• 夢幻 第172回 上田秀人

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     本多正信の懸念は当たった。  「どういうことか」  天正七年七月、織田信長から徳川家康へ詰問の使者が来た。  「…………」  家康は最後に織田信長と会ったときのことを思い出した。  長篠合戦を勝利で終えて、その祝いに家…
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  • 夢幻 第171回 上田秀人

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     本多弥八郎正信が続けた。  「あのお方はいけませぬ。人を駒としか見ておられませぬ。使えるか、使えないか、そのどちらになるかだけで判断なさる。長くお側にあったとか、何代もお仕えした譜代だとかは、まったく関係ない」  「た…
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  • 夢幻 第170回 上田秀人

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     徳川家康は本多正信の言葉にあきれた。  「右府どのは、三郎の舅どのであり、冠親ぞ。娘をくれるほどに期待してくださっておられる。誰が三郎を疑おうとも、右府どのが、疑われるはずなどなかろう」  「甘(あも)うございますな、…
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  • 夢幻 第169回 上田秀人

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     嫡男信康が武田と通じている。本多正信から報された話を、徳川家康は相手にしなかった。  「三郎はまだ若いが、滅びゆく武田と組むほど愚かではないわ」  家康は噂を一蹴した。  「わたくしもそう考えておりまするが……他のお方…
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  • 夢幻 第168回 上田秀人

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     徳川には三河乱破(らっぱ)、北条には風魔(ふうま)、上杉には軒猿(のきざる)と、戦国大名は忍(しのび)の類いを抱えている。  武田家も甲州忍、歩き巫女(みこ)という忍を持っていた。  徳川家と直接対峙している岡部元信は…
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  • 夢幻 第167回 上田秀人

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     岡部元信は桶狭間の合戦のとき、鳴海城にあって一人気炎を吐き、攻め寄せる織田軍を撥ねのけた今川方の猛将である。  「主君の首を返すならば、城を明け渡す」  今川義元の首と交換に鳴海城を明け渡したのち、駿河へ帰り今川氏真を…
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  • 夢幻 第166回 上田秀人

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     織田信長の勢いは止まらない。比叡山、浅井、朝倉、武田と排除を重ね、今や誰の目にも天下人として映るようになった。  当然、反発も強まる。  とくに織田信長と長く争ってきた石山本願寺、丹波国人衆、毛利家、瀬戸内水軍らが手を…
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  • 夢幻 第165回 上田秀人

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     長篠合戦を終えて三年後の天正六年(一五七八)、武田と並んで織田の脅威となっていた上杉謙信が急死した。  厠で忍者に尻を槍で突かれたとか、酒の飲み過ぎによる中風だとか、噂はいくつもあったが、まちがいなく軍神と讃えられた上…
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  • 夢幻 第164回 上田秀人

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     正室の瀬名と織田信長の娘おごとく姫との仲が悪くなっていることを、徳川家康は知っていた。  嫡男信康に譲ったとはいえ、当主である家康のもとに岡崎城での出来事は報されるからであった。  「そうか」  家康はあっさりと聞き流…
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  • 夢幻 第163回 上田秀人

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     「雑賀(さいか)衆、織田家に降伏」  「毛利の水軍、大坂湾にて織田方の水軍によって撃滅」  浜松にいる家康のもとに、次々と織田家の勝利の報が入ってくる。  「めでたきことでござる」  家康の嫡男信康が無邪気に喜んだ。…
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  • 夢幻 第162回 上田秀人

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     代を継ぐ子はめでたい。ましてや大名と大名の家を繋ぐ子となれば、その意味は大きい。  桶狭間で今川義元が討ち死にしてしまったため、徳川家康と瀬名の間に生まれた信康の意味は大きく変わったが、織田信長の娘おごとく姫と婚姻をな…
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  • 夢幻 第161回 上田秀人

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     長篠城の攻防に端を発した織田、徳川対武田の決戦は、信じられないくらいあっさりと終わった。  何度も挑んでは、手痛い敗北を喫してきた徳川家康にとって、それは夢のような出来事であった。  「放てっ」  攻め寄せてくる数万の…
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  • 夢幻 第160回 上田秀人

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     天下の情勢は決まった。  戦国最強の名前を恣(ほしいまま)にし、京へ上って天下に大号令を発する直前までいっていた武田家が、長篠の合戦に敗れた後、坂道を転がるようにして衰退した。  その反対に織田信長はまさに旭日の勢いで…
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  • 夢幻 第159回 上田秀人

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     武田信玄の後を受けた諏訪改め武田四郎勝頼は、奥平家の再寝返りに激怒した。  「父が生きておれば、徳川づれに攻められても、武田がきっと来ると耐えたであろうに……吾を頼れぬと侮るか」  偉大な父を持った息子としての矜持が、…
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  • 夢幻 第158回 上田秀人

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     遠江の北に所領を持つ天野(あまの)安芸守(あきのかみ)景貫(かげつら)ら、武田に寝返った国人を徳川家康は攻めて、駆逐した。  「奥平(おくだいら)家を敵に回すのは避けたい」  家康は、奥三河と呼ばれる美濃に近い作手(つ…
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  • 夢幻 第157回 上田秀人

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     嫡男信康の初陣をすませた徳川家康だったが、腰を落ち着かせる暇はなかった。  「武田が信玄を失った今こそ、好機」  天下の驍将(ぎょうしょう)武田信玄が死んだ。その跡を猛将と言われる四男の諏訪(すわ)勝頼(かつより)が引…
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  • 夢幻 第156回 上田秀人

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     大名の跡継ぎにはふさわしいだけの教育がなされる。読み書きはもちろん、敵味方の戦力を比較するための算術、弓や槍などの運用法まで多岐にわたる。  これらをしっかりと理解しなければ、大名としてやっていけない。  「今川の血筋…
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  • 夢幻 第155回 上田秀人

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     山城である田峯城から、徳川家康の軍勢が退いていくのを菅沼定忠が見ていた。  「殿(しんがり)は誰じゃ」  「葵の紋と竜胆(りんどう)の旗印が見えまする」  「竜胆……石川か。となれば、残っている葵は、せがれよな」  物…
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  • 夢幻 第154回 上田秀人

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     戦場では生き残った者が勝つ。どれほどの手柄を立てようとも討ち死にしてしまえば、それまでなのだ。  徳川家康が人質にならなければならなくなったのは、祖父清康が家臣に斬り殺されたためであった。  近年まれに見る出来物(でき…
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  • 夢幻 第153回 上田秀人

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     松平三郎信康は、父徳川家康の怒る姿を初めて目の当たりにしていた。  「武士は名を惜しむものだと申したいのか」  途中で黙った信康の言いたかったことを、家康が代弁した。  「そうあるべしと母上が教えてくださいましてござい…
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