黄色い家

  • 黄色い家 第369回 川上未映子

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    数分後にはどうせぜんぶ忘れてしまうくせに、そんなふうに謝ることになんの意味があるのか、少しは頭を使って考えろ――ふたりはわたしから繰りだされる言葉にうなだれて、どんどん小さくなっていった。けれど小さくなるだけではどうしよ…
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  • 黄色い家 第368回 川上未映子

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    「会議」というのはあの日をきっかけにわたしが作った時間だった。毎日一回、仕事と現状について、そして日常で気がついたことをわたしが話をし、それをふたりが聞く時間。あの日、よりにもよって他人をこの家に入れるなんてことを――こ…
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  • 黄色い家 第367回 川上未映子

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    「カメラの仕込みがあれだってんなら、映水を入れていい。あいつ完全に終わったらしいから有り難いシノギの誘いだよ。琴美だって、黄美子と映水、お仲間の生活がかかってんだからやるだろ。一枚めくれば琴美だってなんのかんの出てくんだ…
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  • 黄色い家 第366回 川上未映子

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    「スキマーなんかくっつけるだけ。どっちも黒いから全然わかんない。あとは天井に手元が映る角度にちっこいカメラ仕込むだけでいい。機械の知識なんかひとつも要らない。あんたは週いち間隔でスキマー回収して取り替えるだけ。カメラの映…
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  • 黄色い家 第365回 川上未映子

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     黄美子さんは、桃子が友達だと言ったので三人でビールを飲んでテレビを見ていたと言った。その内容、話しかた、目の動き、三人のすべてがあまりに 馬鹿 ( ばか ) すぎてそのどうしようもなさにめまいがし、同時に冗談じゃなく自…
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  • 黄色い家 第364回 川上未映子

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    わたしの剣幕に同級生はこれ以上は戸惑えないという顔をしてバッグをつかんで逃げるように出て行った。同級生を追いかけようとする桃子を制止して家のなかに連れ戻した。 「あんたなに考えてんだよっ」 「なに、なに、友達と遊んでたん…
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  • 黄色い家 第363回 川上未映子

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     そうか、というように映水さんは何度か 肯 ( うなず ) き、腕にはめた時計をちらっと見た。「もうこんなか。そろそろ行くわ。黄美子にも琴美にもあとで電話しとく。で、志訓のことだけど、黄美子には――つまり琴美にも、伏せと…
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  • 黄色い家 第362回 川上未映子

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    あらすじ  花は、自分一人が必死で4人の生活を守っている状況に怒りを覚え始める。  映水さんは少し考えるような顔をしたけれど、わたしはなぜか気持ちが 逸 ( はや ) って話をつづけた。「そりゃもちろんびっくりするだろう…
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  • 黄色い家 第361回 川上未映子

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     「 志訓 ( ジフン ) て、いただろ」  わたしは 瞬 ( まばた ) きして映水さんの顔を見た。わたしが答えるまえに映水さんが言った。「志訓。行方不明だった志訓」 「映水さんの、お兄ちゃんの」 「兄貴は死んだけどな…
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  • 黄色い家 第360回 川上未映子

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     店には映水さんが先に着いていてビールを飲んでいた。少し痩せた気がしたけれど、でも元気そうにみえたのでほっとしつつ、椅子に座るなり連絡がとれなくてわたしたちがどれだけ心配したかを話し始めると、映水さんはまあ落ち着いてビー…
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  • 黄色い家 第359回 川上未映子

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     みんなおなじような間の抜けた顔をして、どうせ親に金を出してもらって学校とか行って物を買ったり食べたり、そしておなじように甘やかされて育ったちゃらくさい男とか友達と遊ぶだけの毎日を過ごしてるんだろうと胸のなかで悪態をつい…
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  • 黄色い家 第358回 川上未映子

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     鈍感で世間知らずな桃子も、静香に借金を返してやった一件からわたしに気遣いをみせるようになってはいたけれど、いらいらさせられることは変わらず多かった。なにか具体的な出来事があったときだけでなく、ふたりの根本的な考えかたと…
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  • 黄色い家 第357回 川上未映子

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     「だってうち、被害者だもん。ウーノまじ頭おかしいし、うちの仲間も拉致られたりウリやらされたり限界だし、うち自身ももうやばいし。で、うちが追い込まれてんのはゴリのせいなわけ。だからゴリがこのまま逃げてんなら面倒だけど親に…
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  • 黄色い家 第356回 川上未映子

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    もちろん気は張っていた。より多くのことに目がいくようになったし、ローテーションの組み方や金券ショップでのふるまい方、偽造カードの扱いもさらに丁寧に慎重になっていたと思う。でも、そういう技術とはべつのところがたいらになった…
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  • 黄色い家 第355回 川上未映子

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    「はい。最初は黄美子さんも心配ないって感じだったんですけど、秋くらいからずっとで。なんだか、おかしい感じなんです。それでもしかしたらヴィヴさん、なにか知らないかなって思って」 「映水――」ヴィヴさんは考えるような声を出し…
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  • 黄色い家 第354回 川上未映子

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     「これでまたじゃぶじゃぶ増えるよ。磁気テープも技術がえらいことになっててびっくりしたわ。あとデータも遠隔っていうの、飛ばせるやつもあるってよ。それ使えるようになれば、いちいちスキマー回収したり韓国くんだりブツ運んだりす…
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  • 黄色い家 第353回 川上未映子

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    そうだった、この黄色はさっきわたしたちが塗ったペンキの黄色で、ここはリビング、わたしらの家……ひとつひとつを指で確認するように思いだすのに、数秒かかった。黄色まみれでかぴかぴになった桃子と蘭はぴくりとも動かず眠ったままで…
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  • 黄色い家 第352回 川上未映子

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    寒かったので窓を閉めたまま一心不乱に塗りたくり、するとあたりまえだけど、途中で気持ちが悪くなって、吐き気がし、そのあとは頭痛がやってきた。それでもやばいやばいと言いながら一刻も早く運気を取り戻さなければならないという一心…
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  • 黄色い家 第351回 川上未映子

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     「花ちゃん、だいじょうぶっ」桃子と蘭がさっとこちらにやってきて、転がったペンキと 刷毛 ( はけ ) を拾ってくれた。 「だいじょうぶ、だいじょうぶ」 「花ちゃん、これなに……? わかめラーメンは?」蘭が片手でペンキを…
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  • 黄色い家 第350回 川上未映子

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     でも、考えがつぎのなにかに結びつきそうになるたびに、巨大な鉄板みたいな天井が上から降りてきてぺしゃんこに押し潰されそうになり、間一髪でごろごろと身を転がして横に逃げても今度はおなじくらい大きな壁がこちらに迫ってやってく…
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