるケースも目立つという。七木田教授は「言葉の獲得の遅れによって、泣いて訴える子が増えた可能性がある」と分析する。

 新型コロナウイルス流行の「第6波」で10歳未満の感染者が急増したことを受け、政府は今年2月、2歳以上の未就学児にマスク着用を推奨したが、5月に入り、一律の着用は求めない方針に転換した。理由の一つに「表情が見えにくくなることによる影響が懸念される」ことを挙げた。

 京都大の明和政子教授(発達科学)によると、大脳にある視覚野や聴覚野が環境の影響を強く受けて発達するのは、生後数か月から就学前後という。この時期は、表情や声を見聞きすると同時に、まねることで相手の心を理解する能力や言葉を身に付ける。

 明和教授は「生後6か月以降になると、目よりも口元をよく見るようになる。この学びの機会を家庭以外で得ることが難しくなっている」と話す。

 マスク着用による子どもの脳発達への影響は、日本でも懸念が高まってきたが、それを示す科学的根拠はまだ十分に収集されていない。明和教授は「国は早急に実態調査を行い、根拠に基づいて子どもたちへのコロナ対策を実践していく必要がある」と指摘する。

透明マスク

 大人の保育士は引き続き、マスクの着用が求められる。そこで口元が見える透明マスクを導入する園もある。

 「おはなし、おはなし~」。越谷市立増林保育所では5月中旬、透明マスクをつけた保育士の石塚亜希子さん(34)が4歳児に絵本の読み聞かせをしていた。物語に合わせて表情をコロコロ変えるたび、子どもたちの目線が集まる。「明らかに私の表情にも注目してくれているのがわかる」

 この春から透明マスクを取り入れた大津市の小規模保育施設「えんじぇるはうす」でも変化があった。昨年度入園の子どもたちは施設に慣れるのに3週間ほどかかり、よく泣いたが、今年度は1週間ほどでほぼ泣かなくなった。

 透明マスクの効果は高いが、市販価格は1個1000円前後と安くはない。4月に市立18園(保育士約500人)に計1000枚を配布した越谷市では購入費だけで約150万円かかった。繰り返し使えるが、すぐに曇ったり、蒸れたりと着用し続けるのが難しい。現場では、読み聞かせや食事に使用を限るなど試行錯誤を重ねている。(ご意見・ご感想をお寄せください)

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