黄色い家

  • 黄色い家 第380回 川上未映子

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     「なんも関係なくないわ。あんたはわたしにおなじこと 訊 ( き ) いてるんだよ。いつまでこれつづけるのかってあんた訊いただろ、それとこれとはおなじことなんだよ。答えなよ桃子、あんた自分がいつまで生きて、死ぬまでにいっ…
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  • 黄色い家 第379回 川上未映子

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    「なに勝手なこと言ってんの」自分の声がかすかに震えているのがわかった。「金の話? そろそろしたいと思ってた? 解散? あんたらなに言ってんの? 解散とか、そんなことできるわけないだろうが」  桃子と蘭がわたしの顔を見た。…
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  • 黄色い家 第378回 川上未映子

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    「花ちゃんが言うように考え甘かったし悪かったと思ってるよ。でもあたし何回も謝ったし、それ以外でべつにでかい失敗とかしてないじゃん。アタックは花ちゃんがリーダーなのはわかってるけど、でも基本あたしら同等でしょ? 携帯見られ…
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  • 黄色い家 第377回 川上未映子

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     「会議」のときはわたしが議長的な役割をしていたし、日常生活でも基本的にわたしが使えないふたりに 苛々 ( いらいら ) しているとはいえ、普段は同居している友達だからいろんなことを適当に話す。この夜は、蘭は携帯電話の新…
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  • 黄色い家 第376回 川上未映子

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     琴美さんのクラブは想像していたよりもカード決済の数が多かったので受け渡しは週に二回の間隔でわたしたちはセラヴィを続けた。そこにはまるでバケツリレーでもするような小気味良い勢いと爽快さすらがあった。あるいはすでに宛名の書…
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  • 黄色い家 第375回 川上未映子

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     「おれとトガシが店に仕込む、ばばあがスキマーに情報ためる。花、店の入り口にはカメラはないけどビルの一階にはついてっからおれらは裏から入る。琴美の店は『セラヴィ』つって三階にある。そこの二階に散髪屋があるからそこの客装っ…
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  • 黄色い家 第374回 川上未映子

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     「れもん」が焼けたあと電話では話したけれど、会うのはものすごく久しぶりだったから、ひょっとしたら一年以上 経 ( た ) っているのかもしれなかった。もともと細身の琴美さんはさらに痩せていて、暗い照明のなかでその輪郭は…
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  • 黄色い家 第373回 川上未映子

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    夜、映水さんに電話をして事情を話すと、二つ返事で――本当に二秒も間がないくらいの速さでやると即答してきて、わたしは少し怖くなった。まだ取り分のことも決まっていないのにこの勢いということは、映水さんも本当にあとがないのかも…
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  • 黄色い家 第372回 川上未映子

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     「ヴィヴィアンさんっていうんだけど。名字はわかんない。わたしらのアタックのボスって、そのヴィヴさんって人なの。黄美子さんのことも琴美さんのことも知ってるんだって。昔カジノとかで一緒だったって」 「ヴィヴィアン……誰だっ…
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  • 黄色い家 第371回 川上未映子

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     考えることがうまくできない黄美子さんが、それでも黄美子さんなりに考えて、二日前にわたしが怒鳴ったことにたいして、今こうして一生懸命に説明しにきたのだと思うと胸が少し痛んだ。数日間くすぶっていた怒りがじんわりゆるみ、そし…
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  • 黄色い家 第370回 川上未映子

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    「――これで今日の会議は終わり。黄美子さんは?」 「上だと思う」  わかっていたことだけれど、黄美子さんにはわたしの言葉は通じなかった。あの日も、家に入ってきた誰とも知らない人間を座らせて一緒にビールを飲んだことに、なぜ…
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  • 黄色い家 第369回 川上未映子

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    数分後にはどうせぜんぶ忘れてしまうくせに、そんなふうに謝ることになんの意味があるのか、少しは頭を使って考えろ――ふたりはわたしから繰りだされる言葉にうなだれて、どんどん小さくなっていった。けれど小さくなるだけではどうしよ…
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  • 黄色い家 第368回 川上未映子

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    「会議」というのはあの日をきっかけにわたしが作った時間だった。毎日一回、仕事と現状について、そして日常で気がついたことをわたしが話をし、それをふたりが聞く時間。あの日、よりにもよって他人をこの家に入れるなんてことを――こ…
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  • 黄色い家 第367回 川上未映子

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    「カメラの仕込みがあれだってんなら、映水を入れていい。あいつ完全に終わったらしいから有り難いシノギの誘いだよ。琴美だって、黄美子と映水、お仲間の生活がかかってんだからやるだろ。一枚めくれば琴美だってなんのかんの出てくんだ…
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  • 黄色い家 第366回 川上未映子

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    「スキマーなんかくっつけるだけ。どっちも黒いから全然わかんない。あとは天井に手元が映る角度にちっこいカメラ仕込むだけでいい。機械の知識なんかひとつも要らない。あんたは週いち間隔でスキマー回収して取り替えるだけ。カメラの映…
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  • 黄色い家 第365回 川上未映子

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     黄美子さんは、桃子が友達だと言ったので三人でビールを飲んでテレビを見ていたと言った。その内容、話しかた、目の動き、三人のすべてがあまりに 馬鹿 ( ばか ) すぎてそのどうしようもなさにめまいがし、同時に冗談じゃなく自…
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  • 黄色い家 第364回 川上未映子

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    わたしの剣幕に同級生はこれ以上は戸惑えないという顔をしてバッグをつかんで逃げるように出て行った。同級生を追いかけようとする桃子を制止して家のなかに連れ戻した。 「あんたなに考えてんだよっ」 「なに、なに、友達と遊んでたん…
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  • 黄色い家 第363回 川上未映子

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     そうか、というように映水さんは何度か 肯 ( うなず ) き、腕にはめた時計をちらっと見た。「もうこんなか。そろそろ行くわ。黄美子にも琴美にもあとで電話しとく。で、志訓のことだけど、黄美子には――つまり琴美にも、伏せと…
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  • 黄色い家 第362回 川上未映子

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    あらすじ  花は、自分一人が必死で4人の生活を守っている状況に怒りを覚え始める。  映水さんは少し考えるような顔をしたけれど、わたしはなぜか気持ちが 逸 ( はや ) って話をつづけた。「そりゃもちろんびっくりするだろう…
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  • 黄色い家 第361回 川上未映子

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     「 志訓 ( ジフン ) て、いただろ」  わたしは 瞬 ( まばた ) きして映水さんの顔を見た。わたしが答えるまえに映水さんが言った。「志訓。行方不明だった志訓」 「映水さんの、お兄ちゃんの」 「兄貴は死んだけどな…
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