• 海神の島 第254回 池上永一

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     「貴様! なんだ、その反抗的な目は!」  日本兵が軍刀を抜いて賢治の鼻先に突きつけた。賢治は黙って引き下がるしかなかった。  「和男、墓になりそうな谷を探すぞ。そこに死体を捨てるしかない」  和男はもう敬礼で返事するの…
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  • 海神の島 第253回 池上永一

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     数日後、第一千早丸の救命ボートが這(ほ)う這(ほ)うの体で戻ってきた。出航して間もなく、エンジンが故障し、船を放棄することになってしまったという。  「船を失ったのか……」  賢治たちには、ここで死ぬかもしれない、とい…
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  • 海神の島 第252回 池上永一

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     水を確保した島民は、次に食料を確保することにした。魚釣島は生態系が豊かで、食べられそうなものが豊富にあった。  「ミズナを見つけたよ」  「長命草もあったさー」  「海鳥の卵もあるねー」  それぞれが収穫した成果を自慢…
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  • 海神の島 第251回 池上永一

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          賞 詞    昭和二十年春沖縄作戦近迫シ敵機及敵潜水艦ノ跳梁愈々(いよいよ)激シク   先島(さきしま)群島―台湾間ノ航行遮断セラレ軍民需物資ノ補給杜絶(とぜつ)スルヤ   兵団ハ長川少尉ヲ長トスル水軍隊ヲ編…
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  • 海神の島 第250回 池上永一

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     賢治は初めて上陸する魚釣島に荘厳な雰囲気を感じていた。島の規模に似つかわしくない、切り立つ高峻な山が畏怖を感じさせる。  「湧水を見つけたぞ」  久しぶりの水に歓喜した島民たちは、岩肌を伝う清涼な水に直接口をつけて啜っ…
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  • 海神の島 第249回 池上永一

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     魚釣島は石垣島の漁民たちの補給基地として使われていた。冷凍技術がないため、獲ったカツオを速やかに処理しなければ腐ってしまった。しかしそれだと頻繁に漁場と石垣島を往復することになる。魚釣島は漁場からほど近く水場もあること…
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  • 海神の島 第248回 池上永一

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     備蓄の食糧はあったが、乾パンは喉を渇かしそうだから誰も手を伸ばさなかった。賢治は極限状態に陥って初めて知った。人間は餓死する苦しさよりも、喉が渇く方が何十倍も辛いのだ、と。  漂流から一晩が過ぎていた。水平線が仄かに明…
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  • 海神の島 第247回 池上永一

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     「第一千早丸はどこだ?」  賢治たちが海中に潜っている間に、第一千早丸も攻撃を受けた様子だ。機関部から黒い煙を上げている様子から、エンジンをやられたのだろう。しかし巧みに操舵して救助に向かおうとしていた。賢治はありった…
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  • 海神の島 第246回 池上永一

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     賢治は躊躇わずに船尾に向かって駆け出した。一歩がこんなにもどかしいと思ったのは初めてだ。二歩進んで振り返ると、ロケット弾は着弾寸前だった。賢治は身を投げるように船尾に向かって跳んだ。その瞬間、衝撃波が後頭部を撫でるのを…
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  • 海神の島 第245回 池上永一

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     「やめろ。民間人が乗っているんだぞ!」  賢治は上空を掠めるB-24に向かって怒鳴った。第五千早丸はパニック状態だ。反射的に海に飛び込む者、子どもを抱えて躊躇(ためら)っている間に突き落とされた者、火を消そうと麻袋を叩…
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  • 海神の島 第244回 池上永一

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     さっきまで押し黙っていた島民たちが、恐怖の坩堝(るつぼ)に落とされたように一気に騒ぎ出す。B-24は悠然と疎開船の上を旋回しながら、機首を第一千早丸に向けてきた。  「あの船には海神(わだつみ)の秘宝が!」  賢治が咄…
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  • 海神の島 第243回 池上永一

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     翌七月三日は、夏の雲がプカプカと空に漂う牧歌的な光景が広がっていた。第五千早丸に乗り込んだ島民たちは日差しを避けようと、各々クバ笠や防空頭巾で顔を覆ったり、一張羅の着物を日除けに張ったりして、静かに過ごしていた。聞こえ…
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  • 海神の島 第242回 池上永一

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    九    昭和二十年(一九四五)七月二日 西(いり)表(おもて)島船(ふな)浮(うき)港沖  疎開船となった第一千(ち)早(はや)丸、第五千早丸は、西表島の船浮港に停泊した後、台湾を目指していた。総勢二百二十人余りの最後…
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  • 海神の島 第241回 池上永一

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     「宮良のオジィ、どうしたんですか? 顔色が悪いですよ?」  宮良の目は虚空を見つめたまま動かない。もしや息まで止まっているのでは、と澪は心配になった。  宮良は震えるような声で言った。  「お嬢さん、その写真をもう一度…
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  • 海神の島 第240回 池上永一

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     「儂の家族は八(や)重(え)山(やま)出身で、戦前両親は台湾と石垣島を行き来していたんじゃ。台湾にも石垣島にも家があったんじゃ。戦争が激化したとき、石垣島のほうは引き払おうかという話になってね。こっちの方が住みやすいし…
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  • 海神の島 第239回 池上永一

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     しばらくして、ありえない光景を目撃した球場全体がどよめき出した。  何を隠そう、澪はスポーツ万能である。しかしそれだと男受けが良くないので、わざとトロいふりをしていた。女性アイドルに運動神経なんて要らない。禁欲的なアス…
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  • 海神の島 第238回 池上永一

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       台湾桃園市 桃園國際棒球場  翌日、一万五千人の観客が沸き返るなか、マウンドにラミゴガールズの衣装を着た澪が登った。  台湾をお騒がせ中の日本人地下アイドルの登場に、スタンドの熱気は最高潮に達した。もはや試合よりも…
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  • 海神の島 第237回 池上永一

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     「五十嵐さーん。遅くなってごめんなさいでしたー」  疲れた様子のない澪は、翌日に解放されていた。台湾生活を楽しんでいた澪は、事件に巻き込まれたことなどすっかり忘れていた。  身元引受人になってくれたのは、在台県人会の重…
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  • 海神の島 第236回 池上永一

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     「違います。僕はAVの制作なんてやってません! そのトラブルは青年マンガ誌のグラビア担当だった時のものです」  「どんなグラビアだ?」  「水着です」  「なんで青年マンガ誌に水着の女の子のグラビアが必要なんだ?」  …
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  • 海神の島 第235回 池上永一

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    *    台湾 台北(タイペイ)警察署  任意同行された澪と五十嵐(いがらし)は、容疑者扱いの取り調べを受けた。日本の警察庁に問い合わせたところ、澪と五十嵐が福岡県で国宝の青銅鏡を盗んだことがわかったからだ。西周圓渦夔紋…
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