• 夢幻 第354回 上田秀人

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     天皇が武を捨てたことで、地方は荒れた。 盗賊を働いても、略奪を働いても、鎮圧に来る者がいないのだ。 「これはたまらぬ」 やがて悪党は、京で安閑とした生活を送るかつての武力の担い手であった公家の荘園も襲い始めた。年貢が奪…
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  • 夢幻 第353回 上田秀人

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     かつて源頼朝は、天下人となりながら京から離れ、朝廷に組み込まれることを嫌った。 足利尊氏は、逆に京を本拠とし、朝廷とともに衰退した。 「前右府が狙いは、鎌倉、室町の失敗から学んだもの。それは朝廷と対等な格、そして天下を…
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  • 夢幻 第352回 上田秀人

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     近衛前久は、震えていた。 「まさか、譲位を先延ばしにさせるなど……」 正親町天皇から前右大臣織田信長に近い誠仁親王へ皇位を譲るという話が、一年先延ばしにされた。 「あれほど前右府が待ち望んだものであったというに」 譲位…
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  • 夢幻 第351回 上田秀人

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     戦国の終わりは見えてきた。 京にある朝廷が、次の天下人として、誰を選ぶかの結末もほぼ決まっている。 畿内の者は、間近で織田の実力を見ていることもあり、石山本願寺が降って以来、おとなしく信長の意向を窺っていた。 譲位を見…
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  • 夢幻 第350回 上田秀人

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     織田信忠を馬揃えの中央に配し、次の天下人だと見せつけても、なかなか朝廷は動かなかった。 「譲位をいたしたい」 「お心のままに」 そんな状況で正親町天皇が望んだ譲位を信長は受け入れた。 「金ですむならばよい」 譲位は当然…
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  • 夢幻 第349回 上田秀人

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     近衛前久は当初、織田信長を朝廷の番犬にと考えていた。織田は平氏ゆえに幕府は開けないが、名目くらいいくらでも作れる。 「京都守護職にでもしてやれば……」 武士にとって朝廷の官位ほどありがたいものはない。 なにせ朝廷は神の…
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  • 夢幻 第348回 上田秀人

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     織田信長は、左大臣を受けることで発生する負担を理解していた。 「いつでも取り上げられるものでごまかそうとする。やはり朝廷は信用できぬ」 正親町天皇が何度も譲位をしたいと口にしていることを、信長は知っていた。 その費用を…
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  • 夢幻 第347回 上田秀人

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     五百騎をこえる織田の武将が堂々たる馬揃えをなすなか、織田信忠は譜代衆の後、五番目に尾張、美濃の衆や織田家一門衆を率いて、行列の中核をなした。織田信長が小者二十七人だけを供に連れて行列後方を進んだのとは違った。 馬揃えは…
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  • 夢幻 第346回 上田秀人

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     織田信長が続けた。 「安土から半日で京へ着く。どこの大名が京を襲おうとも、そなたが防いでいる間に余が、一日かからずして左近衛中将が駆けつける」 「心強く思っておりまする」 当分、京の守護職を続けさせると言った信長に、明…
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  • 夢幻 第345回 上田秀人

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     織田信長は明智光秀に、京での馬揃えを準備するように命じた。 「馬揃えでございまするか。山科さまからは、左義長だと伺っておりまするが」 明智光秀が怪訝な顔をした。 「なにを寝ぼけたことを申しておる。そもそもそなたに京を預…
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  • 夢幻 第344回 上田秀人

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     織田信長は、天正九年(一五八一)一月十四日、居城安土城の城下町で、左義長をおこなった。 左義長は年始に迎えた歳神を天に帰すための行事で、注連縄や門松などを焚き、その火で餅などを焼いて食することで、正月の終わりを告げ一年…
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  • 夢幻 第343回 上田秀人

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     気の短い織田信長は、神仏に頼るという曖昧なものを信用していなかった。 「川で溺れている子供を神仏に祈るだけで救えるか。それより棒の一つでも差し伸べるほうが早い」 「…………」 「まあいい。貴殿と神仏の話をする意味はない…
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  • 夢幻 第342回 上田秀人

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     朝廷とカトリックは、根本から違っていた。 天皇は八(や)百(お)万(よろず)の神の主神である天(あま)照(てらす)大神(おおみかみ)の子孫であり、現人神(あらひとがみ)であるという朝廷に対し、カトリックは、創世主であり…
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  • 夢幻 第341回 上田秀人

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     宣教師から地球儀を贈られた織田信長は、世界の広さを理解していた。 「南蛮から我が邦まで来るためには一年近い日がかかるという。となれば、大友が織田によって攻められ、南蛮に援軍を求めたとして、船の往復だけで二年要る。その間…
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  • 夢幻 第340回 上田秀人

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     震える唇で、近衛前久が織田信長に問いかけた。 「そなたならば、南蛮相手といえども勝てよう。あの武田を破った織田ならば」 「南蛮単体なら、なんとかできよう」 「……南蛮だけならばとはどういう意味じゃ」 近衛前久が信長の言…
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  • 夢幻 第339回 上田秀人

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     苦そうな顔の近衛前久に、織田信長は質問を続けた。 「どう思った」 「……なんと奇怪なものかと思ったわ。あんな船底が尖った形で、よくも浮いていられるものよ。麿ならば、いくら金を積まれても乗りとうはない」 近衛前久が嫌そう…
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  • 夢幻 第338回 上田秀人

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     織田信長は近衛前久を前にしながら小さく嗤った。 「待ちやれ、前右府(さきのうふ)よ。主上のお望みを拒んでおきながら、欲しいともなんとも申しておらぬ南蛮人にくれてやると申すか」 信長との仲を修復しようとしている近衛前久で…
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  • 夢幻 第337回 上田秀人

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     石山本願寺を大坂から排したことで、織田家は摂津、河内、和泉を支配した。 また明智光秀の活躍で丹波と丹後を、羽柴秀吉の奔走で播磨、但馬が手に入り、備前の宇喜多が配下に入った。 「これで畿内は完全に支配した」 織田信長が宣…
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  • 夢幻 第336回 上田秀人

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     佐久間信盛を筆頭とする織田家の重臣、家臣たちが相次いで放逐された。 その放逐された者たちの共通点に気づいた者がいた。 「佐久間どのが五十歳余、林どのが七十歳近く、安藤どのに至っては齢(よわい)八十に届かんとしている。丹…
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  • 夢幻 第335回 上田秀人

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     織田家にとって功績ある佐久間右衛門尉(うえもんのじょう)信盛が、弊履(へいり)のごとく捨てられた。 「佐久間がなぜ」 「右衛門尉さまが……」 柴田勝家、丹羽長秀らの譜代、羽柴秀吉、明智光秀らの新参、どちらもが絶句した。…
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