国語
総評と分析
共通テスト試行調査を意識した設問が見られたが、従来のセンター試験を踏襲した設問も少なくなかった。
第1問(現代文)は評論文によるオーソドックスな読解問題であり、設問の中で新傾向が見られた。第2問(現代文)は1918年に発表されたやや古めの小説から出題された。第3問(古文)は、従来のセンター試験の基本スタイルを踏襲したものとなった。第4問(漢文)は、内容の大まかな理解だけでなく、重要語の正確な理解が求められていた。
センター試験・試行調査との相違点
- 第1問(現代文)は、センター試験で出題されてきた評論の問題に加え、試行調査で見られた生徒による考察、複数の文章を関連づける設問が出題された。第2問(現代文)も、センター試験の傾向を踏襲した小説からの出題だが、設問の中に解釈の多様性にもとづく新傾向の出題が見られた。第3問(古文)は、物語文と、それに関する和歌についての鑑賞力を問う、試行調査に近い設問が見られた。第4問(漢文)は、試行調査同様に複数の資料をふまえた理解が問われていたが、重要語や訓読の理解については、センター試験と同じ形式の問題も少なくなかった。
問題分析
大問数 | 4 |
---|---|
設問数 | 22 |
解答数 | 38 |
問題量
- 第1問は3300字程度、第2問は3600字程度、第3問は900字程度、第4問の漢文部分は、問題文I(漢詩)と問題文II(漢文)で176字。
出題分野・出題内容
- 近代以降の文章2題、古文1題、漢文1題の構成。
- 第1問(現代文)は香川雅信『江戸の妖怪革命』(問5で芥川龍之介「歯車」)、第2問(現代文)は加能作次郎「羽織と時計」(問6で宮島新三郎「師走文壇の一瞥」)、第3問(古文)は『栄花物語』、第4問(漢文)は、欧陽脩『欧陽文忠公集』(漢詩)と「馬車を走らせる御者」の絵(問題文I)、『韓非子』(問題文II)からの出題。
出題形式
- 第1問の現代文では漢字問題、傍線部説明問題のほか、空欄補充の形式で段落要旨、生徒による考察内容を完成させる問題が出題された。第2問の現代文は登場人物の心情を問う問題を中心としつつ、文章に対する批評を読んで、評者の意見を説明したものや異なる見解を示すものを選ぶ問題が出題された。古文は、本文の分量は昨年度のセンター試験よりやや減。但し、和歌が本文に4首、問5の設問中に1首あり、計5首の和歌を読み解く必要がある。設問数は一つ減ったが、二択の設問が一つあったので解答数は同じ。漢文は、重要語や訓読の理解が問われたほか、複数の問題文をふまえて解答する設問が見られた。
難易度(全体)
- 国語全体を通して、センター試験と比べ、ほぼ同程度の難易度に落ち着いている。また試行調査(第2問~第5問)と比較しても、奇抜な問題は少なく、取り組みやすい問題となっている。
設問別分析
第1問 (50点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 10 | 漢字の知識を問う問題 | 標準 |
問2 | 7 | 傍線部内容説明問題 | やや易 |
問3 | 7 | 傍線部内容説明問題 | 標準 |
問4 | 7 | 傍線部内容説明問題 | 標準 |
問5 | 19 | 生徒の学習ノートを用いた空欄補充問題 | 標準 |
本文は妖怪に対する認識の変容を論じた文章。問2~問4は意味段落ごとの理解を問う従来のセンター試験を踏襲した出題だったが、漢字問題(問1)が5択から4択になり、表現に関する問題(従来の問6)は姿を消した。また、問5は生徒作成の「ノート」を提示しての空欄補充問題で、段落構成や複数の文章との関連付けが問われている。本文を芥川龍之介の「歯車」と関連づけて考察させる問いは目新しいものの、本文の要旨を押さえられれば選択肢の判別は困難ではない。
第2問 (50点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 9 | 語句の意味説明問題 | やや易 |
問2 | 6 | 心情説明問題 | 標準 |
問3 | 7 | 心情説明問題 | やや易 |
問4 | 8 | 心情説明問題 | やや難 |
問5 | 8 | 傍線部説明問題 | 標準 |
問6 | 12 | 複数の文章による本文理解問題 | やや難 |
昨年度のセンター試験に引き続き、小説の一節からの出題。1918年に発表されたやや古い文章であるものの、登場人物の心情は比較的把握しやすい。問4は本文中に根拠となる箇所が乏しく、選択肢の精査が求められたが、全体的に従来のセンター試験を踏襲した作りとなっている。ただし、問6では本文に対する批判的な批評文を取り上げ、解釈の多様性にもとづく出題がなされており、新傾向問題といえる。
第3問 (50点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 15 | 語句解釈問題 | 標準 |
問2 | 7 | 傍線部理由説明問題 | 標準 |
問3 | 6 | 語句及び表現に関する問題 | やや難 |
問4 | 6 | 登場人物の説明問題 | 標準 |
問5 | 16 | 和歌の比較による鑑賞問題 | 標準 |
出典は『栄花物語』で、妻を亡くした藤原長家が悲しみに沈む様子を描いた場面。従来のセンター試験に比べ本文量は少ないが、本文に敬語が多用されており読解はやや難しかった。問題の形式はセンター試験から大きく変わらないものの、一つの傍線部に対し、語句、文法、表現の効果等を多角的に問うた問3や、本文中の和歌贈答を他作品(『千載和歌集』)の表現と比較させる問5は試行調査の流れを汲んでおり、新傾向の出題と言える。全体的に誤りの選択肢が明確な設問が多く、解答に迷うものは少なかった。
第4問 (50点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 8 | 漢字の意味問題 | 標準 |
問2 | 15 | 語句の解釈問題 | 標準 |
問3 | 6 | 空欄補充問題 | 標準 |
問4 | 6 | 返り点と書き下し文の問題 | 標準 |
問5 | 6 | 傍線部解釈問題 | 標準 |
問6 | 9 | 内容説明問題 | 標準 |
出典は、欧陽脩『欧陽文忠公集』所収の詩「有馬示徐無党」(問題文I)と、『韓非子』の一節(問題文II)。問題文Iの詩は馬車を操縦する要諦を述べたもの、問題文IIは詩中に見える人物の逸話である。問1・2・4・5は語句や訓読、解釈などセンター試験にも見られた形式であり、重要語の正確な理解が必要。問3は問題文Iの詩の空欄に入る字を問題文IIから選ぶ問題、問6は問題文IとIIの両者をふまえた内容理解を問う問題である。複数の文章をふまえた解答が必要だが、両者ともわかりやすい内容であり、正解は選びやすい。
大学入試センター試験平均点(過去5年分)
年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 | 2017年度 | 2016年度 |
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平均点 | 119.33点 | 121.55点 | 104.68点 | 106.96点 | 129.39点 |