• 海神の島 第187回 池上永一

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     結局、出来上がった街はどこか非人間的な匂いのする人工都市になった。歩道を整備したとしても、似たような百メートル四方の区画が続くのが心理的障壁となって、歩くことを躊躇わせる。街の界隈性など皆無の無味乾燥とした直線の歩道は…
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  • 海神の島 第186回 池上永一

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     どうして嫌な予感ほど当たるのだろう。泉は文字を読んで、心臓がキュッと握り潰されるような感覚を初めて味わった。何か見えない悪意が背中に負ぶさってくるような恐怖を覚えた。  泉は返還後の土地がどうなるのかという経緯を調べた…
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  • 海神の島 第185回 池上永一

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     「処女はこう言いたいんでしょ? 『沖縄は基地の見返りに余りある優遇措置を受けてきた』って」  「言いたくない。エロが私の口を借りて言いたいだけ!」  「失礼ね。あたしはそんなこと思っちゃいないわよ!」  お互いに、それ…
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  • 海神の島 第184回 池上永一

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     泉は、このニュースは大局的にアメリカの太平洋戦略の変更だと感じている。多くの人は米軍基地を日本防衛のためと勘違いしている。だが、沖縄の米軍は朝鮮半島有事と台湾有事に備えての駐留だ。冷戦が終わりソビエトの核の脅威が喫緊(…
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  • 海神の島 第183回 池上永一

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     これまで返還された軍用地では、地主たちが不利益を被ることがあった。軍転特措法は、地代収入が途切れたり、再開発で不利益を被ることがないように地主たちを守る議員立法だ。これに依ると地代は返還後も引き続き政府から支払われるこ…
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  • 海神の島 第182回 池上永一

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     四谷(よつや)にある泉のマンションは、立地優先で選んだものだ。自炊をしない泉は、近所に手頃な値段の飯屋がある四谷三丁目を気に入っていた。荒木(あらき)町と三栄(さんえい)町と新宿御苑(ぎょえん)は徒歩圏内だ。女一人でふ…
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  • 海神の島 第181回 池上永一

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    〈七〉  早朝の牧港補給基地返還の報道は、花城(はなしろ)三姉妹にとって晴天の霹靂(へきれき)だった。ニュースアプリで第一報を読んだ泉(いずみ)は、フェイクニュースなのではと目を泳がせた。沖縄県民にとって国道58号線沿い…
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  • 海神の島 第180回 池上永一

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     「その表情は、あたしがゴホウラガイを持っているんじゃないかって顔ね?」  「エロの手元に渡ったんじゃなかったの?」  「行方不明よ。ロリにでも渡ったんじゃないかしら?」  「またロリ!? おかしい。なぜロリが次から次へ…
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  • 海神の島 第179回 池上永一

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     泉はお化け屋敷にでも入る気分で意を決した。  扉を開いた瞬間、猛烈なカサブランカの香りが顔面にぶつかってきた。次にベーゼンドルファーのグランドピアノが目に飛び込む。店はヨーロッパの宮殿のような内装が施されていた。  「…
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  • 海神の島 第178回 池上永一

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    *    東京銀座  昼間の並木通りは、まだ目覚める時間にしては早かった。夜の顔を知らない人の目には、ここは銀座の外れか、新橋(しんばし)の一部に映るだろう。肌寒い夏空の下を歩いているのは泉だ。  山階航が何を考えている…
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  • 海神の島 第177回 池上永一

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    *    沖縄県那覇市  那覇は、冷夏の東京の日差しが全部沖縄に移動したかのような炎天だった。汗だくになりながら、弁護士事務所に辿り着いた澪と五十嵐は、自信満々に、ガムテープでぐるぐる巻きになった桐箱をテーブルの上に置い…
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  • 海神の島 第176回 池上永一

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     しかし調査には深海潜水艇が必要だった。日本で使える深海潜水艇にはJAMSTEC(海洋研究開発機構)が持つ「しんかい6500」があるが、利用は生命科学分野と地質調査、そして地震研究に限られている。沈没船の調査は公益性の観…
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  • 海神の島 第175回 池上永一

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     そんなことをされたら、那月が店を持つなんて夢のまた夢である。なんとしても汀の鼻っ柱をへし折る方法がないものか、毎日考えていた那月は、汀から相続の話を聞かされた。汀の祖母の遺言で、海神の秘宝を探し出した者が相続人になると…
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  • 海神の島 第174回 池上永一

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     那月はそんな山階を陰ながら応援してきた。那月は銀座の女にしては珍しく、男を選ぶ基準が金じゃなかった。那月にとって、普段エロスの匂いを感じさせない男が性に溺れていく姿を見るのが何よりの悦(よろこ)びだった。  那月は、萎…
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  • 海神の島 第173回 池上永一

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    *  帝国ホテルのスタンダードツインの一室には、窓辺に両手をついて後ろから挿入されている那月と山階がいた。  「山階先生、誰かに見られちゃう」  「こうしないと感じないんだろ?」  「いやん。恥ずかしいわ」  山階は那月…
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  • 海神の島 第172回 池上永一

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     その名前を見た瞬間、泉はショックで息が止まってしまった。知っているも何も、日本の水中考古学の権威だ。そして泉は先月、山階研究室からの招聘を断った。  山階教授は貝の研究者でもなければ、地上の遺跡の研究者でもない。その彼…
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  • 海神の島 第171回 池上永一

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     どっちみち今日は新垣と一緒である必要はなかった。泉はハンドルを握りながら、あらゆる可能性を考えていた。汀が盗聴していた場合のことには対処した。次は澪だ。宗像大社の神宝館に押し入った手口から考えて、今回のことはらしくない…
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  • 海神の島 第170回 池上永一

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     頭を抱えた汀は、本心ではへたり込みたいのを気丈に堪えている。こうなったのは、那月の厚意に甘えた自分のせいだと感じていた。気分が優れなかったのは事実だが、大事な用件を人任せにしてしまった自分の非の方が大きいと思う。隼人だ…
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  • 海神の島 第169回 池上永一

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     あとは逃げるだけだ。これでもう貧乏神と付き合うこともない。だが、若奈が玄関に向いた瞬間、五十嵐が壁ドンしてくるではないか。もうこんな三文芝居に付き合うのも最後だ、と若奈は腹を括った。  「いいだろ、若奈?」  「澪さん…
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  • 海神の島 第168回 池上永一

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     「ひいいっ! 悪魔の茶色い輪っかがあああっ!」  便器を見た瞬間あまりの汚さに、若奈の意識のヒューズがポンと飛んだ。この人たちは貧乏神に取り憑かれている、と本気で鳥肌が立った。これは一ヶ月やそこらでつく汚れではない。年…
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