• 任侠シネマ 第316回 今野敏

    会員限定
     「梅中だってばかじゃないから、ケチがついた取引には二の足を踏むだろう」  「おそらく」  阿岐本は思案顔で言った。「『千住興業』内でも動きがあるぜ」  永神が眉をひそめる。  「動きというのは……?」  「じきに増原社…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第315回 今野敏

    会員限定
    22  翌日の午後、永神がやってきた。オヤジとはアポを取っているという。日村が組長室に案内すると、阿岐本に同席しろと言われた。  阿岐本と永神は、ソファで向かい合って座った。今日は、ソファに座れと言われ、日村はそのとおり…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第314回 今野敏

    会員限定
     しばらくして、車を駐車場に入れていた稔が戻ってきた。  日村は言った。  「ごくろうだったな。今日はもういいぞ」  「はい」  稔は出入り口で頭を下げた。「では、これで失礼します」  稔が事務所を出て行くと、真吉が興味…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第313回 今野敏

    会員限定
     彼は、昔の自分がひょっこり顔を出したように感じているのではないか。おそらく不愉快なはずだ。  自分ならそうだと、日村は思う。武井が狂犬だったというのなら、日村もそうだった。誰彼かまわず牙を剥いていた頃の自分を思い出すの…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第312回 今野敏

    会員限定
     稔が運転する車で事務所に向かった。  その後ろ姿を見ながら、日村は言った。  「狂犬だって?」  稔がこたえる。  「はい」  「まあ、度胸があるのは認めるが……」  「すっかり丸くなっていました。大人になったというこ…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第311回 今野敏

    会員限定
     「それに、二之宮の組も一枚噛んでいるということですか」  一枚噛んでいるとは言えないが、関わりはある。日村は曖昧な返事をすることにした。  「ええ、まあ、そういうことです」  「普通、そういう話を聞くと、とことん関わっ…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第310回 今野敏

    会員限定
     武井は溜め息をついた。  「こういう仕事をしていますと、いろいろなしがらみができましてね……」  「私らがこうして頭を下げているうちに、ご理解いただいたほうが、あなたのためにもなる思うんですがね……。ああ、こういう言い…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第309回 今野敏

    会員限定
     ソファに腰を下ろすと、武井が言った。  「何かお飲み物は?」  日村はこたえた。  「けっこうです」  「じゃあ、お話をうかがいましょう」  「『千住シネマ・ファンの会』への嫌がらせをやめていただきたい」  武井は苦笑…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第308回 今野敏

    会員限定
     稔と二人でカウンターのスツールに座った。五分ほど待つと、スーツ姿の男が店に入ってきた。一目見て堅気ではないことがわかる。かといって、極道でもない。その男が近づいてきて言った。  「武井だけど、俺に用があるって、おたくら…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第307回 今野敏

    会員限定
     それから日村も渋谷に着くまで口を開かなかった。車を道玄坂の有料駐車場に駐めると、二人は井(い)の頭(かしら)線の脇にある一帯に向かった。  細い路地が交差し、飲食店がぎっしりと軒を並べているあたりだ。昔は闇市があった地…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第306回 今野敏

    会員限定
     腹ごしらえをして、午後八時過ぎに事務所を出た。  ハンドルを握る稔は緊張している様子だ。日村は後部座席から声をかけた。  「武井とはいつ以来なんだ?」  「自分が暴走族やってる頃ですから、ずいぶん前ですね」  「仲間の…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第305回 今野敏

    会員限定
     事務所に着いたのが午後五時過ぎだ。  阿岐本は、組長室に向かった。住居に上がらなかったのは、日村たちが渋谷に行くと言ったからだろう。  子の大事な仕事は自分の仕事でもあると考えているのだ。日村が外で何かやるときは、たい…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第304回 今野敏

    会員限定
     「おめえ、あの社長のことを見くびってるね」  「は……?」  「再開発のことや、犬塚の社用車や高級クラブの話を持ちだしたことで、あの人はもううっすらと気づいているよ。今頃、調べはじめているだろう」  日村は驚いた。  …
    記事へ
  • 任侠シネマ 第303回 今野敏

    会員限定
     帰りの車の中で、阿岐本が言った。  「交渉事や接待を任せているんじゃ、犬塚のやりたい放題だよな……」  日村はこたえた。  「はい」  差し出がましく質問したことを、叱られるのではないかとひやひやしていた。  「そうい…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第302回 今野敏

    会員限定
     阿岐本が言った。  「悪気があって調べたわけじゃねえんです。勘弁してください」  「いえ、阿岐本さんが謝ることはありません。会社のために調べてくださったのでしょう」  それから増原社長は日村を見て言った。「犬塚は会社の…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第301回 今野敏

    会員限定
    21  日村は、引きあげる前に、どうしても訊いておきたいことがあり、叱られるのを覚悟で阿岐本に言った。  「あの、一つ自分から質問してよろしいですか?」  阿岐本が言った。  「よろしいも何も……。訊きたいことがあったら…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第300回 今野敏

    会員限定
     「ええ。彼の意見が、会社の多数派なのだと思い込んでおりました」  「犬塚さんが映画館を閉めようとなさる理由をご存じですか」  「不採算部門だからでしょう。彼なりに、会社のためを思っているのだと思います」  「彼から何か…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第299回 今野敏

    会員限定
     阿岐本はゆっくりとうなずいて言った。  「もうおわかりのはずですから、くどくどとは申しません」  増原社長もうなずいた。そして、同じ言葉を繰り返した。  「船はロマンを求めて冒険の旅に出るものなのですね」  「ファンの…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第298回 今野敏

    会員限定
     「もともと不動産業者だった祖父は、戦後の復興事業で大儲けをして、その金で映画館を建てたんです」  「ええ、そのお話はうかがっていますよ」  「映画は儲かると踏んで、先行投資のつもりで『千住シネマ』を作ったのだと思ってい…
    記事へ
  • 任侠シネマ 第297回 今野敏

    会員限定
     「私はね、これまでいろいろなものの経営を助けて参りました。その経験から申しますとですね。傾きかけている会社だの、団体だのは、何かを変えなければならないんです。でも、映画館を拝見して思いました。ああ、こりゃ何も変える必要…
    記事へ
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 16

アクセスランキング

読売新聞購読申し込み_東京2020オリンピックパラリンピックキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ