任侠シネマ 第236回 今野敏 2019/09/24 05:20 会員限定 午後六時半になると、稔が言った。 「三橋さんと交代する時間です」 日村はこたえた。 「わかった。行ってくれ」 稔が事務所を出て行く。 それから、約一時間後、健一が戻ってきた。 「ただいま、戻りました」 「… 記事へ
任侠シネマ 第235回 今野敏 2019/09/23 05:20 会員限定 たしかに永神が言うとおりだ。 地元のヤクザがしっかりしていれば、半グレの特殊詐欺や暴力沙汰を黙って見過ごしはしない。だが、今、暴対法と排除条例で、ヤクザはその力を奪われている。 まあ、その点、自業自得という面もある… 記事へ
任侠シネマ 第234回 今野敏 2019/09/22 05:20 会員限定 永神が稔に尋ねた。 「武井のフルネームは何だっけ?」 「武井亮治です」 永神は稔の話を聞いて、メモも取らなかった。だが、必要なことはすべて頭に入っているはずだ。一人前のヤクザというのは、そういうものだ。 永神が… 記事へ
任侠シネマ 第233回 今野敏 2019/09/21 05:20 会員限定 組長室を出ると、永神が大きく息をついた。 「ああ、寿命が縮まったぜ」 日村は言った。 「半グレの件ですが、稔が何か知っているようです」 「稔が……?」 稔は、また電話をかけていた。手がかりを得ようと手当たり次… 記事へ
任侠シネマ 第232回 今野敏 2019/09/20 05:20 会員限定 だが、今なら阿岐本の言うことが理解できるような気がした。 阿岐本が言った。 「つまりさ、時間を見つけて人が集まる場所に足を運ぶ。それが、他人を知ることであり、社会を知ることの第一歩だと思うわけだ。そして、それが、ひ… 記事へ
任侠シネマ 第231回 今野敏 2019/09/19 05:20 会員限定 「みんな忙しいとか言って、映画館に足を運ばなくなる。行き帰りのことを考えたら、半日つぶれちまうこともあるからな」 「だろう? なかなかそんな時間は取れねえよ」 「みんなそう言うが、きっと、何とかなるんだよ」 「い… 記事へ
任侠シネマ 第230回 今野敏 2019/09/18 05:20 会員限定 「ああ。常務が土地と社屋を売却したがっているんだろう。……で、そいつは梅中仁志や『サイバーオン』って会社とつながっている。その辺に何か、からくりがありそうだ」 「だから、それを調べているんだよ。それが解決しない限り、… 記事へ
任侠シネマ 第229回 今野敏 2019/09/17 05:20 会員限定 「俺たちにとっても死活問題なんだよ」 「なんでそれを、最初から言わねえんだ。おめえは結局、俺を利用しようとしたってことになるんだぜ」 「利用だなんて、滅相もねえ。うちの内部事情なんて余計なことだと思ったんだ。アニキ… 記事へ
任侠シネマ 第228回 今野敏 2019/09/16 05:20 会員限定 「映画館を含めた『千住興業』の社屋は、優良物件だ。それに眼を付けねえ銀行はねえよ。あの土地と社屋に抵当権を付けて金を貸そうってわけだ。だから、『千住興業』と取引のある銀行としてはあの土地や社屋を売却されると困るというこ… 記事へ
任侠シネマ 第227回 今野敏 2019/09/15 05:20 会員限定 「いや、アニキ。俺はそんなつもりはなかったんだ。梅中仁志だの『サイバーオン』とかっていう会社のことも知らなかった。本当だ」 「だからさ」 阿岐本が言った。「俺が妙だと思っていたのはさ、俺が映画館の存続に手を貸したと… 記事へ
任侠シネマ 第226回 今野敏 2019/09/14 05:20 会員限定 16 永神が顔を上げて阿岐本を見た。 「知ってるわけじゃねえんだ。ただ、解(げ)せねえなとは思っていたんだ」 「何が解せねえんだ?」 「噂があったんだよ。『千住興業』が社屋を売りに出すっていう……」 「ほう……… 記事へ
任侠シネマ 第225回 今野敏 2019/09/13 05:20 会員限定 永神が眉をひそめる。 「どういうつながりだい?」 阿岐本が言った。 「説明してやれ」 日村は永神に説明を始めた。 「『千住興業』の常務取締役の犬塚ってやつを調べていたら、経済学者の梅中仁志と親しい間柄のようだ… 記事へ
任侠シネマ 第224回 今野敏 2019/09/12 05:20 会員限定 永神が目を見開く。 「え? どういうことだ? なんで俺が知ってるって……」 「永神よ。俺はさ、別に腹を立てているわけじゃねえんだよ。ここに呼んだのも文句や怨み言を言うためじゃねえ。本当のことが知りてえんだ」 「知… 記事へ
任侠シネマ 第223回 今野敏 2019/09/11 05:20 会員限定 阿岐本が言った。 「わざわざ足を運んでもらって、すまねえな」 「水くさい言い方すんなよ。何だい、話って?」 「おめえ、今回の話に、俺たちの同業者は絡んでねえって言ったな?」 「ああ。そのはずだ。間違いねえよ」… 記事へ
任侠シネマ 第222回 今野敏 2019/09/10 05:20 会員限定 永神は、本人が言ったとおり、午後三時にやってきた。 日村は立ち上がって出迎えた。稔とテツも起立して頭を下げた。 「おう。アニキが呼んでるって?」 日村は組長室のドアをノックした。 「永神のオジキがおいでです」… 記事へ
任侠シネマ 第221回 今野敏 2019/09/09 05:20 会員限定 稔はさっそく、どこかに電話をかけた。昔の仲間かもしれない。ヤクザ稼業は、ある意味、出家みたいなところがあり、盃をもらった時点で、昔つるんでいたワル仲間とはあまり連絡を取らなくなる。 それでも、昔の伝手(つて)で情報は… 記事へ
任侠シネマ 第220回 今野敏 2019/09/08 05:20 会員限定 日村は言った。 「その写真は、三年ほど前のものらしいです」 「三年前……? 武井ってのは今、いくつなんだ?」 稔がこたえた。 「自分たちよりずいぶん上でしたから……。たぶん、今三十歳くらいだと思います」 「…… 記事へ
任侠シネマ 第219回 今野敏 2019/09/07 05:20 会員限定 だが、阿岐本が言うこともわかる。ヤクザにはいろいろなしきたりがあったり、付き合いがあったりと、何かと堅苦しい。 昔は礼儀作法にもうるさかったし、堅気には迷惑をかけるな、という親分も少なくなかった。 地回りは、町中の… 記事へ
任侠シネマ 第218回 今野敏 2019/09/06 05:20 会員限定 日村が入室すると、机の向こうの阿岐本が言った。 「何事だい」 「『サイバーオン』の木島って社長が、半グレとつながっているらしいんです」 「ほう……。半グレ……」 「これ見てください」 日村はテツがプリントアウ… 記事へ
任侠シネマ 第217回 今野敏 2019/09/05 05:20 会員限定 「ゾク時代の知り合いか?」 「そうです。まあ、知り合いと言うか……」 稔がわずかに顔をしかめる。その表情で、だいたい想像がついた。 「敵対組織のやつだな?」 「ええ、まあ……。十人ほどのゾクを束ねていましたけど… 記事へ