• 任侠シネマ 第32回 今野敏

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     健一が似たような鮨桶を運んできた。それが日村の前に置かれると、阿岐本が言った。  「なんだ、おめえのだけ安い鮨か?」  阿岐本に言われて、日村はこたえた。  「はい。若い衆といっしょです」  「いいか。おめえは俺と同じ…
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  • 任侠シネマ 第31回 今野敏

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    3  ドアをノックする音が聞こえた。  話の腰を折られたようなタイミングだったが、阿岐本は別に気にした様子もなく返事をした。  「何だ?」  ドアが開いて、健一が顔を出した。  「鮨が届きました」  阿岐本がうなずく。…
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  • 任侠シネマ 第30回 今野敏

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     「おい、永神。てめえも素人じゃないんだから、わかってんだろう」  「何の話だい?」  「昔から映画の世界ってのはな、ヤクザがやってるんだよ。映画会社の経営も、ロケの仕切りも、配給も興行も、全部ヤクザがやってきたんだ」…
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  • 任侠シネマ 第29回 今野敏

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     「その『千住シネマ』がどうしたんだ?」  「このご時世だから、映画館もなかなかたいへんでね……。大手の映画会社が経営していた映画館は採算が合わなくなって次々と閉めちまった。今は、かつて羽振りがよかった大手系列館の陰でひ…
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  • 任侠シネマ 第28回 今野敏

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     「それで……」  阿岐本が尋ねた。「話ってのは何だい」  オヤジは明らかに期待している。日村はそう思った。  永神が持ち込む相談事には、興味津々なのだ。これまでいろいろな話があった。  出版社、私立高校、病院、銭湯………
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  • 任侠シネマ 第27回 今野敏

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     「景気はどうだい?」  永神がこたえた。  「いいわけがねえ。政府はいざなぎ超えの好景気だなんて言ってるが、そんな実感はねえな」  「町の様子を見てもそうだな。金はいったいどこにあるんだろうな」  「大企業が溜め込んで…
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  • 任侠シネマ 第26回 今野敏

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     永神が組長室のドアを開けた。日村は永神に続いた。  「おう、兄弟。元気そうだな」  阿岐本が机の向こうで立ち上がった。  「時間を取ってもらって、すまねえな」  「まあ、座ってくれ」  阿岐本が応接セットのソファに腰を…
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  • 任侠シネマ 第25回 今野敏

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     永神は顔をしかめた。  「やりにくい世の中になったもんだ。組を締め付けても何の意味もないのにな……」  「お役所仕事なので、解散したという形式さえ整えばいいんだそうです。それが警察の実績になりますから」  「くだらねえ…
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  • 任侠シネマ 第24回 今野敏

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     永神は甘糟を一瞥し、日村に言った。  「この人、たしか北綾瀬署のマル暴だよな。取り込み中か?」  「いえ、話は終わりました」  そう言いながら、日村はしまったと思っていた。  永神と甘糟が鉢合わせするとは思っていなかっ…
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  • 任侠シネマ 第23回 今野敏

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     日村はこういう議論をすること自体むなしいと思いはじめた。甘糟も警察の暴力団対策の矛盾に気づいている。気づいていながら、取り締まるしかないのだ。それが彼らの仕事なのだから仕方がない。  「お呼び立てして、申し訳ありません…
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  • 任侠シネマ 第22回 今野敏

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     「ここにいる四人の若者を見てください。彼らは阿岐本親分がいなければ、仕事もなくもっとすさんだ生活をしていたはずです」  「わかってるよ。でもね、俺はマル暴だからね。立場上暴力団を認めるわけにはいかないんだよ」  「おた…
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  • 任侠シネマ 第21回 今野敏

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     「昨今、ハロウィンとか年末年始のカウントダウンとかで渋谷あたりがひどいことになっていますよね」  「そうらしいね」  「町にヤクザがいなくなると、ああいうことになるんです」  「いや、それはどうかなあ……。商店街の人た…
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  • 任侠シネマ 第20回 今野敏

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     「そんなことをしたら、日本はめちゃくちゃになっちゃいますよ」  「かつて大きな抗争事件があったり、物騒な時代があったからね。それで警察の偉い人は頭に来たんじゃない?」  「抗争を起こすのは、常にヤクザの一部でしかありま…
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  • 任侠シネマ 第19回 今野敏

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     「『矢七寿司』の二代目は、自分らに出前をしたら、暴力団と契約を結ぶことになるので、処罰されると思い込んでいましたよ」  「排除条例で処罰されるのは、暴力団の資金源になるとかの利益供与をした場合とか、未成年を事務所に無理…
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  • 任侠シネマ 第18回 今野敏

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     「ちょっとうかがいたいことがありましてね……」  「何だよ」  「『矢七寿司』に出前を注文したんですよ」  甘糟が怪訝そうな顔になる。  「それで……?」  「断られたんです」  「どういうこと?」  「警察が暴力団排…
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  • 任侠シネマ 第17回 今野敏

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    2  日村が事務所に戻ったのは、午後四時十分頃のことだ。その約十分後に、甘糟がやってきた。  汗をかいている。十月も半ばで、汗をかくような気候ではない。おそらく、署から駆けてきたのだろう。  「どういうこと? 立場わかっ…
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  • 任侠シネマ 第16回 今野敏

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     日村は深々と頭を下げた。ヤクザには逆風が吹く世の中だけに、こういう言葉がことさらに心に染みる。  「ありがとうございます。では、よろしくお願いします」  「ああ、任しときな」  日村は、もう一度礼をして『矢七寿司』を出…
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  • 任侠シネマ 第15回 今野敏

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     日村は言った。  「いや、ご迷惑をおかけするわけにはいきません。警察から指導があったとおっしゃるのなら、それは仕方のないことだと思います」  大将が言う。  「日村さん。こうなりゃ、こっちも意地だよ。あんたが嫌だって言…
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  • 任侠シネマ 第14回 今野敏

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     二代目が言った。  「確認しなくたって、あんたらが暴力団だってことは明らかでしょう」  「事業の契約で、相手が暴力団とわかったときに、すぐに解除できるような特約を盛り込むようにと、条例では言っていますが、これはあくまで…
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  • 任侠シネマ 第13回 今野敏

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     日村は心の中で溜め息をついた。自分たちが反社会的な存在であることは自覚している。だからといって、昨今の警察のやり方はどうかと思う。  この国に俺たちの居場所はないということなのだろうか。  二代目の話を聞いて、大将の顔…
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