• 海神の島 第343回 池上永一

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     泉は続けた。 「グスク時代よりもずっと前、貝塚時代よりもずっと前、私たちの祖先は尖閣を経て沖縄本島に渡ったと思われます。その目印が牧港補給基地の海神の墓です。あの岩は古代の海洋民族の標識でした。そして石嶺賢治は尖閣で日…
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  • 海神の島 第342回 池上永一

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     泉はここで涙を零したら自分のことを一生許せそうもない、と唇を噛み締めた。 床についた血痕に驚いて汀が見上げると、泉の唇からツーっと血が滴(したた)り落ちていた。 汀が泉の背中を押して漣オバァの傍に立たせる。 「ほら、最…
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  • 海神の島 第341回 池上永一

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     漣オバァの最期を看取ったのは汀と泉だ。数十人の医者が特別室の外まで並んでいる。汀はまるでこの世の終わりであるかのように絶叫した。 「漣オバァ。死んじゃダメよ。あたしの二回目の花嫁姿を楽しみにしていたじゃない」 医学界の…
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  • 海神の島 第340回 池上永一

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    *  泉が沖縄本島に滞在すること二週間。漣オバァは琉球大学病院に転院して再検査が決まったが、昏睡状態なのは変わりなかった。泉は、このまま沖縄本島に留まり続けるか、それとも一度東京に帰るかの判断を迫られていた。もしかしたら…
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  • 海神の島 第339回 池上永一

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     『東大病院の病院長でお願いします!』既読 『何を頼めばいいのかしら?』午後4:24 『漣オバァを琉球大学病院に転院させることってできるかな?』既読 『お茶の子さいさいよ』午後4:27 『さすがお姉様。尊敬します!』既読…
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  • 海神の島 第338回 池上永一

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     続いて泉は全身性アミロイドーシスと多発性骨髄腫の症例を研究した論文を差し出した。 日本において、ダイオキシン中毒とみられる患者は稀(まれ)である。だから無意識に多発性骨髄腫の可能性を排除して診断したのだろう。なぜなら多…
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  • 海神の島 第337回 池上永一

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     「僕はタイムスリップしたみたいな気分です」 半日前まで明治時代の遺構しかない無人島の魚釣(うおつり)島にいた新垣は、豪華客船が停泊する二〇二〇年の泊港の光景に、頭がクラクラした。 泊港に入港した泉は、事前の打ち合わせ通…
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  • 海神の島 第336回 池上永一

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     「じゃあ、あいつらはアメリカ海兵隊ですかね?」 「だとしたらなぜ私がアメリカ軍に邪魔されるのか、理由がわからない。私はJ20のミッション・コンピューターを回収してあげた恩人なのに?」 「うーん。やっぱり違うか」 「あの…
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  • 海神の島 第335回 池上永一

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    十二    沖縄県慶良間(けらま)諸島・渡嘉敷(とかしき)島沖 北緯二十六度五分。東経百二十七度二十分。 已(すんで)の所で海神(わだつみ)の秘宝を澪(みお)に奪われてしまった泉(いずみ)は急遽、クルーザーで沖縄本島に向…
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  • 海神の島 第334回 池上永一

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     しばらくして遠くから、 「海神の秘宝を返せ!」 という複数の声が届いた。浜辺を駆けて来るのは、泉、汀、新垣、隼人の四人だ。澪は反射的にアルミ箱を抱えて逃げ出した。 「なんだかわかんないけど、怖いですぅ」 澪は浜辺の端に…
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  • 海神の島 第333回 池上永一

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     びっくりした新垣は反射的に衛星電話を受け取った。電話口から聞こえてきたのは愛しい小百合の声だ。 『涼さん、結婚してください!』 「は、はい!」 その隙に隼人がアルミ箱を掠め取った。 「尖閣くんだりまで来て俺は何をやって…
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  • 海神の島 第332回 池上永一

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     泉は化石に手を合わせた。 「海神様、サンプルを採らせてください。あなたが何者なのか、私が明かしてみせます――」 泉は慎重に、大地と一体となった海神の化石を発掘していった。 脱脂綿で包んだアルミ箱を襷(たすき)掛けにした…
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  • 海神の島 第331回 池上永一

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     泉はすぐにピンときた。 「海神の秘宝はこれのことだったんだ!」 石灰岩は化石化しやすい地質だ。化石となった人骨は全身を残していた。これは太古の昔、尖閣を訪れた人がいて、何かの理由でこの地に埋葬された証拠だ。 「どれくら…
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  • 海神の島 第330回 池上永一

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     泉が握るロープが水滴に包まれて滑りやすくなっている。雲と雨の境目に突入したのだ。念のためにこの辺でハーケンを打ち込んでおいた方が良さそうだ。 泉がロッククライミングを始めてから三十分が経過していた。上も下も濃霧で見えな…
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  • 海神の島 第329回 池上永一

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     奈良原岳狙いを捨てたのは、尾瀧渓はアメリカ軍が調査済みだとわかったからだ。公文書では、遭難事件の遺品を回収した後、最適な場所にダイオキシンの入ったドラム缶を投棄したとあった。アメリカ軍もやはり傾斜のなだらかな北側斜面か…
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  • 海神の島 第328回 池上永一

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     魚釣島上陸二日目の夜を迎えた。 奈良原岳の山の深さは想像以上で、丸一日費やしても麓の一部しか探索できなかった。クルーザーの寝室には澪が寝ていた。現地での寝食のことを考えていなかった澪は、昨晩は野宿したという。その話を聞…
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  • 海神の島 第327回 池上永一

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     澪はジャムの蓋のような金属の匂いを辿って、ドラム缶の山を見つけた。しかし、これらは戦後アメリカ軍が不法投棄したダイオキシンである。 「ロリ、触っちゃダメ!」 遅れてやってきた泉が血相を変えて叫んだ。 「澪が発見した石油…
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  • 海神の島 第326回 池上永一

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     「つまり魚釣島には違う時代の二つの地層があるってことですか」 「大きい祖父ちゃんは、古い時代の地層の近くで写真を撮った。船着場のある古賀村周辺じゃない」 泉はクルーザーから、魚釣島の礫岩層のチャートが見える箇所をつぶさ…
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  • 海神の島 第325回 池上永一

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     続いて泉は、画像解析した賢治の写真をタブレットで開いた。すると鮮やかなカラー画像の賢治が現れたではないか。 「彩色したんですか?」 「白黒写真のデータをコンピューターにディープラーニングさせたのよ。これはカラー写真なら…
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  • 海神の島 第324回 池上永一

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     澪は村があった船着場周辺から捜索することにした。かつて賢治は魚釣島で一ヶ月以上過ごした。ならば賢治が寝泊まりした地点から範囲を広げていった方が確実だと踏んだのだ。だが澪には海神の秘宝が何なのか見当もつかない。澪は足元に…
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