• 夢幻 第202回 上田秀人

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     織田信長は、二度目の謀叛を企んだ弟信行を、だまし討ちに近い形で誅殺(ちゅうさつ)した。  「過去は問わぬ。余に仕えるならば、許す。それが嫌ならば、尾張から去れ」  信長は、信行に与(くみ)した者たちを咎(とが)めなかっ…
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  • 夢幻 第201回 上田秀人

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     織田信長は夜具のなかに隠し持っていた太刀(たち)を握り、仁王立ちになった。  「せめて一太刀で願いたい」  織田信行が首を差し伸べた。  「…………」  太刀を握る信長の手が白くなるほど握りしめられた。  「もう遅いか…
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  • 夢幻 第200回 上田秀人

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     座敷で寝ていた織田信長が、襖の開くのを見て、起きあがろうとした。  「兄者、そのままで」  弟の織田信行が制した。  「勘十郎、その気遣いができながら、どうして愚かなまねを繰り返す」  「やはり、偽りでございましたか」…
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  • 夢幻 第199回 上田秀人

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     清須城は、尾張、越前(えちぜん)、遠江(とおとうみ)の三国を支配した守護斯波(しば)義重(よししげ)によって築城された。斯波氏の衰退によって、尾張下四郡守護代の織田大和守家のものとなったが、織田信長の策略で陥落した。…
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  • 夢幻 第198回 上田秀人

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     永禄元年冬、信長の病はかなり重篤だという噂が尾張に流れた。  「見舞いに行かれませ」  「危ないだろう」  織田武蔵守(むさしのかみ)信行の居城では、柴田勝家と林秀貞との議論が何度も交わされていた。  「…………」  …
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  • 夢幻 第197回 上田秀人

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     永禄元年(一五五八)、織田信長は奇妙丸に続く、次男、三男を得ていた。  奇妙丸と同じく吉乃が生んだ次男を茶筅丸(ちゃせんまる)、北伊勢の豪族坂(さか)氏の娘との間にできた三男を三七(さんしち)と名付けたが、清須城へは入…
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  • 夢幻 第196回 上田秀人

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     奇妙丸が織田家の世継ぎとしての地固めをしたことが、織田信行を担いで信長を追い落とそうとした連中の危機感を煽(あお)った。  先年、当主である信長に逆らって負け、今後は二心を抱かず、忠誠を誓いますと約束したことなど忘れは…
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  • 夢幻 第195回 上田秀人

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     織田家に跡継ぎとなる男子が生まれた。この噂はあっという間に広まった。  「これでお家も安泰じゃ」  「めでたい、めでたい」  喜ぶ者もいたが、そうではない者のほうが多かった。  「面倒な」  「正統な跡継ぎではないとし…
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  • 夢幻 第194回 上田秀人

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     戦いに負けて末森城へ逃げこんだ弟織田信行を信長は許した。  「助けてやってたもれ」  信長と信行の生母土田御前の願いがあったからである。  「次はない」  しっかりと信長は弟に釘を刺した。  そこへ吉報が届けられた。…
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  • 夢幻 第193回 上田秀人

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     男というものは、閨(ねや)を共にした女が子を孕(はら)んだことを喜ぶ。  それが戦国武将となれば、跡継ぎができたかと一層歓喜する。  なれど、織田上総介(かずさのすけ)信長の場合は、素直に喜べなかった。正室鷺山殿が婚姻…
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  • 夢幻 第192回 上田秀人

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     織田信長は、天文三年(一五三四)、尾張(おわり)下四郡を支配する守護代織田大和守(やまとのかみ)家の奉行織田弾正忠信秀(だんじょうのちゅうのぶひで)の三男として生まれた。  正室腹であったことで、庶兄二人を差し置いて嫡…
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  • 夢幻 第191回 上田秀人

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    織田信長編 第二章 <二>  夢は儚い。  かなうことなく潰(つい)え、思わぬ形でかなう。  運命に翻弄された夢こそ現実であった。  「騒々しい。なにごとぞ」  遅くまで続いた茶会を終え、疲れ果てて眠っていた織田前右大将…
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  • 夢幻 第190回 上田秀人

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     「吾が夢は潰(つい)えておらぬと」  本多正信の一言が、徳川家康の表情を変えた。  「はい。織田は上様があってこそ。その上様が亡くなられたとあれば、かならずや織田は割れまする」  「そういえば、中将どのも亡くなられたの…
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  • 夢幻 第189回 上田秀人

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     安土城を出た徳川家康は、上京する織田信長より、一足早く上方(かみがた)へと入った。  「見事に焼け落ちておるな」  威容を誇った石山本願寺の焼け跡を見た家康は、驚きを隠せなかった。  織田信長をもっとも苦しめたのは、武…
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  • 夢幻 第188回 上田秀人

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     徳川家康は、号泣しながら信康の首を捧げる服部半蔵と天方通興をねぎらった。  「ご苦労であった」  「お見事なる最期でございました」  「そうか。上様にご実検いただかねばならぬ。首にしっかりと化粧(けわい)いたせ」  家…
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  • 夢幻 第187回 上田秀人

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     嫡男を捨てる覚悟をした徳川家康は、もう一つ決断した。  「瀬名を二俣城へ移せ」  家康は正室を岡崎近くの館から連れ出させた。  「三郎とともに、二俣で過ごすがよい」  ただ一人、瀬名がすがれる息子信康との余生を家康がほ…
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  • 夢幻 第186回 上田秀人

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     天下人は唯一無二である。  共に並び立つ者などは不要、天下すべてが頭(こうべ)を垂れ、その機嫌を伺わなければならない。  もし、一人でも織田信長と同じ座敷でくつろげる者がいるならば、それは天下を取ったとはいえなかった。…
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  • 夢幻 第185回 上田秀人

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     内通の疑いがかかっている嫡男三郎信康を切腹させるといっても、そう簡単な話ではなかった。  すでに三河は実質信康の支配下にあり、家臣団も信康を主君として仰いでいる。  下手をすれば、三河をあげての叛乱となりかねない。そう…
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  • 夢幻 第184回 上田秀人

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     領地を奪われる恐怖に目の前が暗くなった徳川家康は、それでも冷静な思考をなくしてはいなかった。  「織田には勝てぬ」  家康が首を横に振った。  織田と徳川の国力差はすでに、追いつくだのどうだのという話ではなくなっていた…
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  • 夢幻 第183回 上田秀人

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     徳川家康は目を閉じて、脳裏に苦い思い出を浮かべていた。  「どれも腹立たしい」  家康が首を横に振った。  「人質にされていたときの扱い、胤(たね)だけを欲しがる正室、手柄を立てられないように使い潰される部将だった今川…
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