• 海神の島 第206回 池上永一

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     「すごいよ澪ちゃん。台湾のスターだよ!」  「五十嵐さん、澪は嬉しいですぅ」  「支配人が興奮していたよ。ライブハウス始まって以来の盛況なんだってさ。今日の入りは百六十人だよ。こんなの見たことないって」  「次は安室(…
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  • 海神の島 第205回 池上永一

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     「心配ないわ。私は京大総長の妻になるんだから」  紙袋を手に取った那月は、早足で自宅を出た。袋にはタオルに包んでガムテープで留めたゴホウラガイが入っている。澪と五十嵐(いがらし)が不在のうちに、これを戻さなければならな…
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  • 海神の島 第204回 池上永一

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     客の中に山階航も紛れていた。若者たちの中でちょっと場違いな居心地の悪さを感じていた。那月から連絡を受けた山階は、すぐに台湾に飛んだ。  「まさか西周圓渦(えんか)囉(き)紋鼎(もんてい)が海神の秘宝だったとはな。あり得…
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  • 海神の島 第203回 池上永一

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    *    台湾 台北市中正区羅斯福路  亜熱帯の都は夜も気温をぐんぐんあげていた。路上で爆竹が鳴り響くのは日常の光景だ。通行人はにわか雨にでも遭遇したように、無関心に爆発音の側を通り過ぎていく。爆竹の乾いた音が涼感の一種…
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  • 海神の島 第202回 池上永一

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     「さすが隼人は博識ね! ほら那月さん、こういうの知ってた?」  那月は添付された画像をしげしげと眺めた。緑青(ろくしょう)に染まった鼎が那月の目には、シチュー鍋に脚がついているように映った。  「これがエンカキモンテイ…
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  • 海神の島 第201回 池上永一

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     「台湾に誘(おび)き出すのね?」  「私が良さそうな品を見繕うから、エロは派手に騒いでくれる?」  「了解。あたしとしたことが迂闊だったわ。自分で教えていたなんて」  「そっちのチーママはどうする?」  「それはあたし…
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  • 海神の島 第200回 池上永一

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     今日は新たな作戦、通称Bクイックの打ち合わせだ。汀は那月に一泡吹かせてやりたかった。  「さて、うちの悪い猫ちゃんをどうしてくれましょうか?」  「こっちの狼も、群れから追い出してやる」  泉は山階と今後一切関わり合い…
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  • 海神の島 第199回 池上永一

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     彼らは沖縄の総意を代弁しているかのように振る舞っていた。確かに泉の意見の一部も彼らと重なるが、全部ではない。泉は自分がグレーの人間だと自覚している。成長するにつれグレーの濃度が上がっていくのを止められない。だから純白の…
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  • 海神の島 第198回 池上永一

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     噂に聞く一本七十万円の白ワインが景気良く注がれた。日頃、基地前でシュプレヒコールを上げている安冨祖たちは、魂を抜かれたようにポカンと惚(ほう)けていた。そこを上手くもてなすのがホステスたちの役目だ。  カレンが胸の谷間…
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  • 海神の島 第197回 池上永一

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     「ダメよ、カレンちゃん。羽目を外したい殿方っておっしゃい」  「私たちの相手にしては雑魚(ざこ)すぎやしませんか?」  「恵ちゃん、初心を忘れちゃいけないわ。小さなことからコツコツと。ね?」  「汀ママはどこまでお望み…
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  • 海神の島 第196回 池上永一

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     スマホのニュースアプリで記事を読んだ汀は、泉からの絶妙なトスに舌を巻いた。  泉は基地の返還の手続きを調べ上げていた。返還される基地内には先ず考古学的調査が入る。海神(わだつみ)の墓はまさに考古学的調査対象となり得る。…
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  • 海神の島 第195回 池上永一

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     「あの。元教育長の安冨祖さんでいらっしゃいますか? 私、軍用地主の一人の花城汀と申します。是非、一度お話をさせていただけないでしょうか? 返還後のことを考えると不安で、不安で……」  ハンカチでそっと涙を拭く汀に、安冨…
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  • 海神の島 第194回 池上永一

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     模合とは頼(たの)母(も)子(し)講(こう)の一種で、沖縄では相互扶助の精神からごく普通に催されている。十人の模合だと毎月子が一万円程度出し合い、その月の親が十万円受け取る、という仕組みだ。一般的に一人で複数の模合を掛…
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  • 海神の島 第193回 池上永一

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     泉はマスクをしたオバァに声をかけた。  「あの、失礼ですが、地主の方でいらっしゃいますか?」  「あんたマスコミの人ねぇ?」  泉は、瞬間的に理解した。ウチナーンチュなら本音と建前を自動的に使い分ける。メディア向けの意…
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  • 海神の島 第192回 池上永一

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     「リーダーが誰か見極めてくるわ!」  汀は嫌悪感剥き出しの態度で車から降りようとした。  「エロ、そんなやり方じゃダメだよ。こういうのはソフトにやらないと」  「じゃあ、処女に見本を見せてもらいましょうか」  姉妹初め…
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  • 海神の島 第191回 池上永一

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    *    沖縄県浦添市 牧港補給基地正面ゲート前  炎天下の基地前は、平和活動家たちの暑苦しさと相まって、ベタついたシロップのような粘着質な空気だった。世の中にはスマートなデモとダサいデモがある。彼らに最新の服を着せ、最…
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  • 海神の島 第190回 池上永一

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     テレビ画面には「生中継」とテロップが出ていたが、これが三十年前の映像と言われても信じただろう。街並みや流行が変わっても、彼らだけは時代に逆らって同じファッションのままだ。同じ言葉のままだ。同じ手法のままだ。それが強烈な…
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  • 海神の島 第189回 池上永一

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     「言うわね。だったらあたしも言わせてもらうわよ。やり方が暴力的なのよ」  「貧乏くさいのも入れといて。実際に貧乏かどうか別として。精神が貧困」  二人は言い得て妙だと頷きあった。するとこれまで感じていたモヤモヤが一気に…
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  • 海神の島 第188回 池上永一

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     「じゃあ、あたしが海友(うみとも)不動産の会長に売るわよ! 高級リゾートホテルにしてもらうわ!」  「開発業者もリスクを冒してまで買いたがらないよ。もし買った土地が農地にしか利用できなかったら、どうするの?」  「んま…
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  • 海神の島 第187回 池上永一

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     結局、出来上がった街はどこか非人間的な匂いのする人工都市になった。歩道を整備したとしても、似たような百メートル四方の区画が続くのが心理的障壁となって、歩くことを躊躇わせる。街の界隈性など皆無の無味乾燥とした直線の歩道は…
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