• 海神の島 第364回 池上永一

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     澪が芸能界から追放されるたびに、漣オバァは手を差し伸べてくれた。十代でグラビアアイドルから転落した澪は、漣オバァからの毎月十万円の送金がなければ、危うくAV女優になっていたかもしれない。 ぶっちゃけアイドルで二度目の芸…
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  • 海神の島 第363回 池上永一

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     営業が終わった深夜零時。久しぶりに無料トークアプリの着信音が鳴った。見れば泉からのメッセージだった。 『ロリが大変なことになっているよ』午前0:02 『自己破産したのならご愁傷様でした』既読 『ロリのツイッターを見て』…
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  • 海神の島 第362回 池上永一

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    「汀ママ、和光ビルなんて絶対に買収できないですよ」 血相を変えた隼人がヒソヒソ声で耳打ちする。汀はそんなの知ったこっちゃない。 「なぜ? ロンドンのハロッズだって、カタールのファンドが買収したじゃない。その前はエジプト人…
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  • 海神の島 第361回 池上永一

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     その言葉に、それとなく聞き耳を立てていたクラブ汀のホステス全員が、色めき立った。もしクラブ汀で火事があったら、これを持って逃げろと言われている伝説のワインだ。そのお値段は一本五千六百万円である。 「さすがシン閣下。ご趣…
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  • 海神の島 第360回 池上永一

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     澪の遺産相続放棄宣言を聞いたとき、妹は頭がおかしくなったのかと汀は思った。だったら自分が相続すると名乗りを挙げたが、相続するか放棄するかは相続人が決める問題だ、と弁護士から一蹴された。澪の相続放棄は法的な手続きを経て、…
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  • 海神の島 第359回 池上永一

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     路面店進出の野望が潰えた汀は、気落ちしているかと思いきや、以前にも増して辣腕経営者ぶりを発揮していた。今夜の貸切客は店始まって以来の大物だ。準備したのは赤、白、黄、ピンク、オレンジ色の薔薇千輪分の花びらで拵(こしら)え…
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  • 海神の島 第358回 池上永一

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       東京 銀座 クラブ汀はオープン前の最終チェックで大忙しだった。 「ひとつ、ひとつ、確実に。お辞儀は三秒をキープ。ほら、ヒロちゃん、ネクタイが曲がっているわよ。カズさん、ズボンのポケットに余計なものを入れない。マサト…
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  • 海神の島 第357回 池上永一

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     澪は心で聞いたオバァの声に従ったまで、と言った。三姉妹仲良くするのは無理だが、石嶺賢治の功績を後世に残してほしいというオバァの希望は、聞き届けたかった。 「エロも処女も漣オバァに孝行したのに、澪だけが何もしないなんて、…
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  • 海神の島 第356回 池上永一

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     「あった。竜骨……。何これ!」 泉がパチクリと目を開く。開けた視界に点在するのは数十隻の沈没船である。 「凄い。こんなの見たことない……」 やはりトカラギャップは、海のスイートスポットだった。ここに眠るのは十八世紀の近…
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  • 海神の島 第355回 池上永一

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     泉は目を爛々(らんらん)と輝かせてモニターを覗いた。 「大きい爺ちゃん、見て。これが、あなたが見たかった歴史ロマンよ」 モニター画面に映る深海の映像は幻想的である。眠たくなるような暗闇の中にぼんやりと青い円で切り取られ…
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  • 海神の島 第354回 池上永一

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     船尾の縁に腰掛けた人影が、床に置いたモニター画面を前のめりで覗き込んでいる。 「深度一千三百メートル……。一千四百メートル……。一千五百メートル。やった。ついにトカラギャップの底に着いた!」 「花城先生、おめでとうござ…
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  • 海神の島 第353回 池上永一

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     いつまでもこんなところで燻(くすぶ)っているわけにはいかない。弁護士が話している相続の話なんて耳に入っちゃいなかった。 「相続人の花城澪氏は、牧港補給基地の軍用地を祖母の花城漣氏から正式に相続いたします。ここに署名捺印…
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  • 海神の島 第352回 池上永一

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     オーストラロイドは現在ポリネシア、ミクロネシア、メラネシアといった南半球に分布する人種だが、太古には北半球にも版図を広げていた。当初、沖縄県民の祖先と思われていた港川人も、現在ではオーストラロイドと判明している。氷河期…
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  • 海神の島 第351回 池上永一

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     「先生、海神の秘宝はあの人骨だったんですね?」 泉が振り絞るように声を出す。 「はい。手帳には、故石嶺賢治氏は尖閣諸島で『海神様を発見した』と記されております。そのことから物ではなく人だったと推定できます」 「あの化石…
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  • 海神の島 第350回 池上永一

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     ノッチへ吹き上げる一陣の風が漣オバァの遺灰を天空高く舞わせた。樹冠から漏れる日差しが灰をキラキラと輝かせた。きっと賢治が呼んだ風に違いない、と汀は思った。 「御覧なさい。綺麗ね」 煙のように上っていく灰を眺めた三姉妹は…
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  • 海神の島 第349回 池上永一

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     返還話をひっくり返したくて、捏造(ねつぞう)した遺跡が本物の遺跡だったことに、泉は驚きを隠せない。ここを掘れば必ずや原始的な石器の類が出てくるだろう。魚釣島との関連性を示せれば、航路が確定する。ここは古代の海洋民族が躍…
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  • 海神の島 第348回 池上永一

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     「エロ、ありがとね。私にはこんなのできないよ」 「処女はひいお祖父様の遺志を継いだんでしょう? そんなのあたしにはできないわ」 汀と泉は悲しみの中に仄かな温かさを感じた。 「澪は何もしてあげられないですぅ」 二人の姉は…
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  • 海神の島 第347回 池上永一

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     汀は東京から京丹後(きょうたんご)の打掛を持参していた。二度目の結婚式で着るために誂(あつら)えたものだが、漣オバァの死装束に贈ることにした。 「ほら、処女もロリも手伝いなさい。漣オバァを綺麗にしてお父様の所に送ってあ…
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  • 海神の島 第346回 池上永一

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     澪には、漣オバァの関心を引くには、スポーツで目立つことが一番だとわかっていた。賢治は若い頃は陸上競技に夢中だったと聞いたことがある。村で一番足が速かったそうだ。だが澪は体育の成績が敢えて「3」になるように手を抜いた。小…
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  • 海神の島 第345回 池上永一

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     五十嵐は、澪を台湾海軍の艦船に便乗させて、魚釣島に送り込むつもりだった。しかし無鉄砲な澪は、いつの間にか防衛大臣と接触していた。五十嵐が台湾で段取りを整えている間に、澪は勝手にシーカヤックで魚釣島に向かってしまった。…
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