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知恵出づ 江戸再建の人

  • 知恵出づ 江戸再建の人 第21回

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     御殿づとめの侍は、のちのちまで、 ――豊後守殿(忠秋)の、きもったまよ。 と賞賛したという。 忠秋は、このとき三十三、四か。信綱はあとで聞いて、 「わしには、むりじゃ」 そうつぶやいたおぼえがある。もしもその機に際した…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第20回

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     「たのむぞ、ちえいづ」 忠秋に言われて、信綱は、息を吹き返した。聞きなれた口調のせいもあるのだろう。この六つ下の老中もまた、信綱にとっては昔ながらの友なのである。 たしか信綱が十四、五のころだったか。先代将軍・家光の小…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第19回

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     信綱は、 (ねえさま) と、脳内でこたえた。あのころ姉(ねえ)様(さま)は十歳(とお)ほどでしたか。女中たちには安姫(あんひめ)様とか、おあん様などと呼ばれていましたな。 あれを言われたのは、たしか、わしがいよいよ松平…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第18回

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     信綱は、 「上様、さあ、この手をお取りなされ。危難なき場所へお連れするまで、決してお離し申しませぬぞ。お取りあらぬか。寸秒を争うというときに。ならば」 くるりと首だけ振り向いて、ひょいひょいと将軍の手をさぐる。つかむと…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第17回

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     将軍もまた矢継ぎ早に、 「紅葉山には、神君以来の廟所(びょうしょ)がある」 「はあ、廟所」 信綱は一瞬、何を言っているのかわからなかったが、 (ああ、そうか) 笑顔を見せてやりながら、 「上様、そのご心配にはおよびませ…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第16回

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     松の焦げるにおいは濃くなっている。家綱も、事態を察していたのだろう。 (健気(けなげ)な) 信綱はむしろ、そう思った。自分が来るまでこの少年はとにかく腰を浮かすことをしなかった、ぶざまに自分を呼ぶことをしなかった。よほ…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第15回

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     ふだんは南側の日比谷門や外桜田門、あるいは西向きの半蔵門などを担当する者も行かせたので、これらの門はほとんど無防備になってしまった。若い老中・酒井忠清などは、 「だいじょうぶですか」 不安顔をしたけれど、信綱は確信的に…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第14回

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     竹橋門内はすでに炎がぶあつく噴きあがって、その熱気のため、屋根という屋根がぐにゃぐにゃに見える。じつのところその地域は、案外、建物が多いのである。 本理院(ほんりいん)の御殿もある。松平右馬頭(うまのかみ)の屋敷もある…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第13回

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     「上様のご命(めい)?」 「全員ただちにここを出て、御本丸へのがれられよと」 わっ、と女中たちの表情がはなやいだ。本丸と聞いて安心したのだ。なぜならそこは将軍の御座所である。どこにもまして侍たちが命(いのち)がけで働い…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第12回

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     江戸城はまだ健在だった。前日には門という門をぴたりと閉めて飛び火をふせぎ、塀をこえて飛んで来たものは侍、中間(ちゅうげん)、下男を問わず城内総出(そうで)でたたきつぶした。 みんなみんな、 ――この城だけは、まもらねば…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第11回

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     盗賊は、ときにはまだ生きて呻(うめ)いている者からも奪い去った。誰もそれを咎(とが)めることをしなかった。見て見ぬふりをしたというより、正義を行使する余裕がなかったのである。 翌朝になると、凍死体があらわれた。はるばる…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第10回

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     群衆は、行きどころを失った。 風上が無理なら、 「川だ。川へ行こう」 わめきつつ逃げる方向を変える者が続出したのもまた当然の心理だったが、しかしこの地区には川はほとんど神田川しかなく、その神田川も自然の川ではない。 江…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第9回

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     火元は、本郷。 本郷丸山の地にある日蓮宗・徳栄山本妙寺。 大刹(たいさつ)である。境内のひろさは旗本屋敷なみで、そのなかに十あまりの塔頭(たっちゅう)をかかえるけれども、おたがいの距離はじゅうぶんだし、それぞれに数寄を…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第8回

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     現在三人の老中において信綱が首座を占めているのは、決して年齢のせいばかりではない。頭脳の鋭敏もさることながら、このような些事(さじ)をとらえて大事をうかがう想像力、その想像をすばやく他人の頭脳へおくりこむ表現力が抜きん…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第7回

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     「……火の粉はまっすぐ、お城の空を横切った。消えぬ火のまま。そういうことですな」 酒井忠清はそう言って、また扇子で顔をあおぎだした。さっきより手の動きがせわしないのは、心がみだれたのだろう。 下座のほうで、さらさら、さ…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第6回

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     酒井忠清は色をなして、 「拙者が、まちがっている?」 「いかにも」 と、信綱は、ちらりと御座之間へつづく襖(ふすま)を見てから、 「このたびお城が焼けなかったのは、はばかりながら上様のご威光とは関係がない。もしもそうな…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第5回

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     いや、実際は、右筆どころの話ではないのである。彼らと反対のほうの襖(ふすま)の奥は、将軍の御座(ござ)之間になっている。 徳川家綱その人がいるのだ。当然この陰湿なやりとりも耳にしているにちがいない。この約三十年後、江戸…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第4回

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     翌日の朝、江戸城本丸御殿内の御用部屋にふたりの老中が来た。老中とは幕府政権における中枢のなかの中枢であり、要するに日本の頭脳である。 そのひとり、三十四歳とまだ若い酒井忠清が、 「いやあ、やはり」 着座するや否や、寒い…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第3回

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     とにかくそんなふうに九死のうちに焼亡寸前の大坂城を経験した天樹院には、いうなれば、大火感覚が身についている。 それが命にかかわるかどうか、肌でわかる。 あの頬がチリチリと縮みこむ感覚。熱さというより鋭い痛み。しかしなが…
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  • 知恵出づ 江戸再建の人 第2回

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     灰のなかには、赤く光るものもある。 光りつつ、はらりと庭のなかへ舞いこんで、軒先の瓦をかすめて落ちた。 「きゃあっ」 女中たちが悲鳴をあげ、ひしめきの密度を上昇させる。黒煙までもが流れて来る。天樹院は微笑して、 「おち…
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