ばあさんは15歳

  • ばあさんは15歳 第96回

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     「でも、夜は? どこに泊まる気?」  ふと思い出して菜緒が問う。  「夜? まあ、そのときどきだね。駅の待合室のベンチで寝ることもあるし」  「駅のベンチ? 怒られないの?」  「案外ね、見逃されてる感じ? っていうか…
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  • ばあさんは15歳 第95回

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     西原の話によると、昭和にはけっこう面倒見のいい大人が多いという。ただボーッと歩いているだけで……、まあ、西原は平成でもボーッとした顔で歩いていたからそもそも同情されやすいタチなのかもしれないが、「おい、ちゃんと食べてる…
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  • ばあさんは15歳 第94回

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     これまたしかたなく、ポシェットからハンカチを取り出す間も惜しんで濡(ぬ)れたままの手を振り振り、菜緒は再び脱兎(だっと)のごとく化粧室を出て、西原のいた場所へ戻る。  西原の最大の長所は従順なところである。「絶対動くな…
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  • ばあさんは15歳 第93回

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     「ここがどこか、あんた、わかってんの?」  すると西原が平然と、  「昭和だろ?」  驚いた。わかってるんだ。  「あんた、どこからここに来たの?」  菜緒はさらに声を潜めて訊(たず)ねる。  「ここに?」  西原が振…
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  • ばあさんは15歳 第92回

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     「よし!」  菜緒は気合いを入れた。まず、トイレに行こう。菜緒は化粧室を目指してタワー下の建物へ足を進めた。腹痛がだんだん強まってきた。これは由々(ゆゆ)しき事態だ。急がなければ。お手洗い、お手洗いはどこだ。周囲をキョ…
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  • ばあさんは15歳 第91回

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     「ほら、もう洋介さんったら。酔っ払ってるんだから」  「これごときの酒で、酔っ払うものか!」  そのとき、横断歩道の信号が青に変わった。  「じゃ、行ってきます。ご馳走様(ちそうさま)でした」  菜緒が横断歩道を渡り始…
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  • ばあさんは15歳 第90回

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     <もうすぐ出来たてのスイートポテトが食べられる>  そう思うとニヤニヤが止まらなくなって、菜緒は照れ隠しに持っていた長い枝で焚(た)き火の中を探り、サツマイモの焼き具合を見るふりをした。たちまち煙が立ち上り、菜緒はそれ…
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  • ばあさんは15歳 第89回

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    「ちょっと多いかもしれないけど、これも全部焼いちゃってくれる? 残ったらスイートポテト作るから」  「うわっ」  焚(た)き火に小枝をくべていた菜緒は、マダムの言葉に反応した。スイートポテトは大好物である。スイートポテト…
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  • ばあさんは15歳 第88回

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     「いいねえ、この飽くなき好奇心。こういう若くてソフィスティケイトされた情熱が、世の中を変革していくんだ。これからの日本は、我々若者が常に体制に目を光らせて、意見していかなくてはならんのだよ!」  菜緒とせっちゃんの前で…
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  • ばあさんは15歳 第87回

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     「たいした勇気だよ。牢屋(ろうや)に入れられてもおかしくない時代にさ。しかしニーチェはこう言い切ったのさ。神の教えとはすなわち、支配者が人民をコントロールするために利用したまやかしに過ぎない。人間の思想はもっと自由であ…
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  • ばあさんは15歳 第86回

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     「だってしょうがないじゃないか。俺は呼び止められたんだ。年配者に声をかけられて無視するのは失敬というものだ。君なら無視できると言うのかい?」  「知らないわ、そんなこと」  「ほら来た。女ってのは、答えられなくなると、…
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  • ばあさんは15歳 第85回

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     「なんかわからんけど、長い髪の女性のそばに行ってはならない、さもないと取り返しのつかない不幸があなたの身の上に降りかかりますって言うんだ」  「嫌だわ。詐欺かなんかじゃないの?」  「いや、金を要求するわけじゃないんだ…
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  • ばあさんは15歳 第84回

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     「うーん、迷うなあ……」  菜緒はメニューに目を走らせながらも、ときどきせっちゃんの顔を窺(うかが)った。声の溌剌(はつらつ)さや親切なところは、家にいるときと変わりない。でも何かが違う。菜緒はハチ公前で会ったときから…
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  • ばあさんは15歳 第83回

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     「菜緒ちゃん、好きなとこ、座って! コートはあっちに掛けてね」  せっちゃんに言われ、菜緒は入り口近くのコート掛けに向かって走った。コートをフックに掛けながら振り向くと、せっちゃんがキッチンから出てきたエプロン姿のスリ…
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  • ばあさんは15歳 第82回

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     とにかくこのご恩はどこかでお返ししよう。どうやってお返ししようかと考えながら、菜緒は振り返り、車窓から外を眺めた。四ツ谷駅を過ぎたあたりから、外濠(そとぼり)に沿って続く桜並木が美しい。この二日間で一気に開花が進んだよ…
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  • ばあさんは15歳 第81回

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     驚きの連続に興奮していた菜緒は、電車に乗って一息ついて、しばらく黙って揺られるうち、じわじわと不安が募ってきた。  出かけるのはいいけれど、そこにかかる経費をどうやってまかなうか。菜緒の財布に使えそうなお金はもはやわず…
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  • ばあさんは15歳 第80回

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     なにしろ電車に乗る方法がまったく違うのだ。スイカやパスモのようなものはどうやら存在しないらしい。自動券売機も見当たらない。せっちゃんに促され、中に人のいる窓口で、厚紙でできた切符を買い、さらに改札口へ向かうと、改札ボッ…
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  • ばあさんは15歳 第79回

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     「まったく。オリンピックまでずっとこの状態が続くのかしら。うるさいわねえ」  「オリンピック?」  菜緒が首を前に突き出した。  「あら、菜緒ちゃんったら、まさか知らないってことはないわよね? 来年の秋に東京でオリンピ…
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  • ばあさんは15歳 第78回

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     「はああ……」  菜緒は口を半開きにして、せっちゃんの頭の先から白い中ヒールの足元までを視線で二巡した。  「変? あたし」  せっちゃんが眉尻を下げて心配そうに菜緒の顔を覗(のぞ)き込んだので、菜緒は焦った。  「ぜ…
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  • ばあさんは15歳 第77回

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    あらすじ 1963年(昭和38年)にタイムスリップしてしまった菜緒とばあさん。ばあさんの実家の仕出し屋を手伝いながら、周りの人たちになじんでいく菜緒は、お手伝いのせっちゃんから、神楽坂の喫茶店に遊びに行こうと誘われる。…
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