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ロング・アフタヌーン

  • ロング・アフタヌーン 第183回 葉真中顕

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     学生時代に読んでいたファッション誌がとっくに廃刊になっていたこと、インターネット通販でものを買うのが当たり前になっていること、切符を買って電車に乗る人は少数派になっていること、びっくりするくらいたくさんの若者が非正規で…
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  • ロング・アフタヌーン 第182回 葉真中顕

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     「これ。今日発売だったの」  亜里砂はバッグから一冊の本を出して目の前に 掲 ( かか ) げた。 「あ」 思わず声が出た。  雑誌だった。一般的な週刊誌よりも二回りほど小さく、 綴 ( と ) じ方もしっかりしていて…
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  • ロング・アフタヌーン 第181回 葉真中顕

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     「長い午後」④ ――じゃあ十一時に改札の前で、待っているから。  今朝、まるで夫を送り出すのを見計らうようなタイミングで、亜里砂が電話をかけてきた。近くまで来るのでターミナル駅のショッピングビルでお昼を食べようというの…
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  • ロング・アフタヌーン 第180回 葉真中顕

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     ああ、そうか。そりゃそうよね。 自分の書いたものが人にどう読まれるか、きっと誰だって不安だ。まして彼女は七年前、『犬を飼う』で受賞を逃している。  あのときの 顛 ( てん ) 末 ( まつ ) とおぼしき出来事は『長…
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  • ロング・アフタヌーン 第179回 葉真中顕

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     〈はい?〉  もう七年も 経 ( た ) っているのに、耳はまだその声色を記憶していた。志村多恵の声だ。  つながった。自分でかけておきながら、言葉が 喉 ( のど ) につかえる。 「あ、え、すみません。その、こんな…
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  • ロング・アフタヌーン 第178回 葉真中顕

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     もう一度 頬 ( ほお ) を 叩 ( たた ) いた。  思い切り歯がみをして、 喉 ( のど ) の奥から空気を絞り出す。 すると、吐けた。 わずかに胸から息が抜けたのがわかる。 もう一度、吐く。吐ける。胸のつかえ…
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  • ロング・アフタヌーン 第177回 葉真中顕

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     「ああっ!」 自然と声が出た。その拍子に吸った息が止まらなくなる。   拙 ( まず ) い―― 過呼吸が始まる。   動 ( どう ) 悸 ( き ) とともに、胸が詰まる。 大丈夫、大丈夫。 コットンタオルはないけ…
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  • ロング・アフタヌーン 第176回 葉真中顕

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     ビジネスなのだから売れるのは大事なことだ。消費されて何が悪いのか。本とは利益の小さな商品だ。ベストセラーがなければ出版社の経営は成り立たない。 俯 ( ふ ) 瞰 ( かん ) 的 ( てき ) に見れば、牧島晴佳のよ…
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  • ロング・アフタヌーン 第175回 葉真中顕

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     どうしても比べてしまう。彼女と自分を。彼女が元夫と成し遂げた仕事と、自分の仕事を。 風宮華子のシリーズ最新刊『それでも、凜として』が刊行されたのは、『銀の船にきみを乗せて』とほとんど同じタイミングだった。 売上げだけな…
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  • ロング・アフタヌーン 第174回 葉真中顕

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     時間を 遡 ( さかのぼ ) って彼女のブログを読むと、気になる記述がいくつもある。たとえば二〇一四年、梨帆がマコトと結婚した直後に〈落ち込むことがありました〉とか。その後も〈あきらめるべきことに執着してしまう自分が嫌…
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  • ロング・アフタヌーン 第173回 葉真中顕

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     作家のプライベートはいちいち報じられたりしない。同じ出版業界でも、一般向けと児童向けは大陸が違うようなもので、内輪の 噂 ( うわさ ) 話もほとんど伝わってこない。だから梨帆も多くの読者と同じように、この記事で牧島晴…
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  • ロング・アフタヌーン 第172回 葉真中顕

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     〈はるかな日々〉のトップページ。年明けのタイミングでの投稿はなく、数時間前に投稿された一二月三一日付けの記事があった。  〈今年も一年ありがとうございました〉というタイトルで、コロナ禍に見舞われた一年を憂いながらも、読…
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  • ロング・アフタヌーン 第171回 葉真中顕

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     知るほどに興味を覚えた。マコトに「牧島さんってどんな人?」「写真はないの?」「一般向けの小説を書くつもりはあるの?」などと 訊 ( き ) いたこともある。 マコトは牧島晴佳本人に「妻がファンなんです」と伝え許可を取っ…
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  • ロング・アフタヌーン 第170回 葉真中顕

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     梨帆にとってこれは意外なことではなかった。彼女の書く小説は読む者の心の大事な部分に残り続ける。一度でも世に出れば必ず「見つかる」し、世代を超えて長い時間読まれ続ける。そういう「よさ」がある。それは『夜と月の王国』を最初…
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  • ロング・アフタヌーン 第169回 葉真中顕

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     滅びゆく王国で生き別れになった猫の兄妹がそれぞれを探して旅する冒険活劇。大人向けの小説の半分くらいの長さで、あっという間に読めてしまった。けれど、深い。主人公の猫たちや、それを取り巻く環境は紛れもなく現実のメタファーだ…
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  • ロング・アフタヌーン 第168回 葉真中顕

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     たった一人で、こんな 冴 ( さ ) えない新年を迎えることはなかったはずだ。風宮華子の担当は別の誰かに引き継いだだろう。『凜として』は世に出なかったかもしれない。少なくとも梨帆が関わることはなかった。風宮華子を壊して…
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  • ロング・アフタヌーン 第167回 葉真中顕

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     梨帆は立ち上がり、洗面所に向かう。  眠っていたのは数十分くらいのはずだけれど、お酒を飲んでいたからだろうか、口の中が少し粘ついていた。洗口液を使って口をゆすぐ。口の中にピリピリした 痺 ( しび ) れを感じた。口内…
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  • ロング・アフタヌーン 第166回 葉真中顕

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     そんな言葉を聞けば聞くほど、なかなか子をつくろうとしないことを責められ、せかされているような気分になった。そして嫌になった。 ある政治家が女性を「産む機械」とたとえて大問題になったのは、梨帆が大学生のときだった。あのと…
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  • ロング・アフタヌーン 第165回 葉真中顕

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     そのとおりだ。約束も契約もしていないけれど、いつか子供を持とうと話をしていた。子供が生まれたら家を買おう、スイミングを習わせよう、最近話題のモンテッソーリの教室に通わせるのもいいかもしれない、そんな話を確かにしていた。…
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  • ロング・アフタヌーン 第164回 葉真中顕

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     マコトは五歳年上。出版社に勤務する編集者だ。だから一応同業者と言える。けれど彼が勤める 銀杏舎 ( ぎんなんしゃ ) は児童書の専門出版社で仕事上の接点はほとんどない。  出会いのきっかけは学生時代の友人に誘われた食事…
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