ばあさんは15歳 第1回

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絵 石川えりこ
絵 石川えりこ

 突然、ぐらりと身体が揺れた。足の下から何かとてつもない強い力で押し上げられたかのような衝撃だ。

 「うわっ」

 乗客の声が図らずもそろった。故障? それとも地震? ガラス窓の外に目をると、オレンジ色の鉄柱が動いていない。ついさっきまですいすい流れていたのに。そう気づいた次の瞬間、天井で煌々こうこうと輝いていた青色と緑色の円形照明が何度かまたたいて、そして完全に消えた。

 「きゃー」

 「やだ、なにこれ?」

 何人かの女性から遠慮がちな悲鳴が上がった。続いて「怖いよぉ」と前方で子供のおびえる泣き声が響き、「大丈夫、大丈夫」と母親らしき優しそうな声がなだめている。

 内村菜緒は今、母方の祖母とともに東京タワーの高速エレベーターの中にいる。高校進学祝いになにが欲しいかと両親に聞かれ、東京タワーに行って、そのあと豪華ディナーがいいかなと、ちょっと思いついたことを口にしてみたら、たちまち母親の万里が「やだ、菜緒ったらダサーい」と手を横に振ってあっさり否定。父親の伸次には、「パパは君にプレゼント買う予定なんで、それパスね」とやんわり逃げられて、じゃあ、聞くなよなと内心思って横を向いたら、ばあさんと目が合った。

 「あたしが連れてってやろうじゃないか」

 予想外の展開だ。ばあさんがそんな思いやり発言をすることは極めて珍しい。菜緒としては資金を出してもらって友達と行く手もあると思い、そう切り出そうかどうしようかと迷っているうちに、万里が菜緒の背中を勢いよくたたいて、言った。

 「そうよそうよ。たまには二人でゆっくり出かけてきなさいよ。ばあさんも少しは外に出て運動しないと、けちゃうもんね。帰ってきたらケーキでお祝いしましょ。菜緒は『ローズ』のチョコレートケーキがいいんだっけ? 買っとくね」

 万里にとっては待ってましたの展開だったにちがいない。ばあさんが住み慣れた渋谷の家を引き払い、この狭いマンションに越してきて一年。実の母娘だというのに衝突してばかりいる。

 

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844490 0 ばあさんは15歳 2019/10/14 05:00:00 2020/05/15 11:00:26 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191013-OYT8I50039-T.jpg?type=thumbnail

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