• 海神の島 第217回 池上永一

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     伝統芸能なら、舞台で型通りにしか踊れない演舞者は、観客の厳しい目に晒される。それはちびっこの舞いであっても容赦はない。果たしてメディアは読者や視聴者の厳しい目を意識しているのだろうか、と汀は思う。  「下手クソなニュー…
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  • 海神の島 第216回 池上永一

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     「あたしに何ができるっていうのよ」  「汀ママ、今何て言いました?」  「なんでもないわ、隼人……」  汀は車窓を途切れなく流れてゆくフェンスを見ながら、苛立ちまぎれに呟いた。汀は政治とは距離を置いておきたいタイプだ。…
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  • 海神の島 第215回 池上永一

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     汀はスマホの画像フォルダを開いた。澳門(マカオ)のカジノ王と旧正月を祝う画像、ロシア大使公邸でのレセプションの画像、アラブの王族が飼っているホワイトタイガーに跨(またが)る画像、インドのマハラジャの宮殿でカタックダンス…
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  • 海神の島 第214回 池上永一

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     茶道具の入った風呂敷を開くような優雅な所作で、汀はゴホウラガイを取り出してみせた。乳白色の輝きを放つゴホウラガイに弁護士の男も目を見張った。しかし一呼吸置いて、  「これは海神の秘宝とは認められません!」  とあっさり…
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  • 海神の島 第213回 池上永一

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     普段なら食ってかかる汀だが、あっさり条件を受け入れた。どうせ店を辞めて路面店に進出するのだから、八百万円くらい手切れ金として払っておけ、という目論見だ。なにせ汀は、地代収入年間五億円を相続する軍用地主になるのだから。…
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  • 海神の島 第212回 池上永一

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    八    沖縄県 那覇市久茂地(くもじ)  首里(しゅり)織の着物に身を包んだ汀(なぎさ)が颯爽と弁護士事務所のあるオフィスビルに現れた。仲秋も過ぎたというのに、沖縄はまだ蒸し暑さが残っていた。東京と沖縄を頻繁に往復して…
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  • 海神の島 第211回 池上永一

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     「これは富本銭(ふほんせん)? 私の二十年前の研究テーマだ!」  錆びた硬貨を拾い上げようとした山階に、泉が飛びかかった。  「やめて。それは私のお守りなのよ!」  その言葉に、二人ともフラッシュバックのように記憶を巡…
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  • 海神の島 第210回 池上永一

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     早速、漁民と交渉しようと筆談用のペンと手帳を取り出した山階の背後から、声がかかった。  「山階先生、ご無沙汰しております──」  日本語の呼びかけに驚いて振り返った山階は、薄い頬を強張らせた。そこには潮風に髪を靡(なび…
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  • 海神の島 第209回 池上永一

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     那月はカウンターに置かれたゴホウラガイを見て、おしっこをちびりそうなほど肝を潰している。  「そ、そうですか……。それで、ざ、残念な話って何ですか……?」  「それがね、那月さんのお財布はどうやっても見つからなかったん…
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  • 海神の島 第208回 池上永一

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     「汀ママ、どうかしましたか?」  「何でもないわ。あのお花は首が曲がっていて、気に入らなかったのよ。お花はチョキンと切れるから楽よね?」  汀の口調がいつもと違うのを感じつつ、那月は愛想笑いを浮かべた。  「そうそう那…
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  • 海神の島 第207回 池上永一

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     日本の黒偶像がまた罪を犯したと聞いて、客が一斉にスマホで動画を撮り始めた。狭いビル内に警官の怒声と客の囃(はや)し声が入り混じる。  日本語がわかる警官が五十嵐に尋ねた。  「昨日、故宮博物院から鼎が盗まれた。お前たち…
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  • 海神の島 第206回 池上永一

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     「すごいよ澪ちゃん。台湾のスターだよ!」  「五十嵐さん、澪は嬉しいですぅ」  「支配人が興奮していたよ。ライブハウス始まって以来の盛況なんだってさ。今日の入りは百六十人だよ。こんなの見たことないって」  「次は安室(…
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  • 海神の島 第205回 池上永一

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     「心配ないわ。私は京大総長の妻になるんだから」  紙袋を手に取った那月は、早足で自宅を出た。袋にはタオルに包んでガムテープで留めたゴホウラガイが入っている。澪と五十嵐(いがらし)が不在のうちに、これを戻さなければならな…
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  • 海神の島 第204回 池上永一

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     客の中に山階航も紛れていた。若者たちの中でちょっと場違いな居心地の悪さを感じていた。那月から連絡を受けた山階は、すぐに台湾に飛んだ。  「まさか西周圓渦(えんか)囉(き)紋鼎(もんてい)が海神の秘宝だったとはな。あり得…
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  • 海神の島 第203回 池上永一

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    *    台湾 台北市中正区羅斯福路  亜熱帯の都は夜も気温をぐんぐんあげていた。路上で爆竹が鳴り響くのは日常の光景だ。通行人はにわか雨にでも遭遇したように、無関心に爆発音の側を通り過ぎていく。爆竹の乾いた音が涼感の一種…
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  • 海神の島 第202回 池上永一

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     「さすが隼人は博識ね! ほら那月さん、こういうの知ってた?」  那月は添付された画像をしげしげと眺めた。緑青(ろくしょう)に染まった鼎が那月の目には、シチュー鍋に脚がついているように映った。  「これがエンカキモンテイ…
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  • 海神の島 第201回 池上永一

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     「台湾に誘(おび)き出すのね?」  「私が良さそうな品を見繕うから、エロは派手に騒いでくれる?」  「了解。あたしとしたことが迂闊だったわ。自分で教えていたなんて」  「そっちのチーママはどうする?」  「それはあたし…
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  • 海神の島 第200回 池上永一

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     今日は新たな作戦、通称Bクイックの打ち合わせだ。汀は那月に一泡吹かせてやりたかった。  「さて、うちの悪い猫ちゃんをどうしてくれましょうか?」  「こっちの狼も、群れから追い出してやる」  泉は山階と今後一切関わり合い…
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  • 海神の島 第199回 池上永一

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     彼らは沖縄の総意を代弁しているかのように振る舞っていた。確かに泉の意見の一部も彼らと重なるが、全部ではない。泉は自分がグレーの人間だと自覚している。成長するにつれグレーの濃度が上がっていくのを止められない。だから純白の…
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  • 海神の島 第198回 池上永一

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     噂に聞く一本七十万円の白ワインが景気良く注がれた。日頃、基地前でシュプレヒコールを上げている安冨祖たちは、魂を抜かれたようにポカンと惚(ほう)けていた。そこを上手くもてなすのがホステスたちの役目だ。  カレンが胸の谷間…
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