• 海神の島 第173回 池上永一

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    *  帝国ホテルのスタンダードツインの一室には、窓辺に両手をついて後ろから挿入されている那月と山階がいた。  「山階先生、誰かに見られちゃう」  「こうしないと感じないんだろ?」  「いやん。恥ずかしいわ」  山階は那月…
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  • 海神の島 第172回 池上永一

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     その名前を見た瞬間、泉はショックで息が止まってしまった。知っているも何も、日本の水中考古学の権威だ。そして泉は先月、山階研究室からの招聘を断った。  山階教授は貝の研究者でもなければ、地上の遺跡の研究者でもない。その彼…
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  • 海神の島 第171回 池上永一

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     どっちみち今日は新垣と一緒である必要はなかった。泉はハンドルを握りながら、あらゆる可能性を考えていた。汀が盗聴していた場合のことには対処した。次は澪だ。宗像大社の神宝館に押し入った手口から考えて、今回のことはらしくない…
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  • 海神の島 第170回 池上永一

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     頭を抱えた汀は、本心ではへたり込みたいのを気丈に堪えている。こうなったのは、那月の厚意に甘えた自分のせいだと感じていた。気分が優れなかったのは事実だが、大事な用件を人任せにしてしまった自分の非の方が大きいと思う。隼人だ…
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  • 海神の島 第169回 池上永一

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     あとは逃げるだけだ。これでもう貧乏神と付き合うこともない。だが、若奈が玄関に向いた瞬間、五十嵐が壁ドンしてくるではないか。もうこんな三文芝居に付き合うのも最後だ、と若奈は腹を括った。  「いいだろ、若奈?」  「澪さん…
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  • 海神の島 第168回 池上永一

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     「ひいいっ! 悪魔の茶色い輪っかがあああっ!」  便器を見た瞬間あまりの汚さに、若奈の意識のヒューズがポンと飛んだ。この人たちは貧乏神に取り憑かれている、と本気で鳥肌が立った。これは一ヶ月やそこらでつく汚れではない。年…
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  • 海神の島 第167回 池上永一

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     若奈は噛み砕くかのように、ゆっくりと言葉を区切った。  「史彦さんの、出世の幕開けを、この目で、見届けたいの」  落ち着いたトーンの若奈の声色は、ベテラン女性アナウンサーの朗読のように五十嵐の心に沁み入った。  「それ…
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  • 海神の島 第166回 池上永一

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     高円寺にあるアパートの若奈の1LDKの部屋では、新婚気分の二人がイチャイチャ乳繰り合っていた。小ざっぱりとした室内は、女の一人暮らしにしては少々寂しいくらいだが、丁寧な暮らしぶりが表れていた。自家製の石鹸は洗濯と台所用…
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  • 海神の島 第165回 池上永一

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    *  午前零時を回った銀座は、まだ半分しか眠らない。銀座で働いている人間が羽を伸ばす時間が未明まで続く。  タクシーの行列をすり抜けて日比谷方面に向かっているのは那月だ。周囲を十分警戒しながら、待ち合わせの帝国ホテルのロ…
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  • 海神の島 第164回 池上永一

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     キーロガーにはソフト型とハード型がある。ハード型はUSB端子やPS/2端子に偽装してパッと見ただけでは見分けがつかない。泉はフィールドワーク中心なので、こういう端子類をたくさん持ち歩いていた。もし、那覇の弁護士事務所で…
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  • 海神の島 第163回 池上永一

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     『若奈ちゃん、ゴホウラガイを手に入れてちょうだい』既読  『やってみます』午後8:30  チャットを終えた汀は不可解だという表情で佇んでいた。そんな汀にさり気なくガルバニーナブルーの炭酸水が渡される。  「汀ママ、顔色…
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  • 海神の島 第162回 池上永一

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     趙大佐は伶奈の明晰な頭脳に舌を巻いた。二人は東アジアの地政学における中国の取るべき政策とは何か、を侃侃諤諤(かんかんがくがく)語り合った。伶奈は、中国がランドパワーから、シーパワーにシフトしていく現在の政策は危険だと説…
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  • 海神の島 第161回 池上永一

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     「これで映画を作れますぅ!」  「すぐに沖縄に行こう!」  と言った途端、五十嵐は躊躇いを覚えた。今夜、若奈の家で用意されている夕食のことが脳裏を過(よ)ぎったのだった。  「澪ちゃん、やっぱり明日でもいいかな?」  …
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  • 海神の島 第160回 池上永一

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     スキップしながら楽屋に戻ってきた澪は、テーブルの上に「花城澪様へ」と宛名の付いた差し入れが置いてあるのを見つけた。  「また骨ですかぁ──?」  澪は反射的に後退りする。差し入れはいつものように可愛らしくラッピングされ…
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  • 海神の島 第159回 池上永一

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     その代わり、食器だけは上質なものを使っている。益子(ましこ)焼の茶碗、若狭(わかさ)塗の箸、信楽(しがらき)焼の湯飲みなど、骨董通りで集めた中古だと若奈は言うが、センスがいい。  その上、若奈の料理は素朴な献立なのに、…
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  • 海神の島 第158回 池上永一

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     「澪ちゃーん。ドンマイ!」  「次もお騒がせ頼むよー」  「裁判楽しみにしているね」  これらが果たして声援と言えるのかどうか謎だが、まばらな拍手しかもらえなかった以前と比べて、明らかに熱が感じられる。  「罰一の澪で…
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  • 海神の島 第157回 池上永一

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     「分類G。トリコーニス ラティシムス。標準和名ゴホウラ──」  泉は標本箱の様子に違和感を覚えた。  「ねえ、なんでここだけ空白なの?」  遅れて新垣の指が「タマキビダエ下目」の段で止まった。そこには「産地沖縄県」の印…
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  • 海神の島 第156回 池上永一

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     「高円寺のアパートの入居費用と家具代七十万円。これは?」  「若(わか)奈(な)ちゃんは家庭派なの! 自宅の六本木ヒルズなんかに誘ったら、ドン引きされるでしょ!」  「汀ママ! こんなことしていると、またオーナーからお…
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  • 海神の島 第155回 池上永一

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     ちょうどその頃、グループ名「銀座くノ一」のチャットもリレーを繰り返していた。  『新垣は河村コレクションに接触しました』午後1:50  『ゴホウラガイを手に入れるつもりかしら?』既読  『多分下見だと思われます』午後1…
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  • 海神の島 第154回 池上永一

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     「花城先生、なんかワクワクしますね」  「しっ。今日はあくまでも下見だって言ったでしょ」  また新垣のスマホのチャットアプリが着信を告げた。泉はこの音が煩わしくてならない。  「涼、仕事のときにはスマホをマナーモードに…
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