• 海神の島 第43回 池上永一

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     『枕なんてフツーですよ』 潮目(しおめ)が変わるというのは、まさにこのことを言うのだろう。五分前まで爆笑に包まれていた生放送のスタジオがしんと静まり返った。私生活は奔放でも、仕事では真面目という芸能界の不文律が理解でき…
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  • 海神の島 第42回 池上永一

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     花城(はなしろ)三姉妹の問題児の澪は、地下アイドルになっていた。ただし経緯が他の地下アイドルたちとはちょっと違う。 地元沖縄のローカルCM出演まで果たした澪は、高校入学を機に上京してトップアイドルを目指すことにした。本…
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  • 海神の島 第41回 池上永一

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    *  新宿歌舞伎町(しんじゅくかぶきちょう) 高級店が立ち並ぶ銀座とは打って変わって、新宿には闇鍋のように雑多な人種が集まる。特に歌舞伎町は、出自を問われない土地柄もあって毛色の変わった人たちの楽園だった。軽く通りを流し…
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  • 海神の島 第40回 池上永一

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     汀の野望は路面店進出だった。ビルを一棟まるごと借りて、一階から最上階までの全フロアをクラブ汀にするのが夢だった。 その話を聞いた隼人は再び青褪める。 「バカな。路面店だなんて。エルメスとかシャネルなんかのスーパーブラン…
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  • 海神の島 第39回 池上永一

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     「もっとあるかと思ってたわ」 「銀聯(ぎんれん)カードは外貨持ち出し制限に引っかかるってあれほど言ったでしょう」 「三十枚フルに使えば制限を突破できるんじゃなかったの?」 「中国の金融引締め政策で、王(ワン)さんの会社…
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  • 海神の島 第38回 池上永一

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     苦味成分たっぷりのゴーヤージュースはヨーグルトのようなペースト状になった。汀はこれをジューサーカップごと一リットル飲み干すのだった。 「ヌチグスイ、ヌチグスイ……(滋養、滋養……)」 カップを空にした汀はバタッと床に倒…
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  • 海神の島 第37回 池上永一

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     こんな調子で四軒ほど梯子すると午前二時を回っていた。汀が銀座に落とす金は一晩で二十万円ほどだろうか。いくら稼いでも出て行く金が多いので、収支がどうなっているのか汀にもわからなかった。ただ引き抜きが多いこの業界でも、クラ…
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  • 海神の島 第36回 池上永一

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     「細谷さん、私も一杯いただいてよろしいかしら? カズ、升(ます)を持ってきて」 汀はひらりと立ち上がって、演歌歌手が歌い上げるように仰け反った。 「いいねえ、その飲みっぷり!」 酒豪の汀の飲みっぷりは八岐大蛇(やまたの…
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  • 海神の島 第35回 池上永一

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     「恵さん、聞いてよ。今度さ、俺の娘が結婚するんだけど、BGMっていうの? あれで悩んでいるんだよ」 そう言って岸本は音程のズレた鼻歌で曲のフレーズをハミングした。娘の結婚式でかけたい曲を探しているときに、ある店でこの曲…
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  • 海神の島 第34回 池上永一

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     今度は三人連れの客だ。 「あら岸本(きしもと)さん、いらっしゃい」 「ママ、俺のことを覚えてるの?」 岸本はクラブ汀に来るのは初めてだったが、十年前に汀のワインバーを訪れたことがあった。 「何言ってるのよ。レモンピール…
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  • 海神の島 第33回 池上永一

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     そんなクラブ汀は開店の準備に余念がない。 汀は入り口にある生け花をさっと直した。花は毎日汀が生けているが、仕上げはマネージャーに任せていた。 「お花の首が曲がっているわ。お客様によく見えるようにしなきゃね」 店の顔はベ…
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  • 海神の島 第32回 池上永一

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     井上(いのうえ)流の師範も汀の才能に「生まれながらの芸妓(げいこ)」と最大級の賛辞を贈った。 誰もが汀はこのまま祇園で伝説の芸者になるものとばかり思っていたが、二十歳になった時、贔屓の旦那さんと結婚するという理由で、あ…
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  • 海神の島 第31回 池上永一

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    〈二〉    二〇一九年 東京 気怠い都会の夕闇にネオンサインが点りだす。年中続く縁日のような活気が人々を街へと駆り立てる。ここは銀座並木(ぎんざなみき)通りだ。昼間は裏道のように閑散としているが、夜になると高級車が乗り…
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  • 海神の島 第30回 池上永一

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     泉は気持ちが悪くなって、自分のサンドイッチを食べる気力も失せた。その時だ。空を切り裂くような音と共に、水のグラスが倒れた。何事かと見回すと、普天間基地を飛び立った大型輸送ヘリの編隊が海面スレスレの低空飛行で横切っていく…
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  • 海神の島 第29回 池上永一

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     沖縄全土を黄金色に染める夕日で、アメリカンビレッジの小洒落た風景が紅型(びんがた)の柄に落ちていく。観覧車も、モールも、カフェも、現代風の紅型絵巻のようだ。 「私はこの時間が好きよ」 「あたしは夜が好きだわ」 「澪は朝…
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  • 海神の島 第28回 池上永一

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     キャンプ・キンザーの帰り道、澪との約束通り北谷(ちゃたん)町のアメリカンビレッジに寄った。 ここは今の沖縄の変化を象徴する最先端の街だ。米軍ハンビー飛行場が返還された跡地が大開発され、アメリカの雰囲気を纏った商業施設が…
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  • 海神の島 第27回 池上永一

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     「あんたたちっ!」 漣オバァが一喝して姉妹喧嘩を蹴散らした。 「誰が後継者になるかは私が選ぶんじゃないさぁ。はっきり言っておこうねぇ。私はちゃんと遺言を作って弁護士に託してあるさぁ。曾祖父(ひいじい)さんが失くした宝を…
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  • 海神の島 第26回 池上永一

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     もう一度最初からだ、と漣オバァは点呼のような口調に変わる。 「汀!」「イヤ!」「泉!」「ベー!」「澪!」「プッ!」 漣オバァは孫娘たちの反応に動じなかった。それどころか勝機ありと踏んだように鼻で笑ったではないか。孫娘た…
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  • 海神の島 第25回 池上永一

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     漣オバァは父への贖罪のつもりでここを詣でるようになった。あの日、寡黙な父が子どものようにはしゃいだ面影を求めるように。父が決して正気を失ったわけではなかった、と知ったのは亡くなってからだ。彼は見てはならぬものを見てしま…
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  • 海神の島 第24回 池上永一

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     「大きい爺ちゃん、戦争で死んだの?」 「違うよ。生きて会えたのは沖縄本島に戻ってからさぁ」 「よかった。じゃあお宝は大きい爺ちゃんが持ってたんだね」 「いや、なくなってしまったんだよ……」 漣オバァは、戦争のせいだと思…
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