• 海神の島 第143回 池上永一

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     基地を出た泉は新垣に、仕事を受けたことを告げた。意識が、さっきまでいた大陸的な風景から、島縮尺の景色の中に戻ってくるのを感じた。  調査の内容を聞いた新垣は、運転席でひっくり返りそうになった。  「花城先生、正気ですか…
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  • 海神の島 第142回 池上永一

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     「核物理学上、劣化ウラン弾は安全だ」  「だったら今それを煎じて飲んでみて。安全なんでしょ?」  レイノルズ中佐は二の句が継げず、唇を噛んだまま沈黙する。彼がようやく口にすることができたのは報奨金の値上げだった。  「…
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  • 海神の島 第141回 池上永一

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     「ドクター・ハナシロに回収してほしいのは、これだ」  レイノルズ中佐が手袋を嵌めて取り出したのは、ペットボトルほどの大きさの弾丸だった。泉が触ろうと手を伸ばすのに、レイノルズ中佐は手を引っ込めて触らせないようにした。…
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  • 海神の島 第140回 池上永一

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     現れた男の銀の楓(かえで)の階級章から、相手は中佐だと泉は瞬時に理解した。  「ハジメマシテ。ワタシワ、まいく・れいのるずデス」  泉はソファーに座って大袈裟に脚を組んだ。  “I don't mind if you…
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  • 海神の島 第139回 池上永一

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    *    沖縄県北中城(きたなかぐすく)村 在沖米海兵隊基地司令部  陸地にさざ波を感じる場所があるとすれば、米軍基地内がそれだろう。見渡す限り平らに刈り取られた芝生は、まるで海のように波打っている。  泉は今日、先日車…
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  • 海神の島 第138回 池上永一

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     上海にも外灘(ワイタン)のバー・ルージュのような高級ナイトクラブはあるが、汀の勝負どころは豪華さじゃない。日本的な繊細なサービスは心の機微に訴えかける。後でふと振り返った時に胸がジンと温かくなるような、初恋のニュアンス…
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  • 海神の島 第137回 池上永一

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     汀が営業用スマイルで開店の合図を出した。  「欢迎来到银座」  (銀座へようこそ)  東部戦区の幹部たちは軍人らしからぬ柔和な顔つきだった。このクラスになると親の代から共産党員で、子息の彼らは海外への留学経験があるエリ…
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  • 海神の島 第136回 池上永一

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     ボブヘアの若奈は、実年齢より十歳上に見えるように腐心している。もちろん老けたように見せるのではなく、落ち着いた口調で話すように心がけているのだ。  家庭的と所帯臭さは違う。爪は短く、ネイルもクリア一色だけ。化粧はほぼス…
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  • 海神の島 第135回 池上永一

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     本物の育ちの良さを持つ小百合は、女性にありがちな、人を妬んだり、悪口を言ったり、相手によって態度を変えたりすることがない。彼女の美点は、他人の幸福を一緒に喜んであげられることにある。「理想の娘」を体現する小百合は、あっ…
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  • 海神の島 第134回 池上永一

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     「那月(なつき)さん、あれ頂戴」  汀は、チーママの那月にスペシャルドリンクを出すようお願いした。湯のみ茶碗の中には、沖縄の特産品であるウミヘビのイラブーの粉末に湯を注いだものが入っている。所謂強壮剤の一種で、中国では…
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  • 海神の島 第133回 池上永一

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     エマージング・エクスプローラーの支援金は一万ドルと多くはないが、発表の場がナショナルジオグラフィック誌というのは大きい。世界三十六ヶ国語で八百四十万部が購読されている雑誌で発表するのは、学会で百回顕彰されるのに等しい影…
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  • 海神の島 第132回 池上永一

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     泉は勝ち誇るように新垣に耳打ちした。  「私、特大のゴホウラガイを持っているの。それとすり替えればすぐにはわからない」  泉は高校生の時にスキューバダイビングのライセンスを取得した。それまでは足のつく範囲でしか獲れなか…
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  • 海神の島 第131回 池上永一

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     泉の推理はこうだ。河村良介は特に南洋の貝に明るかった。コレクションには沖縄の貝も数多く含まれている。曾祖父の石嶺賢治(いしみねけんじ)が特大のゴホウラガイを見つけたと河村が知ったら、目にしてみたいと思ったことだろう。ま…
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  • 海神の島 第130回 池上永一

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     「弥生時代の遺跡から見つかった腕輪ってあんまり綺麗じゃないですね」  「貝の成分の炭酸カルシウムは水溶性だから、骨と同じで千年単位の時間だと溶けちゃうのよ」  「花城先生は、どの腕輪がお宝なのか目星はついているんですか…
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  • 海神の島 第129回 池上永一

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    *   山口県下関(しものせき)市  九州と関門(かんもん)海峡を挟んだ下関市は、緩やかな坂道が続く町だった。足元に常に山を感じるからだろうか、住宅地にいても自然のなかにいる感じが強い。平野の福岡県とは目と鼻の先なのに、…
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  • 海神の島 第128回 池上永一

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     普段から混雑している福岡空港だが、空港スタッフが走り回っている様子が異様だった。  「韓流スターでも来るんじゃないかな?」  「澪、ユン・ゴボムのファンですぅ。どこにいるかな? どこかな?」  澪はキョロキョロと辺りを…
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  • 海神の島 第127回 池上永一

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     『そんなパン、どこにあったかしら……?』  「エロがお宝を横取りしようとしたって無駄なんですぅ」  『だったら、整形の費用を出してあげるわ。おっぱいをDカップにしたくなあい?』  「澪はこれでも元グラビアアイドルなんで…
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  • 海神の島 第126回 池上永一

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     ゆかりんは澪が芸能界から消えた後、着実にステップアップを図り、女優へと転身していた。当然ゆかりんは、大河原監督の次回作で国際派女優の称号を得ようと、なりふり構わず澪を邪魔するものと思われた。  「ゆかりんと共演なんてお…
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  • 海神の島 第125回 池上永一

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     国宝ともなると、容易に換金できるものではない。市場に出した瞬間に盗品だとバレてしまう。そのことが警備を緩くさせているのだろう。昼間の下見でも、警報器も赤外線センサーも見当たらなかった。五十嵐は拍子抜けするくらい易々と内…
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  • 海神の島 第124回 池上永一

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     複製品といっても、専門家が鑑定しない限り、まず見抜けないほど精巧なものだ。中国の複製業者はデジタルデータを駆使して、寸分違わず同じものを作る技術がある。素材、重量、錆(さび)の付き方、欠け、罅(ひび)まで完全に再現する…
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