• 夢幻 第34回 上田秀人

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     松平元康と名乗りを変えたが、とりまく環境はなんの変化もなかった。  初陣以来、元康は戦場へ出されることもなく、駿府に縛り付けられたままであった。  「先祖の祀りをおこないたく、岡崎への帰参をお許しくださいますよう」  …
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  • 夢幻 第33回 上田秀人

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     松平元信の正室瀬名は、今川義元の妹の娘、姪にあたる。つまり竹千代と名付けられた元信の嫡男は、今川義元の又甥になった。  「今川の血を引く松平の跡取りの誕生である」  機嫌の良い今川義元は、竹千代に守り刀を与えた。  「…
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  • 夢幻 第32回 上田秀人

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     夫婦の間に漂う冷たい気配を無視して、今川義元が話を進めた。  「で、この童の名をどうするつもりじゃ」  今川義元が松平元信に問うた。  「当家代々の名である竹千代といたしたく存じまする」  元信が頭を下げた。  三河の…
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  • 夢幻 第31回 上田秀人

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     婚姻をなして二年、松平蔵人佐(くろうどのすけ)元信と今川の一族関口刑部少輔親永(ぎょうぶしょうゆうちかなが)の娘瀬名との間に長男が生まれた。  「これで三河も安泰じゃ。よくぞ男(おのこ)を産んだ。瀬名、褒めてつかわす」…
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  • 夢幻 第30回 上田秀人

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     一人前の武将となった松平元信だったが、以降の出陣はほとんどなかった。  「殿の代わりに武名をあげてみせよ」  しかし、松平家の家臣たちは元信を人質に取られた形で、こき使われた。  「すまぬ」  家臣たちが今川の先手とな…
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  • 夢幻 第29回 上田秀人

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     今川家は名門である。清和源氏の分流河内源氏を祖とする足利将軍家の連枝吉良(きら)家の分家として代々駿河守護に任じられてきた。  「御所が絶えたならば吉良が継ぎ、吉良が絶えれば今川が継ぐ」  こう言われるだけに、その矜持…
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  • 夢幻 第28回 上田秀人

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     不本意な初陣だったが、無事に駿府へ戻った元信に今川義元は褒賞を与えた。  「見事である。さすがは吾が娘婿じゃ」  「過分なお褒めにあずかり、恐縮」  元信は感情を表に出さないよう、返答を短くして頭を下げた。  松平の当…
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  • 夢幻 第27回 上田秀人

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     逸る気持ちを抑えられる者こそ、一流の武将たり得る。  戦場で頭に血がのぼって、状況を考えず突っこむような者は、どれだけ武勇に優れていようとも長生きはできない。衆寡敵せずは真理であり、退きどきを誤って敵中に孤立すれば、漢…
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  • 夢幻 第26回 上田秀人

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     初陣は武将の義務であり、誉(ほま)れでもある。  そして生涯ついて回る評価の場でもあった。  「武運なき武将」  初陣で敗退すると戦下手と言われ、  「見事なる武者振り」  勝てば名将の器であると讃えられる。  武将に…
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  • 夢幻 第25回 上田秀人

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     今川と松平が絆を深めていた間も、織田による三河侵略は着々と進んでいた。  すでに三河を吾がものにしようとしていた猛将織田信秀は亡くなっていたが、跡を継いだ上総介信長も乱世の雄としてふさわしい野望を持って、美濃と三河へ手…
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  • 夢幻 第24回 上田秀人

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     松平元信は関口刑部少輔親永の娘瀬名の顔をようやくはっきりと見られた。  「次郎三郎元信でござる」  「瀬名でございまする」  今夜で夫婦になる男女が最初に交わした会話は互いの名乗りであった。  「これからよしなに願う」…
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  • 夢幻 第23回 上田秀人

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     松平元信と今川義元の姪関口瀬名との婚姻は正月十五日の早朝から始められた。  今川義元の養女となった瀬名は、その身分に合わせて駿府館から行列を仕立てて、元信の屋敷へと進めた。  「婚姻が終わるまでは、治部大輔さまの姫でご…
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  • 夢幻 第22回 上田秀人

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     名門の跡取りは、嫁取り前に閨(ねや)ごとを知るのが慣習であった。  これはいきなりの閨ごとで勝手がわからず、失敗しては後々に障るからである。  名門同士の婚礼には、大きな問題がついて回った。生まれた子供が当主の胤(たね…
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  • 夢幻 第21回 上田秀人

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     金で支配される。  戦国武将にとって大きな屈辱であるが、生き残るためには致しかたない。  どれほど今川家のやり方に腹が立とうとも、松平家はそれを断ることはできなかった。  「ならば、好きにすれば良い」  今川義元に手を…
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  • 夢幻 第20回 上田秀人

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     今川の助力で織田の攻勢をしのぎ、囚えられていた元信も帰還できた。  松平家は今川家に頭が上がらなかった。  先代松平広忠が死に、元信が当主となったにもかかわらず、その元信を人質として差し出さなければならない。それほど松…
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  • 夢幻 第19回 上田秀人

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     婚約をしたからといって、今川義元の養女である。実子に比べればまだましとはいえ、簡単に嫁として迎えるわけにはいかなかった。  御殿の新築、新しい女中、小者などの手配、椀や皿など生活用具の用意といろいろな雑用をすませ、完璧…
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  • 夢幻 第18回 上田秀人

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     「いつか上総介どのとまみえるとき、胸を張って会うのだ」  松平竹千代の覚悟は、今川家の家臣たちにとって不遜に映った。  戦国での人質は弱者から強者へ手向かいしませんとの誓い、あるいは助力してもらうための担保として差し出…
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  • 夢幻 第17回 上田秀人

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     人は触れあってこそ、親近感を覚える。  六歳になるやならずで尾張へ連れ去られ、二年後には駿府へと移される。  竹千代は家族というものの触れあいを知らなかった。いや、与えられなかった。  もっとも武将は戦うのが本分で、子…
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  • 夢幻 第16回 上田秀人

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     天文十八年(一五四九)十一月八日、人質交換は無事に終わった。どちらも罠を警戒して、当主や一門の出席はなく、あっさりと竹千代を連れた一行は笠寺観音の大門前を通る東海道を東へと去っていった。  二年振りの帰郷だったが、竹千…
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  • 夢幻 第15回 上田秀人

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     松平広忠の死から八ヶ月が過ぎた秋、  「嘆く松平家の者どもの苦衷(くちゅう)を払拭(ふっしょく)すべし」  今川義元は太原雪斎(たいげんせっさい)に二万の大軍を預け、織田信秀が三河攻略の楔(くさび)として打ち込んだ安祥…
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