ばあさんは15歳

  • ばあさんは15歳 第44回

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     「だからあきらめて立ちション用の前をすり抜けて奥の個室に入ったんだけど、それが和式でさ」  「だから?」  「だからって言われても、私、和式使ったことないし」  「なかったかね?」  「だってここの家だって私が小さい頃…
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  • ばあさんは15歳 第43回

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     驚いた拍子に菜緒が騒ぐと、ばあさんの手が横から伸びて、菜緒の頭を思い切り叩(たた)いた。  「痛っ」  「では、朝ご飯、ご用意してありますので、お支度を終えられたら、一階の食堂にいらしてください。階段下りたすぐ横の部屋…
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  • ばあさんは15歳 第42回

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     人生の全般にわたって物事を深く考えようとしない傾向にある万里が、珍しくしんみりした口調でそう言ったので、菜緒はよく覚えている。でも、あくびは移るよ、あくびをしている人を見たら、あくびしたくなるけどねと、そのとき菜緒が反…
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  • ばあさんは15歳 第41回

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     菜緒は顔を近づけて、ばあさんのおでこに手を当てる。どうやら熱はなさそうだ。  「そっか。もしかしてそれ、時差ぼけってヤツ? タイムスリップにもそういうことあるかもしれないよ。年取ると時差ぼけって応えるらしいからね。私は…
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  • ばあさんは15歳 第40回

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    「ねえ、集団就職って、なに? 集団でウチに来たの? いっぱい?」 「違うよ」 「あ、集団で就職試験を受けに来たってことか」 「まったく何にも知らないんだから、このバカまごが」 「じゃ、なんなのよ」 「だから……、うううう…
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  • ばあさんは15歳 第39回

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     お下げ髪が恐縮したように頭を下げた。  「いえいえ、慣れておりますので、狭いところには」  ばあさんは愛想笑いを浮かべ、か細い声で応えた。菜緒が横目でばあさんを睨(にら)んだ。嫌味か。  「お布団は押し入れの中に入って…
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  • ばあさんは15歳 第38回

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     ホッとしたのか、あるいは本当に疲れが一気に溢(あふ)れ出たのか。親切なお下げちゃんに抱えられながら、よれよれと、ときどき思い出すらしく、右と左の足を交互に引きずって、ばあさんは廊下をゆっくり進んでいった。菜緒もそのうし…
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  • ばあさんは15歳 第37回

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     菜緒はガッツポーズを作って、元気よく振り返った。  「やったね!」  菜緒としては、ばあさんとハイタッチでもする勢いだった。大いなる働きだ。褒めてもらいたい。ところがばあさんときたら、さっきの威勢の良さはどこへやら。一…
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  • ばあさんは15歳 第36回

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     菜緒は急にいたたまれなくなった。ラップなんかしなきゃよかった。大恥をかいたではないか。あー、やだやだ。  菜緒がふてくされて、ガラス戸に背を向けようとしたところで、再び影が近づいてきて、今度は扉の鍵を回し始めた。ガラガ…
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  • ばあさんは15歳 第35回

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     「やだよ、もう」  菜緒が反論しかけたとき、  「はあああーい。どちら様ですか?」  家の奥から若い女性の声がかすかに聞こえた。  「あっ」と菜緒は慌てて腰を落とし、両手を開いて身構える。  「あのー」  言葉を選んで…
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  • ばあさんは15歳 第34回

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     そしてまたガラス戸を叩(たた)く。声をかける。ガラス戸を叩く。声をかける。このセットを三回ほど繰り返し、しばらく待つが、それでも誰も出てくる気配はなかった。  家の中は依然として静まり返っている。  菜緒とばあさんは三…
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  • ばあさんは15歳 第33回

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     実際、下井草のマンションには家族の寝室以外、予備の客室など一つもなく、ばあさんに当てがわれたのは、それまで物置がわりに使っていた窓のない四畳半一間。  「こんなとこで暮らしたら、早晩あたしゃ窒息死するよ」  ばあさんは…
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  • ばあさんは15歳 第32回

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     次々に起こるトラブルに修理や対応が追いつかなくなって、思えば固定資産税などを支払うのもきつくなり、そしてばあさんも古稀(こき)に近づいたことを思えば、そろそろ家を処分する時期を考えるべきではないか。そんな話が親戚の口端…
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  • ばあさんは15歳 第31回

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     菜緒が玉子焼きを焼いたのは、それが初めてだった。もちろん一人で焼けたわけではない。鍋は重いし、固まり始めた卵をひっくり返すのは容易ではなかった。じいさんが菜緒に寄り添って、菜緒の握る鍋の取っ手を後ろから支え、卵をひっく…
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  • ばあさんは15歳 第30回

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     その古びた木製の食器棚の抽斗(ひきだし)に、なぜか玉子焼き用の巨大な四角い銅鍋がいくつもしまわれているのを、菜緒はあるとき発見した。  菜緒は錆(さ)びた銅製の、片手ではとうてい持ち上げられないほどどっしりと重い鍋を一…
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  • ばあさんは15歳 第29回

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     ところがそのあと、三代目の社長となった弥太郎、つまりばあさんの父親はことごとく商人の気概に欠けていた。  ちなみに弥太郎という名は、初代ウメが尊敬していた三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎から取ったものである。岩崎弥太郎のよ…
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  • ばあさんは15歳 第28回

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     菜緒の母方の実家である山口家は、もともと渋谷区東で仕出し屋を営んでいた。明治の後半、ばあさんの曽祖母にあたる山口ウメが亭主を日露戦争で失くし、その後、後妻の口もあったが頑(かたく)なに断って、娘三人を養うため自宅の台所…
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  • ばあさんは15歳 第27回

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     菜緒は俄然(がぜん)、元気が出てきた。  「よし、じゃ、渋谷の家を目指そう!」  「えー、やだよ」  まさかの展開だ。ばあさんが意外にも抵抗の色を示した。  「やだなんて、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。他に手は…
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  • ばあさんは15歳 第26回

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     実際のところ、去年のうちに渋谷の家は取り壊されて、いったん更地になり、来年の秋までには三階建ての小さなマンションに建て替えられる予定だった。新しいマンションが完成したらばあさんは菜緒の家から出ていって、バリアフリーにし…
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  • ばあさんは15歳 第25回

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     「菜緒、あんた、いくら持ってるの?」  「私?」と菜緒はパンの袋をかたわらに置いて自分の財布を取り出した。  「えーと、全部で一万七千と、三十二円」「それっぽっちか……」  「でも、五百円玉が使えないってことは、お札も…
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