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     読者のみなさまへ  「流人道中記」は、10月28日をもって閲覧ができなくなります。お早目に閲覧いただきますようお願いいたします。
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  • 流人道中記 第455回

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     源義経は平泉では死なずに、ここまで落ちて蝦夷に渡ったのだと、道案内の役人は見てきたように語った。  三厩(みんまや)の湾(いりうみ)にはいくつかの集落があって、先触れが何をどう伝えたものやら、ところどころに白い闇を照ら…
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  • 流人道中記 第454回

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     合掌をほどいて、観音様の祠を真向に見つめながら玄蕃は言った。  「おのれに近き者から目をかけるはあやまりぞ。武士ならば男ならば、おのれのことは二の次ぞ。まして大身の旗本ならば、妻子のこととて二の次ぞ」  僕は心打たれた…
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  • 流人道中記 第453回

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     浜道は砂から細石(さざれいし)に変わり、やがて波に磨かれた石くれとなった。歩きづらさはこのうえなく、僕は流木を杖にしてよろめきながら進んだ。  風はいよいよ冷たく、雲は空一面を低く蓋(おお)い、海は黝(くろず)んでいた…
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  • 流人道中記 第452回

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     武士の本分とは何ぞや。  考えるまでもあるまい。それは戦だ。よって大坂の陣が終わり徳川の天下が定まり、元和偃武(げんなえんぶ)が唱えられた折に、われら武士は変容せねばならなかった。  しかるに、戦国の世を勝ち抜いて幕府…
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  • 流人道中記 第451回

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     のう、乙次郎。  この景色は何やら夢の中のようだの。きのうは道なき浜辺を歩き詰めたと申すに、平館(たいらだて)からは立派な松並木だ。  もしや俺は死んでいるのではあるまいな。この道は冥土に向こうていて、海峡は三途の川。…
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  • 流人道中記 第450回

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     「誰が」と、僕は訊ねた。  「誰がってあんた、俺に決まっとろうが。やっぱしどう見たって、味噌樽から這い出たようななりはうまかねえ。さ、着替えた、着替えた」  僕は思い余って玄蕃の襟を掴んだ。  「どうして」  言葉は繋…
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  • 流人道中記 第449回

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     陽気な漁師たちに濁り酒を強いられ、僕は泥酔した。炉端で気を喪い、まるで浜に揚がった鯨のように梯子段を引きずり上げられたところまでは覚えている。皮を剥がされ、褌(ふんどし)一丁で眠りに落ちてしまった。  痛快な夢を見た。…
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  • 流人道中記 第448回

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     道が絶えた。  もしやそうと気付かずに、三厩(みんまや)の湊を通り過ぎてしまったのかと思い、浜で網を繕(つくろ)っていた漁師に訊ねれば、べつだん二本差しの侍に畏れ入るでもなく、まだ先だというようなことを言った。  砂浜…
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  • 流人道中記 第447回

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     古い宿のどこかしらから、媼(おうな)の唄声が聞こえてきた。呆けているにしては耳にここちよく、正気にしてはいささか上調子(うわぢょうし)だった。夕陽が刀の錆を浮き上がらせるまで、僕はぼんやりとしていた。  「おぬしの差料…
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  • 流人道中記 第446回

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     蓬田(よもぎた)宿の旅籠に入ると、僕らは何をさておき刀の手入れをした。善知鳥崎(うとうまい)の難所で波をかぶったあとは、刀身を拭ったきりだった。塩は刀の大敵だ。  目釘を抜き●をはずせば、茎(なかご)はじっとりと湿めっ…
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  • 流人道中記 第445回

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     髪を結いおえて一息入れていると、真新しい旅装束がうやうやしく運ばれてきた。  無紋の羽織に小袖、裁着(たっつけ)袴、小手から脚絆までの一揃いである。  「番所の備えにござれば、どうぞお使い下されませ」  僕らが髷を結い…
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  • 流人道中記 第444回

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     「武は戈(ほこ)を止むるの義なれば、少しも争心あるべからず。神道無念流の訓(おし)えだ」  静かに、独りごつように玄蕃は言った。  僕は思わず背筋を伸ばした。流派にかかわらず、剣を学ぶ者はみな等しく教えられる。剣はおの…
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  • 流人道中記 第443回

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     あらすじ 乙次郎と玄蕃の二人旅も残すところわずか。玄蕃は乙次郎に「永年御預」となった真相を語り始めるが、乙次郎にはまだ、合点がゆかぬ部分が多かった。難所、善知鳥崎を越え、津軽藩の野内番所にたどり着いた二人。玄蕃はそこで…
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  • 流人道中記 第442回

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     「玄蕃様、まずは奥へ」  笑うだけ笑ったあと、工藤数馬はひやりと真顔に戻った。石川乙次郎なる連れの侍のしかめ面に、不穏なものを感じ取ったからである。  奥の間に通して「昼餉は」と問えば、玄蕃様は「まだだ」、石川は「いや…
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  • 流人道中記 第441回

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     野内(のない)番所の使命はあくまで隣国に対する備えであり、関所改めではない。しかも通行人は日に四人か五人がせいぜいで、いきおい顔見知りの行商人や荷担ぎ人足があらましだった。  冷たい浜風の吹きつのる午下り、黄色く濁った…
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  • 流人道中記 第440回

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     野内(のない)の御番所は浅虫から善知鳥崎(うとうまい)の難所を越えて一里半、貴船川の堤に沿うて堅固な木柵を繞(めぐ)らしている。  海側に弘前津軽家の番所、山側には分家たる黒石津軽家のそれが設けられ、役人は総勢四十人と…
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  • 流人道中記 第439回

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     「面倒ならとうに叩ッ斬っておるわ」  「おー、こわこわ。命ばかりはご勘弁」  お道化る玄蕃の腕を掴んで、巌(いわお)の間から引きずり上げた。まかりまちがえば二人揃って攫(さら)われるところだった。  僕らはほうほうの体…
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  • 流人道中記 第438回

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     「善知鳥崎」と書かれた標(しるべ)が立っていた。これで「うとうまい」とは、どれほどの碩学でも読めまい。蝦夷の言葉に漢字を当てたものか。旅芸人の男が言うには、このあたりに棲む海鳥の名であるらしい。  「親がウトウと呼べば…
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  • 流人道中記 第437回

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     「ところで、乙さん。あんた、どうして俺の名前を呼ばねえのだえ」  浅虫の湯宿を出るとじきに、浜づたいの街道を歩きながら玄蕃が言った。僕らの前には、一足先に宿を立った旅芸人たちが杖を頼りにとぼとぼと歩んでいた。  「科人…
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