不正暗号資産を確実に没収、法改正で対象明確化へ…犯罪収益を阻止

 法務省は、犯罪グループなどが不法に入手した暗号資産を確実に没収するため、組織犯罪処罰法を改正する方針を固めた。暗号資産はサイバー攻撃で狙われたり、マネーロンダリング(資金洗浄)に悪用されたりするケースもあるが、現行法では没収対象に含まれるか明示的な規定がなく、「犯罪収益の取り上げに支障を来す」と懸念されていた。

 暴力団などによる組織犯罪や資金洗浄を取り締まる同法は、犯罪収益が▽土地・建物などの「不動産」▽現金や貴金属といった「動産」▽預金などの「金銭債権」――である場合は没収できると規定している。

 ただ、暗号資産は「円」や「ドル」といった通貨のように国や中央銀行の後ろ盾がなく、発行主体も明確ではないことから、不動産や動産だけでなく、金銭債権にも当たらないという解釈が一般的だ。暗号資産の持ち主が「取引所」と呼ばれる交換業者に預けている場合、金銭債権とみなされることもあり得るが、その線引きは、はっきりしていない。

 このため、サイバー攻撃で流出したり、犯罪で得た資金を交換したりした暗号資産を見つけても、犯人側の手元に残る事態が生じかねず、検察当局からは「確実に没収できるよう、必要な立法措置を講じるべきだ」との指摘が出ていた。

法務省

 日本のマネロン対策は国際機関から法定刑の低さが問題視され、法制審議会(法相の諮問機関)が2月、同法の「犯罪収益等隠匿罪」などの刑を引き上げるよう答申している。

 法務省は暗号資産が没収対象であることを明確にするため、今年度中にも、法制審の議論を経て法改正の具体的な内容を詰める。暗号資産の取引には暗証番号にあたる「秘密鍵」が必要だが、没収の実効性を高めるため、こうした仕組みへの対処方法も検討するとみられる。

 一般社団法人「日本暗号資産取引業協会」によると、国内の暗号資産の取引総額は2020年度に約117兆9690億円となり、16年度の33倍に急増した。一方、18年にはサイバー攻撃を受けた交換業者から約580億円相当が流出する事件が発生。交換業者が「マネロンなどの可能性がある」として所管官庁に届け出る取引件数も増えている。

 ◆ 暗号資産 =インターネット上で取引される「仮想のお金」。2019年の資金決済法改正で「仮想通貨」から呼び名が変わった。一般的には交換業者に口座を登録し、入金すると購入できる。21年3月末時点では6000種類以上が流通していたとされ、ビットコインが代表例。

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