• 夢幻 第313回 上田秀人

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     織田信長は、息子信忠の肩に両手を置いた。  「そなたに織田の家督を譲ろうと思う」  「なっ、なにを」  言われた信忠が驚愕の声をあげた。  「このたびの武田との合戦、そして岩村城攻めと、そなたは跡継ぎにふさわしいだけの…
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  • 夢幻 第312回 上田秀人

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     「ただ見るのではない。俯瞰じゃ。見るだけでは、兵と同じ目の高さでしか見えぬ。鳥のように高いところから、敵も味方も見下ろすのよ」  「人の目ではそんなに上からは見えませぬ」  父織田信長の言葉に、できるはずがないと、信忠…
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  • 夢幻 第311回 上田秀人

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     食い下がるような息子の姿にも、織田信長は表情を崩すことなく、無言で先を促した。  「父上さまもかの今川治部大輔さまを討たれた桶狭間のときには、先陣を切られたと伺っておりまする」  信忠が続けた。  「将が後ろでわめいて…
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  • 夢幻 第310回 上田秀人

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     叔母にあたる秋山つやを、辱めて殺した後、織田信長は嫡男信忠を呼び出した。  「そなたを叱らねばならぬ」  二人きりになったところで、信長が信忠を見つめた。  「なにか、お気に障ることでもいたしましたでしょうか。ならばお…
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  • 夢幻 第309回 上田秀人

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     十一月十四日、越前一向一揆への勝利の凱旋を朝廷に報告し、石山本願寺への圧迫を一層強めるために京へ入っていた信長が、岩村城攻めの援軍の準備をするため岐阜へ戻った。  「岩村城と武田が手を組み、我が方へ夜襲をかけて参りまし…
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  • 夢幻 第308回 上田秀人

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     越前での勝利は、岩村城攻めで二カ月という長期の滞陣を余儀なくされている織田軍の士気を高めた。  「さすがは父上である」  織田信忠も、寝て起きて、飯を食っての毎日に倦(う)んでいた気分が高揚した。  「武田大膳大夫どの…
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  • 夢幻 第307回 上田秀人

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     長篠の合戦を終えた織田信忠は、武田に寝返った岩村城を攻めるべく、準備に入った。  「岩村城にはどのていどの兵がおる」  初めて総大将を任された信忠は気負っていた。  「兵三千、将三十ほどかと」  信忠に付けられた佐久間…
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  • 夢幻 第306回 上田秀人

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     織田信忠を残して東美濃から岐阜へと戻った織田信長は、武田家が身動きできない間に、越前一向一揆を攻めた。  信長が年数をかけて落とした朝倉の領地越前を、石山本願寺は加賀の一向一揆を使うことで、奪った。  武田との戦いがあ…
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  • 夢幻 第305回 上田秀人

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     岩村城は信濃との国境に近い東美濃にある堅固な山城である。東美濃に根を張る国人領主遠山七頭の惣領家岩村遠山家の居城であった。  東美濃を領していた遠山家は、武田信玄の支配を受けていた。その遠山家を織田信長は攻めるのではな…
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  • 夢幻 第304回 上田秀人

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     武田は二万五千ほどの兵を動員できた。しかし今、その半分近くを、織田と徳川の連合軍が、長篠の地に沈めた。  「一万では、とても本国甲斐以外は維持できぬ」  織田信長は、当分の間、武田家が外征できなくなったと確信していた。…
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  • 夢幻 第303回 上田秀人

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     長篠城を巡る攻防戦は、織田と徳川連合軍が野戦に持ちこんだ結果、勝利となった。本来は武田相手に野戦を挑むなど、無謀もいいところであったが、馬防柵と鉄炮を用いた織田信長は、武田の勢いを殺すことに成功し、戦場を支配できた。…
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  • 夢幻 第302回 上田秀人

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     武田の軍勢が動き出すころには、織田と徳川の連合軍の用意は整っていた。  「者ども、目を見開いてとくと見よ。これからの戦いをの」  織田信長が右手をゆっくりと上げ、一気に振りおろした。  「…………」  信長のすぐ後ろで…
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  • 夢幻 第301回 上田秀人

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     五月二十日、織田信長は、徳川家康の重臣酒井忠次(ただつぐ)を呼んだ。  「ここは徳川家の所領じゃ。織田が先鞭を着けるのはいささかまずかろう」  「お気遣いをいただき、かたじけのうございまする」  信長の言葉に酒井忠次が…
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  • 夢幻 第300回 上田秀人

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     天正三年五月十二日、織田信長は岐阜を発した。  「ご助力、かたじけなし」  「我らの仲ぞ、当たり前じゃ」  浜松城から出てきた徳川家康と合流した信長が手を振った。  「このたびは、よしなにお願いいたしまする。義(あ)兄…
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  • 夢幻 第299回 上田秀人

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     天正三年(一五七五)四月二十一日に武田勝頼は、長篠城を取り囲んだ。長篠城に籠もる奥平信昌の兵は五百ほど、一万五千の武田軍に囲まれては、何一つすることもできなかった。  だが、武田勝頼も長篠城を力攻めにはしなかった。寒(…
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  • 夢幻 第298回 上田秀人

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     織田信長が、信忠に質問を続けた。  「武田を滅ぼしたあと、織田はどう動くと思う」  「東の脅威がなくなるわけではございませぬが、かなり軽減されましょう。となると、今度は石山本願寺」  「そうだ」  信忠の答えを信長が認…
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  • 夢幻 第297回 上田秀人

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     織田信忠が、父信長を見上げた。  「では、徳川家が動員できるのは……」  「もともと一万五千に足りぬ徳川だ。三河の安定にあるていどを残すにしても、八千から一万は出すだろう」  「少ない……」  武田勝頼の率いる遠征軍に…
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  • 夢幻 第296回 上田秀人

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     織田信長と信忠、親と子が武田勝頼の長篠出兵にどう対応するかを話し合った。  「武田が動員できるすべてだというならば、我らの勝ちは決まったも同然」  信忠が武田軍の少なさに勝利を確信した。  「戦は数だけで決まるものでは…
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  • 夢幻 第295回 上田秀人

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     織田信長は、武田勝頼が出陣してきたとの報に身を乗り出した。  「どれほどの数だ」  信長はなによりも、武田勝頼の兵力を気にした。  「一万五千ほどかと」  戦場に派遣される物見には、正確に数を把握する能力が求められる。…
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  • 夢幻 第294回 上田秀人

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     畿内だけでなく、美濃、尾張の兵まで呼び寄せたことで、織田軍はかつてない十万という大軍となった。  「とても敵わぬ」  高屋城の三好康長は降伏し、織田信長に臣従した。  「次は石山本願寺じゃ」  信長は、河内国に紀州の畠…
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