• 海神の島 第274回 池上永一

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     J20墜落の一報を受けて、泉(いずみ)と新垣(あらかき)はキャンプ・コートニーを訪れていた。殺風景な待合室で欠伸(あくび)を噛み殺す泉に、新垣がひそひそ声で話しかける。 「花城(はなしろ)先生、いくらなんでもアメリカ軍…
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  • 海神の島 第273回 池上永一

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     J20も当初、アメリカ空軍のF22やロシア空軍のSu‐57をベンチマークにして開発されたはずだ。しかし完成した機体は、旧世代機によく見られる特徴を持っていた。 アメリカ軍は、その謎に包まれた機体を何としてでも回収し、中…
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  • 海神の島 第272回 池上永一

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    十    沖縄県うるま市 キャンプ・コートニー 第3海兵遠征軍司令部 金武(きん)湾に面したキャンプ・コートニーは、長大な滑走路を擁する嘉手納(かでな)基地や、オスプレイを配備した普天間(ふてんま)基地と比べると地味な施…
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  • 海神の島 第271回 池上永一

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     ここで逃げ出すのが普通の女だ。だが澪は無防備なので、言われるがままにブラジャーを差し出した。でもちょっと怖いのでブラウスの襟元をしっかり握った。 占い師は澪のブラジャーを鼻に押し付け、くんかくんか匂いを嗅いだ。完全に変…
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  • 海神の島 第270回 池上永一

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    *    台北市中山区 行天宮 命相館(占い横丁) 急遽舞い込んだ台湾のテレビ番組に出演するため、澪(みお)はまだ台湾に滞在していた。 今日はロケの合間を縫って台湾の有名な占い横丁にやってきた。ここに凄腕の占い師がいると…
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  • 海神の島 第269回 池上永一

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     「発見が早いですね。与那国島のレーダーサイトに引っかかったんですかね?」 「違う。与那国島のレーダーは中国大陸のある西側を向いている。私たちはそれを避けるために南東からきたんだもの」 「偵察衛星から見てたんでしょうか?…
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  • 海神の島 第268回 池上永一

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     「僕は小学校の時に社会の先生からこう教わりました。尖閣沖には天然資源が埋蔵されているって。それがわかった途端、中国が領有を主張しだしたって」 「領有を掲げると、人間は身体性のない概念と戦うことになるのよ。その概念は時代…
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  • 海神の島 第267回 池上永一

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     「仮に第一発見者の国籍が大事だと言うなら、日本という国自体が危うくなるのよ」 「なぜですか? 最初に見つけたもん勝ちじゃないんですか? 尖閣は日本領で間違いないです」 「だったら小笠原諸島は英国領よ。那覇港から英国の捕…
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  • 海神の島 第266回 池上永一

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     泉の尖閣上陸計画はざっとこうだ。午前零時に石垣島の底地湾を発ち、約三時間半後に魚釣島に到着する。イタリア製クルーザー「クランキ」に積んだボルボ・ペンタ五百二十馬力のエンジンは三十ノットまで出せる。夜間でもGPS航法装置…
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  • 海神の島 第265回 池上永一

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    *    沖縄県石垣市川平(かびら) 底地湾 午前零時 満天の星を縫うようにオリオン座が縦の三連星を昇らせた頃、クルーザーの甲板で出航準備に勤しむ泉(いずみ)と新垣(あらかき)がいた。二人はお互いの顔もよく見えない暗闇の…
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  • 海神の島 第264回 池上永一

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     福州を出た船は、島を目印に航海する。島は順番に、東沙、彭湖、雞籠山、花瓶嶼、彭佳山、釣魚臺、黄尾嶼、赤尾嶼、姑米山、馬歯山となる。この中の雞籠山は台湾のことであり、姑米山は久米島、馬歯山は現在の慶良間(けらま)諸島の座…
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  • 海神の島 第263回 池上永一

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     クラブ汀には、趙大佐が玲奈(れな)と同伴出勤で訪れていた。趙大佐は一泊二日の日本滞在中にも拘(かかわ)らず、合間を縫うように玲奈との逢瀬に勤しんでいた。クラブ汀への滞在予定は午後七時から八時までだ。その後すぐに最終便で…
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  • 海神の島 第262回 池上永一

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     「汀ママ、気が早すぎますってば」 「何言っているの隼人。海神島は尖閣諸島だってわかったのよ。これで遺産はあたしのものじゃない」 「だからそこが一番厄介なんですってば! 尖閣なんて絶対に上陸できませんよ」 「なぜ? 日本…
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  • 海神の島 第261回 池上永一

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          *   令和元年(二〇一九)十二月 東京 銀座 並木(なみき)通りはクリスマスセールのイルミネーションに彩られていた。歩道のライトアートがステンドグラスのような幾何学模様を映し出す。銀座が成熟した大人の香りを…
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  • 海神の島 第260回 池上永一

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       朕深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾   セムト欲シ茲(ここ)ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク   朕ハ帝国政府ヲシテ米英支蘇四国ニ対シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨   通告セシメタリ   朕ハ時運ノ趨…
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  • 海神の島 第259回 池上永一

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     正反対の事実を聞かされた日本兵たちは、反応が鈍い。 「お願いします。魚釣島では百人以上の島民が飢えているんです」 サバニに同乗していた山内軍曹が、八重山農学校に遅れて駆けつけてきた。 「その人の言っていることは真実だ。…
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  • 海神の島 第258回 池上永一

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     賢治の意図を理解した仲間は、わざと舟底を上にするようにサバニを転覆させた。B-24からは無人の漂流船のように見えるだろう。賢治たちは立ち泳ぎしながら、舟の中にある酸素で息継ぎをする。 「石嶺(いしみね)さん、考えたもん…
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  • 海神の島 第257回 池上永一

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     「そうだ。久松五勇士はやってのけた」 五人はお互いを鼓舞するように見つめ合う。 「和男、おじさんは絶対に石垣島まで行ってみせるからな」 賢治の目は異様に輝いていた。和男にはそれが一種の狂気のようにも映った。 「おじさん…
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  • 海神の島 第256回 池上永一

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     「おじさん、足が凸凹になっちゃったよ」 和男が浮腫(むく)んだ脛(すね)を指で押すと、皮膚が押し返さなくなっていた。 「脚気(かっけ)だ。ビタミンB不足だ」 飢餓の症状は子どもの方が早く表れる。和男の症状は遅れて必ず大…
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  • 海神の島 第255回 池上永一

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     賢治の瞳孔が極限まで開いた。同時に賢治は息を止める。小さなライターの炎でもはっきりと視認できた。洞窟の中には、古代の神が祀られた神殿があるではないか。 「海神様──」 カメラを持ってこなかったのが悔やまれる。これは琉球…
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