• やさしい猫 第24回

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     両手に持った荷物が重すぎて、レジ袋が指に食い込んで痛いので、ミユキさんは袋をいったん地面におろした。安売りだと思って、調味料の類いを買いすぎたのだ。 ミユキさんはふぅ、と息をついてから、「荷物、ちょっと、重いの。運ぶの…
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  • やさしい猫 第23回

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     ミユキさんは、もやもやと買い物袋を抱えて商店街の入り口まで戻った。のんびりしていたから日も暮れかかってきた。早く帰って食事の支度をしないと、娘が待っているし、明日は仕事だ。 気持ちを切り替えて早足になりかけたところで、…
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  • やさしい猫 第22回

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    ◆あらすじ 東日本大震災のボランティアで知り合ったシングルマザーのミユキさんとスリランカ人のクマさん。クマさんは祖国の文化や言葉をにこやかに教えてくれた。1年後、2人は商店街で偶然の再会を果たす。      ◇ 話もしな…
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  • やさしい猫 第21回

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     警察官が調べていたのは、クマさんが乗っていた自転車が盗難車ではないかということだった。その疑いはすぐに晴れたのだけれど、外国人だけが持っている証明書のようなカードの提出を求められて、ずいぶん時間がかかってしまっていたの…
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  • やさしい猫 第20回

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     「去年、震災のボランティアで知り合ったんです。いっしょに炊き出しのカレーを作ったんですよ。そのとき、隣でタマネギ刻んでたんです、この人。ペレラさんていうスリランカの方が、震災後何回も何回も、ごはん作りに行ってて、向こう…
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  • やさしい猫 第19回

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     自分の母親ながら不思議なのは、ミユキさんが周囲をまったく気にしないところだ。天然というか、空気を読まない。ミユキさんは、そこに自転車が立てかけてあることも、警察官が二人立っていることも、まるで見えないかのように、歓声を…
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  • やさしい猫 第18回

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     その日は日曜日で、わたしはナオキくんのところに遊びに行っていた。ミユキさんは土曜日も保育園で働いていることが多いので、日曜日は、ぐったり疲れて朝寝坊する。お昼を適当に食べて、夕方近くに買い物に出る。材料を少し多めに買い…
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  • やさしい猫 第17回

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     二 やさしい猫 一年後というと、わたしは小学校四年生になってる。それは重大なことだ。すぐにミユキさんとクマさんの話に入ってもいいけど、自分のこともちょっと書いておく。 四年生でクラス替えがあって、隣に、わたしの親友にな…
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  • やさしい猫 第16回

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     車の中で三人は、「どっちが長い名前を持っているか合戦」で盛り上がったので、一時間半はあっという間だった。 駅に到着すると、クマさんはおもむろに白いプラスチックバッグに入れたランチボックスを取り出し、ミユキさんとマオコさ…
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  • やさしい猫 第15回

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     ミユキさんが、「寿限無(じゅげむ)、寿限無」から「長久命の長助」まで、長い名前を言い終えると、運転席のクマさんは大笑いして、 「負けた!」 と、叫んだ。 「ジュゲム、ジュゲム、ポンポコ、チョウチュウ、わっからない!」…
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  • やさしい猫 第14回

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     後部座席の女性は一瞬顔を見合わせ、それからケタケタ笑い出した。 「なに? ねえ、それ全部名前?」 「そう」 「もう一回言って」 「言わーない」 「あ、すねた」 「ごめんなさい。人の名前を笑うなんて、失礼だよ、わたしたち…
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  • やさしい猫 第13回

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     いちばん近い新幹線の駅までは、一時間半くらいかかった。一晩中かかってカレーを作り、三か所の施設にランチボックスを運び、三か所の施設でペレラさんの不在の理由を説明した三人は、その仕事がすべて終わるころには、お互いの働きぶ…
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  • やさしい猫 第12回

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     「横倒しにした数字の8を描くように頭を揺らす」というのが、どういうことか、やったことも見たこともない人にはとても難しいと思う。それも、ゆっくりではなく小刻みに揺らすとなると、真似(まね)しようと思ってもなかなかできない…
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  • やさしい猫 第11回

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    「どうかしましたか? だいじょうぶ?」 ミユキさんはおずおずと声をかけたけれど、運転席の男は微動だにしなくて、思い余ってもう一人の保育士さんが、とんとんと肩を叩(たた)き、 「だいじょうぶですか?」 と、もう一度、声をか…
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  • やさしい猫 第10回

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     そのときは、名前も聞かなかったの、と、のちのち、ミユキさんは言った。運命の出会いなんて、そんなものらしい。 ともかく運転席に座った若い男性は、後部座席に二人の保育士を乗せると出発した。ステップワゴンの後ろのほうの席は背…
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  • やさしい猫 第9回

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     公民館では、二十人ほどの人が共同作業をしていた。スリランカ人は五人で、あとは日本人だった。来られなくなった炊き出しボランティアがいた関係で、急遽(きゅうきょ)、ミユキさんとマオコさんがピンチヒッターに立つことになったら…
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  • やさしい猫 第8回

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     「園長先生のは、わかんないね」 「え? わかんないの?」 ペレラさんの率直な意見に、後部座席の二人もつられて笑った。ペレラさんは頭を掻(か)いた。 「うーん、わかるけど、ちょっと変。園長先生は、〈こんにちは〉って言って…
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  • やさしい猫 第7回

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     ワゴンの運転席には恰幅(かっぷく)のいい中年男性であるスリランカ人のペレラさんが座り、ミユキさんともう一人のボランティア保育士、マオコさんがすぐ後ろの席に座った。 「二人も来てくれたら、大助かりですよ。仕込みをする公民…
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  • やさしい猫 第6回

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     園長先生が話し始めたところで、庭先を照らすヘッドライトの光が目に入った。 シルバーのステップワゴンが止まるのが見えた。園長先生は立ち上がって縁側から外に出ていき、車のほうに手を振って、なにやら謎の言葉を発した。 「アー…
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  • やさしい猫 第5回

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     ミユキさんが訪れたのは、園児が三十名ほどのこぢんまりした保育園だった。大地震が起こったのは、お昼寝から起きようという時間で、小さい子たちは布団をかぶって揺れに耐え、追って来る津波を避けて、泣きもせずにいっしょうけんめい…
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