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“女性の連帯”サスペンス調で

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川上未映子さん、抱負を語る

社会の闇を描く今作でも、「ちょっとひょうきんな感じも出すつもりです」と語る=田中秀敏撮影
社会の闇を描く今作でも、「ちょっとひょうきんな感じも出すつもりです」と語る=田中秀敏撮影

 作家、川上未映子さん(44)の朝刊連載小説『黄色い家』が24日から始まる。『夏物語』や『ヘヴン』の英訳版が評判を呼ぶなど、海外でも脚光を浴びる著者が初めて手がける新聞連載小説だ。「朝の忙しい時間に読んで、印象に残る作品にしたい」と抱負を語る。

 2020年の春、主人公の花がインターネット上のニュースである女性の名前を見つけることから、物語は始まる。〈吉川黄美子〉。彼女は20代の女性を監禁し、傷害を負わせるなどの罪に問われていた。花は20年余り前、黄美子のもとで数人の女性の仲間たちとともに一緒に暮らしたことがあった。かつて、彼女たちの間に何があったのか――。

 著者初のサスペンス調の物語だ。現代と1996年とを行き来しながら話は進む。「初めて新聞連載にチャレンジするので、自分で型や限界を設けず、書き進めながら内容や作品のスタイルを押し広げたい」

 川上さんは、「早稲田文学増刊 女性号」を2017年に責任編集するなど、女性が抑圧されがちな社会状況と向き合ってきた。今作は女性の連帯がテーマの一つとなるという。

 「地縁も社縁もない人々が生きるため結束し、関係を維持する時に抑圧が生まれ、弱い者がさらに弱い者を虐げる。古今東西、女性同士の絆はたくさん描かれてきた。それらを別の角度から捉え、考えてみます」

 大阪で生まれ育った。数年間歌手として活動した後、詩やエッセーを書き始め、『乳と卵』で芥川賞を受賞した。『夏物語』で生殖医療や経済格差について斬り込むなど、一作ごとに意欲的に作品を書いてきた。

 連載にあたり、女性刑務所に入所する人々の背景を調べ、ジェンダー論に関わる資料にもあたった。「女性の社会における位置づけと格差の問題は、常に絡み合っている」と実感した。

 今作で描く1996年は、自身が20歳になった年だった。「まだバブル経済の余波もあり、格差が今ほど固定されてはいなかったけど、その下に貧しさは存在した。25年前と今の状況をしっかり書き、私たちが何に気づけず、何を放置してきたのかを考えたい」

 「お金や偏差値や勤め先で決められない、『生きている実感や幸せ』がある。必死に生きている人の悲しみや滑稽さも描きたい。黄美子さんがどういう人なのかは、まだ分かりません。全然知らない人を毎回理解しようとしています」

 挿絵を担当するのは、画家の榎本マリコさん(39)だ。時に幻想的でもある作品が、想像力を刺激する。(文化部 武田裕芸)

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2226638 0 黄色い家 2021/07/22 11:00:00 2021/07/23 15:12:24 本紙朝刊で始まる連載小説「黄色い家」の筆者・川上未映子さん(29日、読売新聞東京本社で)=田中秀敏撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210723-OYT8I50005-T.jpg?type=thumbnail

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