• 海神の島 第53回 池上永一

    会員限定
     トカラ列島は別名『七島灘(しちとうなだ)』と恐れられた、東洋のバミューダ海域である。特に悪石島と小宝島の間には渡瀬(わたせ)線と呼ばれる生物分布境界線が走っている。この線を境に生態系がガラッと変わるのだ。それは黒潮の蛇…
    記事へ
  • 海神の島 第52回 池上永一

    会員限定
     欧米では研究者だけでなく、富裕層の趣味として水中考古学が盛んである。タイタニック号の遺物の引き揚げなどに代表される、所謂トレジャーハンターの世界だ。 世界には地上にある遺跡よりも多い、凡そ三百万隻の船が沈んでいるとも言…
    記事へ
  • 海神の島 第51回 池上永一

    会員限定
    *   鹿児島県トカラ列島・悪石島(あくせきじま)沖 北緯二九度一九分。東経一二九度三三分。 インディゴ色に染まった海面は、哲学者のような深い思考を彷彿とさせる。大気と海水の境界線は意識と無意識の間のようだった。目まぐる…
    記事へ
  • 海神の島 第50回 池上永一

    会員限定
     翌月、映画の製作委員会が立ち上がった。出版社、レコード会社、芸能プロ、衛星放送局、中国資本のIT企業と錚々(そうそう)たるメンバーだ。製作費は十億円と、邦画にしては破格の予算だ。キャストには今をときめく俳優たちが起用さ…
    記事へ
  • 海神の島 第49回 池上永一

    会員限定
     「おおっ! それはすごい!」 社会の暗部を撮らせると世界一、と謳われる巨匠の食指が動いたようだ。 「箱に入れて楽屋に置かれてて、リボンがしてあったので、てっきりケーキかと思って開けちゃったんです。そしたら人骨が入ってい…
    記事へ
  • 海神の島 第48回 池上永一

    会員限定
     「ところで澪ちゃん、今日オレ、大河原(おおがわら)監督と会ったんだよ」 「大河原監督って『盗人挙(ぬすびとこぞ)りて』の人?」 「そう。カンヌグランプリの監督さん。あの北崎(きたざき)倫子(のりこ)を大スターにした人!…
    記事へ
  • 海神の島 第47回 池上永一

    会員限定
     五十嵐はオーストラリアの一件を家族に黙っていた。そしてハワイへの家族旅行のときに、五十嵐だけ入国審査で拒否された。性犯罪者とは一緒にやっていけないという理由で妻から離婚届を突きつけられ、娘からは結婚式にも出てほしくない…
    記事へ
  • 海神の島 第46回 池上永一

    会員限定
     澪は歌舞伎町のとんかつ屋でマネージャーの五十嵐(いがらし)と打ち合わせをすることになっていた。 「五十嵐さん、おそーい! プンプン!」 スーツを着た五十嵐が片手でごめんと謝りながら小走りで席に着いた。四十代後半の五十嵐…
    記事へ
  • 海神の島 第45回 池上永一

    会員限定
     十六組六十四人の地下アイドルの楽屋となると、充(あ)てがわれる部屋もない。トイレの個室で着替えられるのはまだ待遇がいい方で、ケープを羽織って通路で着替えが普通だ。一見するとそこは被災者の避難所と変わらない。 ──ババア…
    記事へ
  • 海神の島 第44回 池上永一

    会員限定
     このチェキだけが澪の現金収入だ。ステージのギャラも交通費も衣装代も支給されない。ほとんどの地下アイドルは芸能界の華やかなイメージとは裏腹に、ド底辺の暮らしをしていた。 一方、他の地下アイドルたちのチェキは暴走状態である…
    記事へ
  • 海神の島 第43回 池上永一

    会員限定
     『枕なんてフツーですよ』 潮目(しおめ)が変わるというのは、まさにこのことを言うのだろう。五分前まで爆笑に包まれていた生放送のスタジオがしんと静まり返った。私生活は奔放でも、仕事では真面目という芸能界の不文律が理解でき…
    記事へ
  • 海神の島 第42回 池上永一

    会員限定
     花城(はなしろ)三姉妹の問題児の澪は、地下アイドルになっていた。ただし経緯が他の地下アイドルたちとはちょっと違う。 地元沖縄のローカルCM出演まで果たした澪は、高校入学を機に上京してトップアイドルを目指すことにした。本…
    記事へ
  • 海神の島 第41回 池上永一

    会員限定
    *  新宿歌舞伎町(しんじゅくかぶきちょう) 高級店が立ち並ぶ銀座とは打って変わって、新宿には闇鍋のように雑多な人種が集まる。特に歌舞伎町は、出自を問われない土地柄もあって毛色の変わった人たちの楽園だった。軽く通りを流し…
    記事へ
  • 海神の島 第40回 池上永一

    会員限定
     汀の野望は路面店進出だった。ビルを一棟まるごと借りて、一階から最上階までの全フロアをクラブ汀にするのが夢だった。 その話を聞いた隼人は再び青褪める。 「バカな。路面店だなんて。エルメスとかシャネルなんかのスーパーブラン…
    記事へ
  • 海神の島 第39回 池上永一

    会員限定
     「もっとあるかと思ってたわ」 「銀聯(ぎんれん)カードは外貨持ち出し制限に引っかかるってあれほど言ったでしょう」 「三十枚フルに使えば制限を突破できるんじゃなかったの?」 「中国の金融引締め政策で、王(ワン)さんの会社…
    記事へ
  • 海神の島 第38回 池上永一

    会員限定
     苦味成分たっぷりのゴーヤージュースはヨーグルトのようなペースト状になった。汀はこれをジューサーカップごと一リットル飲み干すのだった。 「ヌチグスイ、ヌチグスイ……(滋養、滋養……)」 カップを空にした汀はバタッと床に倒…
    記事へ
  • 海神の島 第37回 池上永一

    会員限定
     こんな調子で四軒ほど梯子すると午前二時を回っていた。汀が銀座に落とす金は一晩で二十万円ほどだろうか。いくら稼いでも出て行く金が多いので、収支がどうなっているのか汀にもわからなかった。ただ引き抜きが多いこの業界でも、クラ…
    記事へ
  • 海神の島 第36回 池上永一

    会員限定
     「細谷さん、私も一杯いただいてよろしいかしら? カズ、升(ます)を持ってきて」 汀はひらりと立ち上がって、演歌歌手が歌い上げるように仰け反った。 「いいねえ、その飲みっぷり!」 酒豪の汀の飲みっぷりは八岐大蛇(やまたの…
    記事へ
  • 海神の島 第35回 池上永一

    会員限定
     「恵さん、聞いてよ。今度さ、俺の娘が結婚するんだけど、BGMっていうの? あれで悩んでいるんだよ」 そう言って岸本は音程のズレた鼻歌で曲のフレーズをハミングした。娘の結婚式でかけたい曲を探しているときに、ある店でこの曲…
    記事へ
  • 海神の島 第34回 池上永一

    会員限定
     今度は三人連れの客だ。 「あら岸本(きしもと)さん、いらっしゃい」 「ママ、俺のことを覚えてるの?」 岸本はクラブ汀に来るのは初めてだったが、十年前に汀のワインバーを訪れたことがあった。 「何言ってるのよ。レモンピール…
    記事へ
  1. 1
  2. 14
  3. 15
  4. 16
  5. 17

アクセスランキング

読売新聞購読申し込み_東京2020オリンピックパラリンピックキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
挑むKANSAI
読売新聞社からのお知らせ