• 海神の島 第328回 池上永一

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     魚釣島上陸二日目の夜を迎えた。 奈良原岳の山の深さは想像以上で、丸一日費やしても麓の一部しか探索できなかった。クルーザーの寝室には澪が寝ていた。現地での寝食のことを考えていなかった澪は、昨晩は野宿したという。その話を聞…
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  • 海神の島 第327回 池上永一

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     澪はジャムの蓋のような金属の匂いを辿って、ドラム缶の山を見つけた。しかし、これらは戦後アメリカ軍が不法投棄したダイオキシンである。 「ロリ、触っちゃダメ!」 遅れてやってきた泉が血相を変えて叫んだ。 「澪が発見した石油…
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  • 海神の島 第326回 池上永一

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     「つまり魚釣島には違う時代の二つの地層があるってことですか」 「大きい祖父ちゃんは、古い時代の地層の近くで写真を撮った。船着場のある古賀村周辺じゃない」 泉はクルーザーから、魚釣島の礫岩層のチャートが見える箇所をつぶさ…
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  • 海神の島 第325回 池上永一

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     続いて泉は、画像解析した賢治の写真をタブレットで開いた。すると鮮やかなカラー画像の賢治が現れたではないか。 「彩色したんですか?」 「白黒写真のデータをコンピューターにディープラーニングさせたのよ。これはカラー写真なら…
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  • 海神の島 第324回 池上永一

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     澪は村があった船着場周辺から捜索することにした。かつて賢治は魚釣島で一ヶ月以上過ごした。ならば賢治が寝泊まりした地点から範囲を広げていった方が確実だと踏んだのだ。だが澪には海神の秘宝が何なのか見当もつかない。澪は足元に…
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  • 海神の島 第323回 池上永一

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     泉は力なく浜辺に膝をついた。こっちは知力と体力を駆使して、やっとの思いで尖閣に上陸したというのに、澪は中学生でも思いつかない幼稚な方法で、同じ結果を出したというのか。 思い返せば、子どもの頃からいつもそうだった。汀は人…
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  • 海神の島 第322回 池上永一

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    *  奇しくも花城三姉妹は、各々の飽くなき欲望と探究心と行動力が重なって、禁断の島で邂逅(かいこう)することになった。全ては遺産相続人になって、己の欲望を実現するためだ。そこに中国もアメリカも日本も関係ない。 久しぶりに…
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  • 海神の島 第321回 池上永一

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     なぜだか知らないが、眠っていた細胞が次々と目覚めていく感じがする。こうなると距離はもう関係なかった。カヌーなら中学生の時に遊びで乗ったことがある。センスのいい操舵を認められた澪は、危うく国体強化選手に指定されるところだ…
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  • 海神の島 第320回 池上永一

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     柳瀬防衛大臣は澪にデマカセを吹き込むことにした。 「呉(くれ)港だと人目につくから、石垣港で合流しようね」 「指切りしてくださーい」 柳瀬防衛大臣は鼻の下を伸ばしながら、澪と指切りした。 「ゆーびきーりげーんまーん、う…
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  • 海神の島 第319回 池上永一

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     もし澪が単身尖閣を目指すとしたら、最短距離は石垣島の底地(すくじ)湾からである。その距離は実に百五十五キロメートルだ。シーカヤックの速度を五ノットとした場合、十七時間かかることになる。 「あれは幻なんじゃないかしら………
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  • 海神の島 第318回 池上永一

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     「あんたいつか刺されるよ」 「挿(さ)されるのには慣れてるわよ。うふふ」 「もう嫌! 全部変な意味に変わる!」 「挿されたことのない人に女の歓びなんてわからないわよ」 「もう無理。吐いてもいい?」 隼人と新垣は、花城姉…
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  • 海神の島 第317回 池上永一

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     新垣と隼人はなんとなく顔見知りになった誼(よしみ)で会釈しあった。お互いに豪放磊落な女主人に仕えている者同士の、連帯感のようなものを感じている。多分隼人と涼が一緒に呑めば、一晩では語りつくせないほど会話を弾ませるだろう…
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  • 海神の島 第316回 池上永一

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     最初の数時間はエンジンをかけず、ひたすら手漕ぎで艦隊から離れ、艦影が水平線の彼方に消えた後、エンジンを始動させた。海上自衛隊のレーダーを避けるために、迂回して魚釣島の背後から上陸する念の入れようだった。 魚釣島に上陸し…
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  • 海神の島 第315回 池上永一

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     現在において尖閣を実効支配しているのは日本である。いくら中国が領有を主張しても、実効支配の現実は覆せない。尖閣が政治的係争地であることは事実だが、国際法では第二次世界大戦後の領土の現状変更は認められない。その点で中国は…
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  • 海神の島 第314回 池上永一

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     「海神の秘宝とは、徐福(じょふく)に関するものです」 徐福は、秦の始皇帝から不老長寿の丸薬を入手せよとの命を受け、日本に渡ったと中国の史書に記されている人物だ。その一行は老若男女三千人と多数の技術者を乗せた大船団だった…
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  • 海神の島 第313回 池上永一

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     汀の目論見では、そのまま中国海軍の強攻策でチャチャっと尖閣に上陸してくれるはずだった。だが現実はアメリカ軍を前に威嚇(いかく)射撃も許されない緊張状態にあった。現代戦では国際世論を味方につけた方が優勢となる。そのために…
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  • 海神の島 第312回 池上永一

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     「客観的事実は、国家が誕生する前から、尖閣諸島があったってこと。後から来た人間が領有を掲げたところで、何の権利があるっていうのよ。金になると思うと人が来て、金にならないと思われたら捨てられ、資源があると思われたら、争い…
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  • 海神の島 第311回 池上永一

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     「ここが大きい祖父(じい)ちゃんが辿り着いた島なのね……」 領有権を巡り尖閣諸島が日中の政治問題化した七十年代以降、民間人が魚釣島に私的目的で訪れたことはない。一部の政治家や活動家が領有をアピールするために上陸し、その…
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  • 海神の島 第310回 池上永一

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     「島か岩礁かなんて、地質学的に何の意味もないのよ」 「じゃあそっちは何て呼べばいいんですか?」 「陸地、でいいんじゃない?」 新垣は拍子抜けしたように舵輪に凭れかかった。こんな単純な話をややこしくしているのが現代だ。そ…
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  • 海神の島 第309回 池上永一

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     「厳密な意味で、独立経済活動できることが島の条件なら、日本列島だって定義を満たしていないよ。私たちは食料をどこから輸入しているの? エネルギーをどこから輸入しているの? 鉱物資源をどこから輸入しているの? 現代の人間活…
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