建造物侵入容疑の逮捕歴投稿、ツイッター社に削除命令…最高裁が逆転判決

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 ツイッターに投稿された逮捕歴が閲覧可能なのはプライバシー侵害にあたるとして、東北地方の男性が米ツイッターに投稿の削除を求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷は24日、投稿の削除を命じる判決を言い渡した。草野耕一裁判長は、投稿の元となった記事が既に削除されていることなどを考慮し、今回のケースは削除が認められると判断した。

最高裁第2小法廷(24日)
最高裁第2小法廷(24日)

 ツイッターに投稿された逮捕歴の削除請求に対し、最高裁が判断を示したのは初めて。裁判官4人全員一致の意見で、ツイッターの逆転敗訴が確定した。

 判決によると、男性は2012年に建造物侵入容疑で逮捕され、罰金刑を受けた。逮捕を実名で報道した記事はツイッターに複数投稿され、報道機関のウェブサイトでは元の記事が削除されたものの、ツイッターでは逮捕記事の一部を転載した投稿が閲覧可能だった。

 インターネット上の逮捕歴の削除を巡り、最高裁は17年1月、検索サイト「グーグル」での検索結果について、削除を認めない決定を出している。24日の判決はこの決定を踏まえ、表示される事実の性質や内容、被害の程度、ツイートの目的や原告の地位、状況の変化などを考慮し、「公表されない利益が、公表する利益を優越する場合には削除が認められる」と述べた。

 その上で、今回の事件は軽微ではないものの、元の記事が既に削除されていることや、2審の結審時までに逮捕から約8年が経過していたことなどを指摘。今回の投稿は逮捕の事実を速報することが目的で、長期間にわたり閲覧されることを想定したものとはいえないとも述べ、削除を命じた。

 ツイッターは、公的機関なども利用する代表的なSNS。日本国内のユーザーは17年時点で約4500万人とされる。1審・東京地裁は19年10月、投稿の削除を命じたが、20年6月の2審・東京高裁は削除を認めていなかった。

 判決後、原告側代理人の田中一哉弁護士は「主張が完全に認められ、ほっとしている」と話した。一方、ツイッタージャパンは「本件についてのコメントは控える」としている。

 この日の判決は、逮捕歴の削除に高いハードルを課したグーグルへの最高裁決定を踏襲しつつ、削除を認める結論を示した。

 最高裁はグーグルへの決定で、削除できるのは「逮捕歴を公表されない利益が、公表される利益より明らかに上回る場合」とする厳格な基準を提示。その後、同種の裁判では、この基準を根拠に投稿などの削除を認めない判断が相次いだ。

 今回の判決は、削除の可否の判断にあたり、グーグル決定で挙げられた考慮要素と同じ点を列挙した。しかし、公表されない利益が「明らかに上回る」との文言はなく、ツイッターの方が削除を認められやすくなる可能性が出てきた。

 背景には、検索サイトであるグーグルが「インターネット上の情報流通の基盤」と位置付けられたのに対し、ツイッターへの投稿は速報性が重視され、長期間の閲覧を想定していないと判断されたことがある。

 また、グーグル決定の逮捕歴が、社会的に強く非難される児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑事件だった点や、逮捕から削除の可否の判断までが5年だった点など、双方の事例には差異もあった。今回は投稿の元となった報道機関の記事が削除済みとの事情もある。

 あるベテラン裁判官は「今回の判決は『事例判断』で、今後も削除を認めるかどうかは、逮捕からの時間の経過や投稿内容の公共性の有無などを慎重に検討することになる」と分析する。

 鈴木秀美・慶応大教授(憲法、メディア法)は「削除の可否を判断する上で、投稿者の『表現の自由』や利用者の『知る権利』の保護も考慮する必要がある」と指摘。「安易に削除を認めるのではなく、裁判所やネット事業者は事例ごとに公共性を丁寧に判断する姿勢が求められる」と話した。

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