• 海神の島 第292回 池上永一

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     ここは頭の固い古い人間の面目躍如をしておきたいところだ。  「レイノルズ中佐に義理もあるし、ちょっとは仕事しておくか」  泉はROVのカメラの死角をつくように回り込んだ。ROVのカメラは可視光線しか捉えられない。即ちラ…
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  • 海神の島 第291回 池上永一

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     その声に泉はクスッと笑った。子どもの時の自分の口癖だったからだ。恐怖の中に仄(ほの)かな温かさを感じた泉は、作戦を続行することにした。幸い、カプセル内には生命維持装置がある。カプセルに籠(こ)もれば二日は生きていられる…
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  • 海神の島 第290回 池上永一

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     潜水艦は通常、水の抵抗を減らすために涙滴型になっている。だが中国の095型原子力潜水艦は核ミサイルを積んでいるために背中にラクダのような瘤がついている。海上では中国海警局で穏便に対応している中国だが、海中には最新鋭主力…
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  • 海神の島 第289回 池上永一

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     「一心(いっしん)丸(まる)。日本の船だ」  しかし沈没船にしては奇妙だ。船体の中央部がほぼ消失している。これは爆発によるものではないか、と泉は考えた。  「涼、ネットで照合をお願い。戦時中に日本海軍に徴発された船のリ…
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  • 海神の島 第288回 池上永一

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     どれくらい時間が経っただろう。カプセル内の警報が止んでいた。海上の新垣からの通信で泉は目を開けた。  『花城先生、聞こえますか?』  「無事よ。上手く流されたようね。カプセルが横に倒れているから、ちょっとだけ巻き上げて…
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  • 海神の島 第287回 池上永一

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     泉のダイビング人生で、こんなに深く潜ったことはない。カプセルの照明器がなければ、宇宙空間と錯覚するほど何も見えない。深海は竜宮城とはほど遠い、命の気配が薄い世界だった。  カプセルが急にブランコのように揺れた。コンソー…
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  • 海神の島 第286回 池上永一

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     『ヴァン・ゴッホは目標の位置に停泊しました』  「アメリカ軍は?」  『作戦通り、海上自衛隊と共に五十キロメートル先で中国海警局と睨み合っています』  「こちらの動きを気取(けど)られないようにして」  『中国が接続水…
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  • 海神の島 第285回 池上永一

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     賢治は地方によくいる郷土史研究家の枠を超えていた。賢治の生きていた戦前、戦中、戦後は琉球史という体系的な学問が存在しなかった時代だ。当時あったのは郷土史で、民俗学と歴史学が明確に分けられていなかった。琉球史が学問の体を…
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  • 海神の島 第284回 池上永一

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     金庫を彷彿(ほうふつ)とさせる分厚い円形の扉が開いた。これから二十四時間かけて泉の体を二十気圧、水深二百メートルまで順応させる。  加圧室は潜水艦の内部のようだ。四畳半ほどの狭い室内にソファーや二段ベッドやトイレがパズ…
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  • 海神の島 第283回 池上永一

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     加圧室の前でシンガポール人の医師が、重大な健康障害が出る見込みを口頭と書面の両方で泉に示した。医師が次々とチェックシートにレ点をつけていく。  「あなたはこれまで飽和潜水をしたことがありますか?」  「いいえ。そこまで…
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  • 海神の島 第282回 池上永一

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     「花城先生、大丈夫ですって。お姉さんも妹さんもまだ気づいちゃいませんよ」  「涼(りょう)、あの二人は侮れないのよ。あいつらはいつも一足先に、私の手柄を掠(かす)め取っていくんだから」  新垣は、汀と澪の恐ろしさをイマ…
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  • 海神の島 第281回 池上永一

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     レイノルズ中佐は、軍人ばりの泉の作戦計画に、反論の余地がなかった。陽動といい、飽和潜水といい、ミッション・コンピューター奪取といい、実に手際の良い作戦だ。  泉がテーブルの上に手をつき、再び迫り出す。  “Am I h…
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  • 海神の島 第280回 池上永一

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     泉の提案は、J20の機体そのものは中国に返すというものだ。これで中国の面子(メンツ)は保たれる。しかしアメリカは別のものをいただく。  「アメリカ軍がほしいのは機体そのものではなく、ミッション・コンピューターのはず。そ…
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  • 海神の島 第279回 池上永一

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     泉は尖閣の海図をテーブルに広げた。赤ペンでバツ印をつけた場所が陽動ポイントだ。  「はい。アメリカ軍は佐世保港に停泊している輸送揚陸艦サン・アントニオで陽動します。海上自衛隊のちはやを側につければ間違いなく中国海軍はそ…
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  • 海神の島 第278回 池上永一

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     「つまりどういうことだ?」  「軽いものは魚釣島へと流れ着きますが、重いものは海底の滝壺に飲み込まれるということです」  側で話を聞いていた新垣が呟いた。  「そうか。トカラギャップ!」  「J20の機体は、海底の吹き…
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  • 海神の島 第277回 池上永一

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     泉の言う通り、尖閣沖は海流が激しく、機体は流されていると想定されていた。磁気探査をしようにも水没予想地点を絞り込まなければならない。その範囲は墜落地点から半径五十キロメートルの円内とされている。サルベージ船を使うには広…
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  • 海神の島 第276回 池上永一

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     レイノルズ中佐は泉の論文を引き出しから取り出して、ポンとテーブルの上に投げた。  「我々から七万ドルの報酬を得ながら、アメリカ軍の装備を研究に使おうとは、考えたものだ。今度は何を企んでいるのだ?」  泉は取り繕おうとも…
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  • 海神の島 第275回 池上永一

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     「アルビン級の性能ならトカラギャップ千四百メートル程度の深さは、チョチョイのチョイよ」  新垣はズルッとベンチから滑り落ちた。最初からそれが目的だと言えば、喧嘩もせずに済んだのに。  「なんで先に言わないんですか!」…
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  • 海神の島 第274回 池上永一

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     J20墜落の一報を受けて、泉(いずみ)と新垣(あらかき)はキャンプ・コートニーを訪れていた。殺風景な待合室で欠伸(あくび)を噛み殺す泉に、新垣がひそひそ声で話しかける。  「花城(はなしろ)先生、いくらなんでもアメリカ…
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  • 海神の島 第273回 池上永一

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     J20も当初、アメリカ空軍のF22やロシア空軍のSu‐57をベンチマークにして開発されたはずだ。しかし完成した機体は、旧世代機によく見られる特徴を持っていた。  アメリカ軍は、その謎に包まれた機体を何としてでも回収し、…
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