ばあさんは15歳

  • ばあさんは15歳 第65回

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     清子さん、しぶとい。もう逃げられないか……と、菜緒が観念して口を開こうとしたとき、  「さあさ、お喋(しゃべ)りはそこらへんでお仕舞(しま)い。みんな、食べて食べて。貴重な昼休み時間、なくなっちゃいますよ」  いちばん…
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  • ばあさんは15歳 第64回

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     テーブルを囲んでいた他の人たちも手拍子で調子を合わせる。  「私の出身? 私の出身、どこだっけ?」  ラップのリズムで応えつつ、菜緒は困った。迷った。どうしよう。ここでまた嘘(うそ)を重ねると、嘘が雪だるま式に膨らんで…
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  • ばあさんは15歳 第63回

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     菜緒は首を傾(かし)げた。そんなに早口で言われても、いっぺんに覚えられるわけがない。  「まあ、いい。そのうち覚えるさ。で?」  「で? って?」  「だから、あなたの名前は、なんてえの?」  勝子さんが、持っていた箸…
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  • ばあさんは15歳 第62回

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     「ほらほら、この汁がおいしいんだから。これもスプーンですくってご飯に乗っけな。七味は? いるか? はいよ」  隣に座っていたおばさんが、わざわざ立って、背中にあった大きな戸棚からスプーンを一つ、出してきてくれた。「あ、…
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  • ばあさんは15歳 第61回

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     大皿を抱えたおばさんが小走りでテーブルに近づいてきた。  「昨日の弁当の残りで作ったんだけどさ。各自、ご飯に乗っけて食べてくださいよ。そっちが漬け物ね。今、味噌(みそ)汁も持ってくるからさ」  大皿がテーブルの真ん中に…
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  • ばあさんは15歳 第60回

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     鍋を火の上に置くと、ホーローのボウルから卵の液をゆっくり流し込む。その瞬間、ジャアーっと卵の焼ける音がして、かすかに甘い油の匂いが流れてきた。  「死にはしないさ」  菜箸を握る手を動かしながら、優しいのか冷たいのかよ…
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  • ばあさんは15歳 第59回

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     準備が整ったところでコンクリートの土間に降り、黒い長靴に足を突っ込んで、いざ出陣。まわりの人たちの邪魔にならないよう小股歩きで奥へ進み、サヤエンドウが入っているという段ボール箱の前に立ち、上から覗(のぞ)き込んだ瞬間、…
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  • ばあさんは15歳 第58回

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     「やだ、菜緒ちゃんったら」  せっちゃんは菜緒の身体(からだ)をぴしゃりと叩(たた)いて笑い転げた。  「痛ッ」  「せっちゃーん?」  母屋からせっちゃんを呼ぶ声がした。  「あ、はーい。今、行きまーす」  すかさず…
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  • ばあさんは15歳 第57回

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     「まあ、炒飯(チャーハン)とかラーメンとか目玉焼きとか? あと、ティラミス作るの、けっこう得意です、私。ウチでも好評で」  菜緒が誇らしげに答えると、次平さんのへの字の口がかすかに緩んだ。テラミスってなんだ? と、また…
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  • ばあさんは15歳 第56回

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     その湯気の中から角刈りのおじさんがぬうっと現れ、カランカランと下駄(げた)の音も高らかに、外股歩きでゆっくり近づいてきた。  「この人、ここの大将の猪熊次平(じへい)さん。お家(うち)が魚屋さんだったから、魚をさばく腕…
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  • ばあさんは15歳 第55回

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     無意識に見過ごしてしまったチャンスとか性格の長所とか才能とかを再発見できるかもしれない。  ばあさんはそういうことに興味がないのだろうか。案外、気が小さいのかねえ。菜緒は、先刻二階の部屋を出るときに、窓の下に背中を丸め…
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  • ばあさんは15歳 第54回

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     菜緒はたちまち直立不動になり、敬礼の真似(まね)をしてみせた。  「はい。よろしくお願いします」  せっちゃんがまた笑った。  「菜緒ちゃん、ホントに可笑(おか)しい」  笑いながら菜緒とばあさんを促して廊下へ出ると、…
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  • ばあさんは15歳 第53回

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     突如、ばあさんが顔を上げた。  「お名前、なんておっしゃるんですか?」  「あ、名前?」  せっちゃんの唐突な質問に、ばあさんの顔が固まった。ハトが豆鉄砲を食らったようだとは、こういう顔のことか。菜緒も慌てた。本名を名…
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  • ばあさんは15歳 第52回

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     菜緒は両手を左右に広げてステップを踏みながら、歌うように喋(しゃべ)り続ける。せっちゃんが手を口に当てながら、目を丸くした。  「お願いします、マジ、頼みます。ねえ、ばあさんも一緒に、よろしくね!」  せっちゃんが笑い…
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  • ばあさんは15歳 第51回

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     菜緒が微笑(ほほえ)みかけると、せっちゃんもたちまち笑顔になり、「ありがとう」と礼を言った。それからばあさんのほうへ向き直り、  「とりあえず……」  せっちゃんが切り出した。反射的にばあさんが両手を歌舞伎役者が見得(…
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  • ばあさんは15歳 第50回

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     「懐かしい?」  「その、ウチの祖父の家にもこんな部屋が、ありましたんでございます」  菜緒が、使い慣れない丁寧語を駆使して言い訳がましく説明すると、目の前の能面顔がにわかに崩れた。  「あら、そう? あなたのおじいさ…
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  • ばあさんは15歳 第49回

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     さりげなく隣に目を移すと、ばあさんは驚いたことに俯(うつむ)いたきり、ビクとも動く気配がない。まさかこのままご先祖様たちとずっと目を合わさないつもりか。もったいない。せっかく再会できたのだから、しっかり視線を合わせて、…
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  • ばあさんは15歳 第48回

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     隣の蝶(ちょう)ネクタイがお父さん? っていうか、これが有名な「ウメ徳」三代目のダメ社長、弥太郎でしょうかね。むしろこちらのほうがばあさんと同系統の顔だ。面長で頬骨が張っていて。写真で見たことはあったけれど、実物のほう…
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  • ばあさんは15歳 第47回

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    あらすじ 菜緒とばあさんは、東京五輪を翌年に控えた1963年(昭和38年)にタイムスリップしていた。行く当てのない2人は、ばあさんが当時暮らしていた渋谷の家に、身分を偽り転がり込む。だが、ばあさんの様子が変だ。元気がない…
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  • ばあさんは15歳 第46回

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     実際、ソファのスプリングはギシギシと音を立てるばかりで完全にバカになっていたし、お洒落(しゃれ)なデザインの電気スタンドは電球を外された状態でいつもほこりをかぶっていた。本棚のガラスは曇り、中に収められている本の背表紙…
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