• 海神の島 第308回 池上永一

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     「因(ちな)みに沖ノ鳥島の護岸工事費には七百五十億円かかったのよ。無人でも年間二億円の管理コストがかかるって言ったら?」  「魚釣島に人を送り込むのは難しそうですね……」  「魚釣島は現代人の生活水準を満たすほどの能力…
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  • 海神の島 第307回 池上永一

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     「無人島になるか、有人島になるかは、時代のテーマによって変わるのよ」  「では、尖閣が有人化する可能性もある、ということですか?」  「涼、太陽系の話を思い出して」  船首を波に突っ込みながら新垣は曖昧な返事をした。…
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  • 海神の島 第306回 池上永一

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     「花城先生、なぜあんな無人島に海神(わだつみ)の秘宝があるんでしょうか?」  「無人島かどうかは関係ないのよ」  泉は、新垣の考えが一般人の感覚に近いことを知っている。だが、その感覚を国際政治の場に持ち込むと危ない。…
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  • 海神の島 第305回 池上永一

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     「沖ノ鳥島は、島です。さっきの発言を補足します。満潮時に陸地が海面上にあれば、島です」  泉は新垣の狼狽ぶりに可笑(おか)しくなった。  「実はね、国際法では十九世紀から島と岩礁を分ける定義があるのよ」  「え? そん…
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  • 海神の島 第304回 池上永一

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    十一  冬の時化(しけ)た海は、尖閣(せんかく)上陸を阻む天然の要塞のようだった。波の高さは三メートルを超え、泉(いずみ)の乗るクルーザーを上下させた。針路は合っているはずなのに、波が視界を遮っているせいで、奈良原(なら…
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  • 海神の島 第303回 池上永一

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    *  『Decompression(減圧中)』  減圧室の扉の上の運転灯が緑色に変わった。一気圧の世界に戻った泉は、久しぶりに自然の空気を吸った。  「なんか空気が薄い気がするなあ」  「これが正常なんですよ。ほら、花城…
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  • 海神の島 第302回 池上永一

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     泉が振動で気づいた時には、DSRV2はサン・アントニオに収納されていた。  「マダム、減圧室へ!」  右も左もわからない泉は、促されるまま、海軍の兵士たちと共に減圧室に入った。  飽和潜水は加圧より減圧の方が慎重を要す…
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  • 海神の島 第301回 池上永一

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     海軍の潜水士は女007ばりの泉の活躍に、舌を巻いた。  泉の知らないうちに、事態は急速に悪化していた。中国海軍は秘蔵っ子の055型ミサイル駆逐艦を、尖閣に投入していた。この事態に、海上自衛隊はP‐1哨戒機を後退させた。…
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  • 海神の島 第300回 池上永一

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     残りの時間は、これまでに発見した沈没船の地図を描くことに専念した。泉が発見した沈没船は既に二十六隻。範囲を広げれば百隻を上回るのは確実だった。この地図を新垣に残し、彼に研究を引き継いでもらおう。新垣に足りないのは、スタ…
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  • 海神の島 第299回 池上永一

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     「よし。ミッション・コンピューターを回収した。これでもう機体に用はない」  泉はポリカーボネイト製の風防で遊んでいる子クジラに、礼を言った。 「あなたのお蔭で見つけられたよ。もうお家を荒らさないから心配しないで」 *…
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  • 海神の島 第298回 池上永一

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     「コックピットの風防だ。クラゲと勘違いしているんだ」  泉は恐る恐る子クジラの下に近づいていった。そこにはJ20の機首が転がるように落ちていた。  「見つけた。ミッション・コンピューターは無事かしら?」  見る限り、機…
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  • 海神の島 第297回 池上永一

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     突如、泉の前に巨大な円筒形の物体が現れた。J20のエンジン渦扇15である。機体はバラバラになりながら、海底一帯に散らばっていた。この様子だと機体は垂直に海面に激突し、その衝撃でエンジンが外れたと考えるのが妥当だろう。エ…
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  • 海神の島 第296回 池上永一

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     中国海軍のダイバーたちは、すごすごと退却していった。しかしJ20の水没地点は特定した。次に潜ってくるダイバーたちは、泉と同じように飽和潜水してくるはずだ。それまでの猶予は約二十四時間。その間にJ20の機体を先に発見しな…
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  • 海神の島 第295回 池上永一

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     泉に挑発されたダイバーたちが、全方向から一斉に泉に向けて突進する。泉は十分にダイバーを引きつけてから、持っていた斧を振りかぶった。  「喰らえっ!」  泉は渾身の力で足元にある紐状の物体を断ち切った。その瞬間、海底に凄…
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  • 海神の島 第294回 池上永一

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     「ROVの信号を逆探知したんだ」  泉はすぐに退避しようとする。しかし水中スクーターの機動力は人間を上回る。あっという間に泉は中国海軍のダイバーたちに囲まれてしまった。  泉の潜水服は、海底を歩くように設計された重たい…
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  • 海神の島 第293回 池上永一

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     スイートスポットに溜まっている沈没船はざっと数十隻といったところだろうか。地形の凹凸で陰になっているところもあるからよくわからない。範囲を広げれば百隻はあるだろう。泉は数百年前の人々が海を渡った思いを想像し身震いした。…
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  • 海神の島 第292回 池上永一

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     ここは頭の固い古い人間の面目躍如をしておきたいところだ。  「レイノルズ中佐に義理もあるし、ちょっとは仕事しておくか」  泉はROVのカメラの死角をつくように回り込んだ。ROVのカメラは可視光線しか捉えられない。即ちラ…
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  • 海神の島 第291回 池上永一

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     その声に泉はクスッと笑った。子どもの時の自分の口癖だったからだ。恐怖の中に仄(ほの)かな温かさを感じた泉は、作戦を続行することにした。幸い、カプセル内には生命維持装置がある。カプセルに籠(こ)もれば二日は生きていられる…
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  • 海神の島 第290回 池上永一

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     潜水艦は通常、水の抵抗を減らすために涙滴型になっている。だが中国の095型原子力潜水艦は核ミサイルを積んでいるために背中にラクダのような瘤がついている。海上では中国海警局で穏便に対応している中国だが、海中には最新鋭主力…
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  • 海神の島 第289回 池上永一

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     「一心(いっしん)丸(まる)。日本の船だ」  しかし沈没船にしては奇妙だ。船体の中央部がほぼ消失している。これは爆発によるものではないか、と泉は考えた。  「涼、ネットで照合をお願い。戦時中に日本海軍に徴発された船のリ…
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