• 幸村を討て 第103回 今村翔吾

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     お市は当時織田家と同盟関係にあった浅井(あざい)家に嫁ぎ、淀殿はそこで生まれたのだ。だが両家の関係は破綻して浅井家は攻め滅ぼされた。お市は実家に帰され、以後は淀殿ら三人の娘たちとひっそりと暮らしていた。 お市が兄から話…
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  • 幸村を討て 第102回 今村翔吾

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     「叔父上にお聞きしたいのです」 淀殿は神妙な顔つきで言った。 「はて、何でしょう」 「この戦、勝てますでしょうか」 膝の上で重ねた淀殿の手が僅(わず)かに震えていた。 秀頼や皆の前では気丈に振る舞ってはいるものの、やは…
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  • 幸村を討て 第101回 今村翔吾

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     「息災のようです。文のやり取りは許されていますので」 兄に似て幸村は賢(さか)しいらしく、こちらの意図を汲み取って答えた。 「心中お察し致す」 「いえ、私はさほど。兄には迷惑ばかり掛けております」 実弟が敵方に奔り、し…
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  • 幸村を討て 第100回 今村翔吾

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     豊臣家と徳川家が遂に手切れとなった。いや、すでに家康は幕府を開いており、全国の大名を従えている。豊臣家は天下を敵に回して戦うに等しい。 ――実際に何が出来る訳でもない。 有楽斎は自らをお飾りの総大将だと思っている。豊臣…
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  • 幸村を討て 第99回 今村翔吾

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     ――何故だ。 同じく身内ということならば、甥の信雄(のぶかつ)が城内にいる。亡き兄の次男である。そのことをぶつけると、淀殿も正直なところ当初はそのように考えていたと打ち明けた。 「だが信雄は何というか……」 淀殿は言葉…
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  • 幸村を討て 第98回 今村翔吾

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     「大坂を出とうございます」 折を見て、有楽斎は家康にそう切り出した。しかし家康は鷹揚に首を横に振った。 「遠慮せずともよい」 「心よりの言葉でございます」 家康は丸い目を細めて暫し考えていたが、やがて己だけに聞こえるほ…
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  • 幸村を討て 第97回 今村翔吾

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     有楽斎は家康に味方した。特に家康に思い入れがある訳ではない。ただそちらのほうが勝ちそうであったことと、あとは近隣の大名たちの動向を見て「流れ」のようなものを感じたからである。 ここで有楽斎は珍しく、いや生涯初といっても…
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  • 幸村を討て 第96回 今村翔吾

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     兄が死に、信忠も死んだ。 謀叛人である明智光秀は、中国方面から電光石火の勢いで駆け戻った羽柴秀吉に討たれた。あの日、信忠が逃がした嫡男三法師は無事逃げおおせており、秀吉はこれを擁立して織田家を乗っ取ろうとした。 柴田勝…
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  • 幸村を討て 第95回 今村翔吾

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     「あ、ああ……」 有楽斎は咄嗟(とっさ)に答えたものの、眩暈(めまい)がしてふらつきそうになるのをぐっと堪えた。兄の無念を晴らしたいという思いは確かにある。だがそれと同時に矛盾した想いが胸に込み上げた。有楽斎は兄に憧れ…
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  • 幸村を討て 第94回 今村翔吾

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     急いで駆け付けると、織田左近衛(さこんえ)中将信忠は小姓たちに甲冑(かっちゅう)を着けさせているところであった。その顔が紙のように白くなっており、余程のことが出来(しゅったい)したのだと有楽斎は唾を呑み下した。 「叔父…
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  • 幸村を討て 第93回 今村翔吾

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     それから三月後、有楽斎は京の二条御所にいた。中国方面で羽柴秀吉が毛利家に苦戦しているということで、兄が援軍に赴くことになり、信忠と共に京の留守を任されたのである。 前日、兄は僅かな供廻りと共に本能寺(ほんのうじ)に入っ…
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  • 幸村を討て 第92回 今村翔吾

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     「儂も貴殿と話せて素直に嬉しかった。励めよ」 「はっ」 信幸は凛然と頷いて帷幕を後にした。 その後、有楽斎は森、団を始めとする諸将に対し、 「真田昌幸は病らしい」 などと、適当に取り繕って話した。それでも、嫡子が代理と…
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  • 幸村を討て 第91回 今村翔吾

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     「お許し下さるならば、真田は身命を賭して織田家に忠勤を励みまする」 「ふむ……だが勝頼が来ればどうする」 「来ません」 「万が一の話だ」 「万が一にも。岩櫃には入れません」 有楽斎の胸が騒いだ。今、信幸は岩櫃に入れぬと…
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  • 幸村を討て 第90回 今村翔吾

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     「侍従様はこれまであまり戦にはお出になっておられませぬ。にもかかわらずこの甲州攻めに際して、右府(うふ)様は従軍をお命じになられた」 「何故それを……」 右府とは兄信長のこと。この田舎侍の、しかも嫡子風情が官職について…
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  • 幸村を討て 第89回 今村翔吾

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     「父は戦うつもりです」 先般、真田家には織田家の先鋒として武田家を攻めるように命じた。これは降将の倣いである。降ると言って時は稼いだものの、そうなってしまえばもう勝頼を迎えることなど出来ない。故に城に籠って戦いも辞さぬ…
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  • 幸村を討て 第88回 今村翔吾

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     信幸が言う陣代とは武田勝頼のことである。当主の昌幸は織田家の甲州攻めが始まる直前まで、新府(しんぷ)城の勝頼の傍にいた。その時に、 ――当家の岩櫃(いわびつ)城は難攻不落。兵糧も十分。半年は耐えてみせますので是非お越し…
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  • 幸村を討て 第87回 今村翔吾

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     「一族の者か」 この場では有楽斎が一応の大将格として応じた。 「当主安房守(あわのかみ)昌幸(まさゆき)が嫡男にございます」 「何……嫡男とな」 帷幕の中が騒めきに包まれた。嫡男自らが使者として来るなど滅多にあることで…
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  • 幸村を討て 第86回 今村翔吾

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     残る一つの例外の家。これは小幡家に比べ、どうも奇妙な動きをしている。一度は恭順の意を示したにもかかわらず、上野のことが片付いた今になって音信を断ったのである。信忠率いる本隊はいよいよ甲斐に攻め込もうというところ。やはり…
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  • 幸村を討て 第85回 今村翔吾

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     「戦をしている暇はありませぬ。何とか交渉出来ぬものでしょうか」 森がそのように頼んできたので、有楽斎は息を呑んだ。つまり己が小幡家を説き伏せろというのだ。 「それはお主らのほうが向いていよう」 有楽斎がそう断ると、森は…
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  • 幸村を討て 第84回 今村翔吾

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     「このまま甲斐を陥れましょうぞ」 信忠は揚々と麾下の者たちに語った。実際、この調子だとあっという間に甲斐も落とせそうである。だが百戦錬磨の武将の中には、危惧すべきことがあると進言する者もあった。 「北信濃、上野(こうず…
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