ばあさんは15歳

  • ばあさんは15歳 第125回

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     とうとう思い余って弥太郎に泣いて訴えたところ、「そんなにつらいなら、俺から母さんに話してみるよ」と、珍しく優しい声で慰めてくれた。そして数日間、弥太郎は、まるで新婚時代が戻ったかと思うほど妻を気遣った。歌子はようやく気…
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  • ばあさんは15歳 第124回

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     徳三郎がどれほど外で女遊びに走っても、隠し子を作って相手の女から認知しろと迫られても、黙って耐え、人知れず金の工面をするのが、店の暖簾(のれん)を守る自分の務めだと思ってきた。  女にとってそういう時代でもあった。だか…
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  • ばあさんは15歳 第123回

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     歌子はいわゆるお嬢様育ちではあったが、実家と同じ商人の家に嫁ぐこと自体に抵抗はなかった。  新参とはいえ羽振りのいい弁当屋と評判である上、弥太郎自身の優しそうな性格や垢抜(あかぬ)けたセンスにも好感が持てる。もちろん顔…
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  • ばあさんは15歳 第122回

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     むしろ和(なごみ)のほうが人見知りなところがあった。幼い頃から女の子同士で集まって騒ぐことにあまり興味を示さず、家に友達を招くこともめったにしなかった。学校から帰ってくると自室にこもって本を読むか、あるいは父親のアトリ…
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  • ばあさんは15歳 第121回

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     「それって、かなり実行困難な問題なの? なんなら手を貸しましょうか?」  菜緒が軽い口調で問いかける。  「私が手伝ったほうが早く済ませられるかもしれないよ? そしたらほら、早くウチへ帰れるじゃん」  ばあさんはちらり…
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  • ばあさんは15歳 第120回

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     十五歳のばあさんの潜在意識の片隅に、のちのち自らの孫となる菜緒という名の同い年の女の子と出会った記憶が残れば、もしかして今後、ばあさんの孫に対する態度が改善されるかもしれない。「菜緒」という名前を聞くと反射的に優しい気…
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  • ばあさんは15歳 第119回

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     「ちょっと話があるから。起きてちょうだい」  間近にばあさんの険しい顔がある。  「なに?」  よからぬ気配を感じて菜緒が布団の端から目だけ出して訊(たず)ねると、ばあさんは菜緒から離れ、薄暗がりの中、自分の布団の上に…
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  • ばあさんは15歳 第118回

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     「菜緒、菜緒!」  誰かが呼んでいる。  「今、行くから。ちょっと待って!」  菜緒は大きな声でそう答え、左右のオレンジ色の鉄柱を手でつかみ、前かがみになってみるものの怖くて足が動かない。  「皆様、タイムスリップに不…
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  • ばあさんは15歳 第117回

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     菜緒は首を回して隣のばあさんの背中に目を遣(や)った。ばあさんがどうしてもしなきゃいけないこととはいったい何だろう。明日、すっかり帰るつもりになっていたのに……。  でも、とここで菜緒は考え直す。ばあさんが用事を済ませ…
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  • ばあさんは15歳 第116回

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     たちまちばあさんが挙動不審に陥った。  「会ったの? 見たの? 話したの?」  ばあさんが慌てれば慌てるほど、菜緒は楽しくなる。  「ちょっとだけ、お喋(しゃべ)りしちゃった」  「いやだねえ。どうしよう。あー、いやだ…
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  • ばあさんは15歳 第115回

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     「そう。じゃ、同い年ね。和(なごみ)です、よろしく」  どこかの国のプリンセスのようなエレガントな言い方、スマートな物腰。菜緒はすっかり圧倒された。  「私は内村菜緒と申します。皆様には大変お世話になっておりますです」…
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  • ばあさんは15歳 第114回

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     あれは若奥様の声だ。誰が遅く帰ってきたのだろう。ダンナ様かしら……。  「だって公衆電話が見当たらなかったんだもの」  若奥様の少しあとに高めの声が廊下に響いた。まだ聞いたことのない女性の声だ。誰だろう。菜緒は好奇心を…
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  • ばあさんは15歳 第113回

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     寝間着代わりとして借りている浴衣を枕の横に置き、窓のそばに干しておいたタオルを取り込んで丁寧に畳み、再び布団の傍らに座り込んで風呂敷を広げ、その上に歯ブラシとヘアーブラシとタオルと下着類を乗せ、包んで上でしっかり結んだ…
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  • ばあさんは15歳 第112回

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     菜緒は膝で布団の上を歩いてばあさんに近づいた。  「やっとパパとママに会えるんだよ!」  ばあさんは目を閉じたまま、微動だにしない。  「ちょっと、嬉(うれ)しくないの?」  たまらず菜緒がばあさんの肩を揺すると、  …
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  • ばあさんは15歳 第111回

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     「西原! 西原ってさ、私の中学のクラスメイトで野球部の子なんだけどね」  ここで菜緒は一息つく。ばあさんの反応を待った。が、ばあさんは、風呂から戻ったら即座に寝ようという魂胆か。今度は立ち上がり、押し入れから布団を出し…
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  • ばあさんは15歳 第110回

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     ばあさんは黙秘権を行使するつもりらしい。何も答えず、黒いカードをかき集め、四角くきれいに整えると、傍らに置いてあった箱に収めた。  口をきかないと決めたらテコでも動かなくなる性格を菜緒は昔からよく知っている。もしかして…
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  • ばあさんは15歳 第109回

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     おや、菜緒ちゃん、こんなところにいる。時代がずれてるんじゃないの?……なんて驚いているかな。いやいや、驚いてないだろう、月に感情はないだろうからなあ。でも万が一、感じているならば、ウチのお父さんとお母さんに伝えてくださ…
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  • ばあさんは15歳 第108回

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     菜緒はみど里さんの後ろ姿に「お疲れ様でした」と声をかけた。どう見ても、二人とも菜緒とばあさんのことを不審者と疑っている様子はない。でもこれからは部屋の中でも言葉に気をつけなきゃ……。  「みど里さんが上がったら、次、菜…
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  • ばあさんは15歳 第107回

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     あらすじ 1963年にタイムスリップした菜緒は、神楽坂に遊びに行った帰り、立ち寄った東京タワーで同級生の西原に出会う。何度もタイムスリップしているという西原に、平成時代に戻る方法を教えてもらい、意気揚々と渋谷の家に帰る…
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  • ばあさんは15歳 第106回

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     「そういえばさ」  横に広がっていた治子ねえさんの口がたちまち縦長になった。反射的に菜緒は、  「すみません」  すると、  「なに謝ってるんだい。それより菜緒ちゃんのおばあさん、少し耳がご不自由なんだねえ」  「ああ…
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