• 幸村を討て 第132回 今村翔吾

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     南条家の興りはよく判っていない。 鎌倉に幕府があった頃から南北朝の動乱の頃に、塩冶高貞(えんやたかさだ)という武者がいた。この人が出雲(いずも)守護に任じられており、その次男が南条家の始祖である貞宗(さだむね)公だと伝…
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  • 幸村を討て 第131回 今村翔吾

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     南条家はまず国持ちではない。一万や二万石の小大名ではないものの、十万石ほどの中大名にも少し足りぬ。伯耆東三郡六万石。何とも中途半端な領地の広さである。 加えて己には武功らしい武功がないのだ。父の元続(もとつぐ)が病で死…
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  • 幸村を討て 第130回 今村翔吾

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     この者たちの大半は豊臣家から使者を受けており、その者が取り次ぎとなって入城の手はずを取り計らう。中には豊臣家が把握しておらぬのにふらりと訪ねて来て、 ――このような者が世に忍んでいたか! といったように、急遽(きゅうき…
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  • 幸村を討て 第129回 今村翔吾

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     浪人衆に対しての豊臣家の対応は大きく分けて三つある。表向きに言っている訳ではないのだが、明らかに格付けをされていて待遇が異なっている。元忠は心中でこれらに勝手に「上」「中」「下」と名付けていた。 まず最も格の低い者。元…
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  • 幸村を討て 第128回 今村翔吾

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     ――この家紋は大名家では一家だけだ。 内心で呟(つぶや)いた。怒りは湧いてこない。むしろそう手掛かりを教えてやりたくなる。野次馬の会話はなおも続いていた。 「ふむ。あれは朝顔か……? そんな家紋の大名がおったかいな」…
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  • 幸村を討て 第127回 今村翔吾

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       三文銭 南条の影 季節は冬に掛かろうというのに、人の熱気が寒さを忘れさせてくれた。 大坂の城下を行き交う人は決して少なくはなく、亡き太閤(たいこう)が存命の頃と何も変わりがないように見える。いや、本日に限ってはその…
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  • 幸村を討て 第126回 今村翔吾

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     「いや頼もしい限りだ」 庄八郎が源次郎に激しい忠誠心を持っていることは確か。源三郎にはそれが嬉しかった。 城に入ると、左近は配下の者から報告を受けて源三郎に伝えた。 「そろそろ軍議も終わりそうです」 「やはり父上は………
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  • 幸村を討て 第125回 今村翔吾

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     「源次郎様、お怪我は」 目鼻だちがはっきりして色黒の左近に対し、庄八郎は肌も白く涼やかな一重まぶたである。源次郎の躰を気遣いながらも、冷静に周囲を見回していた。 「心配ない」 庄八郎は舌打ちをして唇を動かした。だがあま…
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  • 幸村を討て 第124回 今村翔吾

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     「左近(さこん)、あれはお主だったか。声が違うで気付かなんだ」 この男の名を横谷(よこや)左近幸重(ゆきしげ)と謂う。横谷家は元来、信濃国上田(うえだ)と上野国沼田(ぬまた)の間に根を張る豪族であった。勢力は小さいもの…
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  • 幸村を討て 第123回 今村翔吾

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     「くそっ……押さえにゆくぞ!」 舌打ちをして命じ、男たちは二手に分かれて走り去っていった。その間も源次郎は男たちをずっと睨みつけている。 「お怪我はござらぬか」 源三郎は地に座り込んだままの女に寄り添った。 「あ、あり…
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  • 幸村を討て 第122回 今村翔吾

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     「何だ、貴様」 「恥ずかしくないのか!」 「何のことだ。この者は領内から逃げ出そうとしたのだ」 「武田の武士は――」 源次郎がさらに痛烈な言葉を吐こうとしたその時、追いついた源三郎はさっとその口を手で覆った。 「兄上……
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  • 幸村を討て 第121回 今村翔吾

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     それでも源三郎は周囲を見回し、源次郎だけに聞こえるほどの小声で返した。 「御屋形様が亡くなられた時、すでに斜陽は始まっていたのだろう」 そこで言葉を途切らせ、源三郎は軽く天に視線を上げつつ続けた。 「だが決定的だったの…
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  • 幸村を討て 第120回 今村翔吾

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     勝頼は義昌に対して膨大な木材を用意するように命じた。建材に使われるような木は一朝一夕で育つものではない。毎年、決まった分量だけを伐採しないとすぐに枯渇し、多くの禿山(はげやま)を作ってしまうことになる。義昌は他のところ…
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  • 幸村を討て 第119回 今村翔吾

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     だが源三郎はそれだけが理由ではないと思っている。甲斐(かい)は四方を高い山々に囲まれており、守るに長(た)けている土地である。そこで守り切れず、本拠にまで攻め込まれる事態になるとしたら、即ち家が巻き返しの効かぬほど危う…
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  • 幸村を討て 第118回 今村翔吾

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     領民の逃散(ちょうさん)を許せるはずなどなく、特に商人たちが離れてしまえば、織田家を退けたとしても町は一気に寂れてしまう。それを制止しようと、奉行の命を受けて家臣たちが奔走しているのだ。だが商人たちの中には、 ――近く…
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  • 幸村を討て 第117回 今村翔吾

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    * 甲府の町は蜂の巣を突(つつ)いたような騒ぎとなっている。城では軍議が行われており、父はそちらに出席していた。議題があまりに大きいということもあるが、嫡男とはいえ源三郎には参加出来る資格が無い。 ただ漫然と待っていても…
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  • 幸村を討て 第116回 今村翔吾

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     ――兄上が総大将ならば豊臣は勝ったであろう。 豊臣家は織田家の天下を簒奪(さんだつ)したのだから、有り得ないし、変なたとえ話だろうが、ふとそう思った。兄は一人で両輪を回すような傑物であった。そのような人物は滅多にいるも…
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  • 幸村を討て 第115回 今村翔吾

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     有楽斎は頭を殴られたような衝撃を受けた。幸村は己を引きずり降ろそうとしている。元忠が言ったように忍びを多数抱えているならば、城内で己の悪評が急速に広まっているのも納得出来た。 極めつけは昨日の軍議であった。その場で再度…
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  • 幸村を討て 第114回 今村翔吾

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     それから約四カ月後の今、有楽斎は今こうして城を抜け出そうとしている。 「殿、これまでの気概はどうなされたのです」 茶器を片付け続ける有楽斎に対し、宗輔は改めて詰め寄った。 「儂は恐ろしいのだ……」 兄は己が臆病であると…
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