• やさしい猫 第167回

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     次の口頭弁論の日は、二ヶ月近く先で、その間に、ハムスター先生は牛久のクマさんに会いに行ったり、ミユキさんと相談したりして、準備を進めていた。 わたしの夏休みは、とくにすることもなくて、だいたい、バイトで埋まってた。休み…
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  • やさしい猫 第166回

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     裁判所で、少しだけハムスター先生と立ち話をしていたら、知ってる人がちょっと目で挨拶をして通り過ぎた。ミユキさんは小さく声を上げて、ハムスター先生にお辞儀すると、小走りにその人を追いかけた。 「上原さん!」 上原さんは立…
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  • やさしい猫 第165回

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     ハムスター先生が「一言だけ」と言ったとき、裁判官たちはちょっと不思議そうな顔をした。右側、被告席の訟務検事の三人は、微動だにしなかった。 「なにか?」 裁判長が少し、苦笑したようにも見えたけれど、ハムスター先生は話し出…
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  • やさしい猫 第164回

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     第一回口頭弁論の期日がやってきた。八月の頭の、暑い日だった。場所は東京地方裁判所で、平日の午前十時からだった。 ミユキさんといっしょに地下鉄で霞ヶ関まで行って、地上に上がると、裁判所は目の前だった。せっかくだから、写真…
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  • やさしい猫 第163回

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     「もしかしたら、医者に診せるとお金がかかると思ってるのかもね」 ミユキさんが帰りの常磐線の中で言う。 「お金かかったってしょうがないよねえ。風邪くらいなら、ほっといても治るかもしれないけど、重病だったらどうすんの」 「…
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  • やさしい猫 第162回

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     高校に入ってはじめての夏休みがやってきた。学校が休みになったから、ようやく、クマさんに会いに行けることになって、ミユキさんと二人で牛久まで出かけた。 せっかく会うんだから、好きな食べ物でも食べさせてあげたかったけど、バ…
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  • やさしい猫 第161回

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     クマさんの電話は、いつもミユキさんが家にいる午前中だったけど、時々、夕食の後、わたしにもかかってきた。週に何回か、フリータイムの後にも、収容部屋の中で電話を使える日があるらしい。 今日、チキンカレー作ったよとか、ハヤト…
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  • やさしい猫 第160回

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     代々木公園に行って、ソフトクリームとか食べながら見るハヤトのものまねは、すんごいおかしくて、ゲラゲラ笑った。 ハヤトは『タイタニック』もやってくれた。ひとりでレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットを両方。深刻…
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  • やさしい猫 第159回

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     十一 東京ディズニーシー その後、ハヤトからはちょくちょくLINEで連絡が来るようになった。さいしょのうちは、元気? とか、いま何してる?とか訊(き)いてきて、オレはいま飯食ってるとかなんとか、笑えるスタンプが添えられ…
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  • やさしい猫 第158回

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     東京地方裁判所に訴状を提出して、裁判が始まった。原告はクマさん、代理人はハムスター先生だ。「退去強制令書発付処分取消等請求訴訟」というものらしい。見せてもらった訴状ってものは、漢字が多くて頭が痛くなるからちゃんとは読ま…
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  • やさしい猫 第157回

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     わたしはハムスター先生のために、クマさんに教わったエッグホッパーを作ってあげた。前の日から種を寝かせておいたんだ。ホッパーは米粉のクレープみたいな感じで、目玉焼き入りがエッグホッパー。タマネギとチリパウダーとココナッツ…
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  • やさしい猫 第156回

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     翌週、ミユキさんはハムスター先生といっしょに牛久に行った。クマさんは何度も、ありがとうございますと頭を下げた。 その次の日曜日に、ハムスター先生はボロアパートにやってきた。裁判の訴状というのを作るために、いろんな書類や…
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  • やさしい猫 第155回

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     「えっと、マヤ。マヤ、だよね?」 ハヤトは言った。 「父ちゃんのこと、恵先生に頼んだの?」 クマさんのことを、誰かに「父ちゃん」と言われるのは、はじめてだったけど、いそいでうなずいた。だって、ハヤトだよ! あの、モデル…
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  • やさしい猫 第154回

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     ハムスター先生は、次の月曜日には、ミユキさんとクマさんに会いに行ってくれることになった。いっしょにがんばってくれるんだって! それは、母娘にとって、すんごく心強い言葉だった。帰り際にミユキさんは、気になってたことを訊(…
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  • やさしい猫 第153回

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     「それはまあ、いいとして」 ハムスター先生は咳(せき)ばらいを一つした。 「悲しいことですが、在留外国人ケースは、本来、救われるべき人が救われていない。だから、裁判には覚悟が必要です」 わたしとミユキさんは机の下で、こ…
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  • やさしい猫 第152回

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     それを機に、弁護士さんが話題を変えた。「そうだ、紹介しとこう。うちのエースの江藤麻衣子先生、難民ケースがご専門」 「今日のは離婚案件。なんでもやります」 ついたての後ろからは、少し小柄な女性一人と、若い男性が顔を出した…
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  • やさしい猫 第151回

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     ミユキさんは、事情を弁護士さんに話した。わたしも時々、聞かれたことに答えた。 話しているうちにだんだん、緊張がほぐれてきた。すごくうれしかったのは、天然パーマの弁護士さんが、話を聞いてくれて、時々、「ひどいなあ。許せな…
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  • やさしい猫 第150回

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     わたしたちを恵法律事務所に案内してくれた上原さんは、そそくさと帰ってしまったけど、心細いってわけでもなかった。少しふっくらしたハムスターの先生のほうが、人好きのする雰囲気だったから。 「お二人はどういうご関係なんですか…
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  • やさしい猫 第149回

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    あらすじ 退去強制令を告知され、入管の施設に収容されたクマさん。ミユキさんは裁判を起こすことを決意し、弁護士事務所のドアをたたく。     ◇ドアが開いて、わたしたちは、大きな事務机のところに通された。机の後ろはついたて…
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  • やさしい猫 第148回

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     家に帰ってからも、ミユキさんは、両手に「行政書士 上原賢一」と書いてある名刺を持って、ぼんやりしていた。誰? 「入管の、クマさんに退去強制令っていうのを告知した本人。今日、牛久でばったり会った。前に会ったときは、東京入…
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